成長する企業は人材流動性が低い
為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
【まとめ】
・「圧倒的成長」を標ぼうしている企業は日本に多い。
・成長を促す理由は、メンバーの“流動性の低さ”。日本の文化でもある。
・人材流動性が高まってくるとこの文化に変化が訪れるかも。
圧倒的成長ということを文化にしている会社は日本に多い気がします。海外でもあるのかもしれませんが、私の知る限りこういった言葉を標語にかかげている会社を見かけません。中国や韓国にはありそうですが。just do itというマッチョな表現をしているナイキですら、本社を訪ねた時に社員は昼休みにサッカーをしたり、夕方同僚とランニングをして楽しんでいて、成長をしているのかもしれませんが少なくとも時間の上では余裕がありそうでした。
私なりに解釈したところ、成長を促す一番の理由はメンバーの流動性の低さではないかと思います。スポーツにおいてはプロよりも、アマチュア、しかも部活動のような文化の方が成長という標語を掲げることが多いです。なぜかといえばスカウティングが難しく(多少はできるのですが)、かつプロのように途中で入れ替えをすることができません。いくら成績が悪くてもやめさせて相手校の選手と入れ替えることができないわけです。
では、人の入れ替えができないとなるとどうするかというと、今いるメンバーの能力を最大限に活かすしか無くなるわけです。だとしたらみんなが成長するための文化づくりを行うことになります。
実は部活動はとても優しいところがあって、少なくとも建前上はどんな子供の成長にもコミットします。見捨てたりしません。いずれ外の世界に出た時に困らないように成長にコミットするわけです。
ところがプロは違います。その選手が将来困るかどうかはあまり関係がありませんし、そもそも成長するかどうかが個人の責任という認識が強いです。悪くなればいい選手と入れ替えるだけです。
日本社会において成長が採用されやすいのは、人材の流動性が低く、今いるメンバーでできることを考えなければならない中で自然と生まれてきた文化なのではないかと思います。環境に合理的に適応したともいえそうです。ですが、これから人材の流動性が高まり、フリーランス的に働く人が増えてくると、少しずつこの文化も変わるのかもしれません。世知辛い世の中です。
(この記事は2017年6月23日に為末大HPに掲載されたものです)
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この記事を書いた人
為末大スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役
1978年5月3日、広島県生まれ。『侍ハードラー』の異名で知られ、未だに破られていない男子400mハードルの日本 記録保持者2005年ヘルシンキ世界選手権で初めて日本人が世界大会トラック種目 で2度メダルを獲得するという快挙を達成。オリンピックはシドニー、アテネ、北京の3 大会に出場。2010年、アスリートの社会的自立を支援する「一般社団法人アスリート・ソサエティ」 を設立。現在、代表理事を務めている。さらに、2011年、地元広島で自身のランニン グクラブ「CHASKI(チャスキ)」を立ち上げ、子どもたちに運動と学習能力をアップす る陸上教室も開催している。また、東日本大震災発生直後、自身の公式サイトを通じ て「TEAM JAPAN」を立ち上げ、競技の枠を超えた多くのアスリートに参加を呼びか けるなど、幅広く活動している。 今後は「スポーツを通じて社会に貢献したい」と次なる目標に向かってスタートを切る。