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.政治  投稿日:2017/1/30

小池都知事vsドン代理戦 千代田区長選告示


Japan In-depth 編集部坪井映里香

1月29日、千代田区長選挙の告示日。現職の石川雅己候補(71)、新人で自民党推薦候補の与謝野信候補(41)、同じく新人、無所属の五十嵐朝青候補(41)、千代田区を舞台に三つ巴の戦いが始まった。小池都知事が応援する現職の石川雅己候補と、通称「都議会のドン」内田茂氏をバックに立候補した与謝野信候補。両者の対決は小池対内田の「代理戦争」、もしくは夏の都議会選挙の前哨戦と呼ばれて、マスコミの注目を集めている。

この日の正午、与謝野信候補は神保町の事務所前で、立候補の第一声を上げた。同世代の朝日健太郎参議院議員、石原伸晃経済再生担当大臣、丸川珠代東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当大臣も駆けつけそれぞれ応援演説を行った。石原大臣は、自身が若いころ与謝野候補の叔父にあたる与謝野馨元財務相に金融問題調査会長の後任として指名されたというエピソードを引き合いに出して「若い人たちにバトンをタッチしていく、その若い人たちの発想でこの千代田区の問題を考え、変えていく。そういう時期が来たと思う。」と述べ、与謝野氏の若さに期待を示した。

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与謝野候補は、千代田区を「日本一安心・安全なまち」「日本一国際化が進んだまち」「日本一新旧文化が花開くまち」と「3つの分野で日本一にしたい。」と語った。「安全・安心」の面では18歳までの育児サポート、待機児童対策、また国・都と連携したテロ対策を掲げた。「国際化」の面からは、自身も少年期英仏で育った経験から国際化の必要性を感じ「インターナショナル・スクールに行かなくても英語を話せる、外国の子供たちと遊べる教育環境づくり」や、多くの自治体・金融機関が香港に拠点を移している現状を、金融機関で働いていた経験から「雇用の面からも非常に危機的」と指摘、国際金融センターの確立を目指すとした。

また、東京が「世界一魅力のあるまち」になるためには、「千代田が東京を引っ張っていかなければならない。」と語った。区民の70代女性も、41歳の与謝野候補に対して、「人口分布の中で40代が一番多いそう。若い世代が区を引っ張ってと期待感を示した。

五十嵐朝青(あさお)候補は、朝から街頭演説に走り回っていたが、午後の、御茶ノ水の街頭演説に集まった支援者は10名弱、メディアは弊社含めて3社だった。五十嵐氏は、まず地域コミュニティの衰退によって災害時リスクが高まることを危険視。五十嵐候補の住むマンションの住人は全員LINEでつながっていて、災害時、○○ですが助けに来てください、と助けを求めたり、既読が付かなければ助けに行ったり、といったことが可能だという。そのように、「旧来型の町会にIT、SNS等を活用し、緩やかなコミュニティを作り、災害時にも助け合える、そんな区政を実現する。」と述べた。

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また、家事や育児で仕事を離れた優秀な女性が、様々な形で「社会に参加してもらえる環境づくり」をしていきたい、と述べた。具体的には働く意欲のある女性と企業のマッチングをするシステムを、区、もしくは民間委託で作っていくという。千代田区の潤沢な財源を「どこに充てるのか」区民に話を聞いて政策を作っていく、と述べた。「代理戦争」と呼ばれる今回の選挙については、「区民不在の(自民党の)内輪もめ」と認識しており、あまり意識していないと述べた。

五十嵐氏のスローガンは、「もっとよくなる千代田」。「政治はまつりごと」とし、「1人1人が(政治)参加を身近に、楽しく行える」ような「全員参加型の区政」を訴える。その主張は、オープンな事務所づくりや、19歳の大学生が応援演説をしていた様子にあらわれていた。

そして、夕方にはJR有楽町駅前で現職の石川雅己候補の街頭演説が行われた。100人を超えるだろう支持者や報道陣が詰めかけ、前方は応援に駆け付けた小池都知事のイメージカラーである「百合子グリーン」に染まっていた。

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石川氏は自身の区政を、「常に若い方、子育ての方々、高齢者の方々といつも寄り添いながら様々な話を聞き、そうした中で区政の施策を進めてきた。住民の皆さんとともに歩んだ16年。」とした上で、今後も「時代に合わせた施策を進めていきたい。」と述べた。石川候補が区長になり、保育園の待機児童、学童クラブの待機児童、18歳までの医療費、そして猫殺処分数の4つの0を達成。動物殺処分0は、小池氏の公約だ。また、一人暮らしの高齢者がワンコインで、24時間365日いつでも電話をすれば必ずヘルパー・看護師・ドクターを自宅へ訪問する仕組みを作り、オリンピック・パラリンピックの受動喫煙対策にも関わる路上喫煙禁止を徹底させることに成功。こういった、自身の実績を「守り、育てていきたい。」と強調した。

石川候補の応援演説に駆け付けた小池都知事。待機児童0の達成や猫殺処分0といった石川氏による区政を「素晴らしいリーダーシップ」と評価した。「住みやすく、仕事がしやすく、なによりも東京の中心の中心という区政をこれまで引っ張ってきて、そして実績の塊のような石川さんにもっと働いてほしいと思っている。」と述べた。そして、石川候補の当選が「必ず東京大改革を一歩前に進めることへとつながる。」とアピールした。

今日、3候補はそれぞれ、一週間に及ぶ戦いをスタートさせた。最も多く人が演説を聞きに足をとめていたのは、圧倒的に石川候補。彼に二人の候補はどう挑むのか。待機児童0や路上喫煙禁止といった実績のある現職に新人候補の二人はどう挑むのか。そして区民は何を見て、聞き、だれをリーダーとして選ぶのか。小池都知事と自民党都議会や都議会のドンとの「代理戦争」。そのような見方だけではもったいない。区民の為の選挙であるべきだろう。

写真©Japan In-depth編集部


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