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.政治  投稿日:2017/9/26

「希望の党」を甘く見るな


安倍宏行(Japan In-depth 編集長・ジャーナリスト

「編集長の眼」

【まとめ】

・25日小池百合子都知事、新党「希望の党」立ち上げ宣言、自ら代表に。

・安倍首相は同日解散会見、「国難突破解散」と名付ける。

・小池氏は幅広く候補者擁立予定、多くの国会議員が離党し新党への参加が予想され、選挙の行方は混とんとしてきた。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全てが見れず、写真の説明や出典のみ記載されていることがあります。その場合は、http://japan-indepth.jp/?p=36325にて記事をお読みください。】

 

やはり、というべきか。週明け25日の新党立ち上げ宣言、

想像以上に早く小池氏は決断した。「希望の党」代表就任だ。完全に戦闘モードに入った。しかも安倍首相の解散会見よりも早い時間の記者会見、用意周到さが際立った。こうしてみると、都知事になった時から国政を睨んでいたのは明白で、最終目標は総理の座だろう。

さて、安倍首相はこのタイミングでしか解散できなかったとはいえ、小池新党を甘く見ていたのではないか?現政権の支持率が何とか持っているのはほかに選択肢がなかったからである。言わば民進党という存在、敵失があったからこそ、だ。ところが、「希望の党」に続々国会議員が集結する、となると話は別だ。誕生したばかりの党が早くもキャスティングボートを握ろうとしている。

安倍首相の「国難突破解散」というのもいまいちピンとこない。特に消費税の使途変更については批判が強まっている。財政再建が遠のくためで市場の信認が毀損する。そんなことより、高齢者に手厚い社会保障費の組替えで、働く世代への分配を実現すべきだろう。小手先の政策は止めていただきたい。

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▲写真 会見する安倍首相 2017年9月15日 出典:首相官邸

そんな悪手を出すものだから小池氏にこちらは「消費税凍結」とやられてしまうのだ。会見で安倍首相は小池新党について聞かれると、「希望というのは、いい響き」とか「安全保障の基本的理念は同じ」とか「オリンピック・パラリンピックを成功させなければならないという共通の目標を持っている」とか、無理に持ち上げるようなことを言っていたが、小池氏はこの選挙に対し本気モードだ。死ぬ気で向かってくるだろう。自民党は甘く見ない方がいい。

世にいうコメンテーターやら、新聞の論説とか編集委員の中には小池氏を蛇蝎の如く嫌う人が多く、ネガティブな事しか書いたり言ったりしないので、「希望の党」なんていっても大して議席は取らないはずと思いこまされがちだ。

しかし、選挙は水もの、風によって大きく動く。特に今回は女性が小池氏を応援している。「おっさん政治」よ、サヨウナラということだ。「しがらみ」から抜け切れず、「忖度」ばかりの政治。いくら景気は上向いていると言われても、一向に庶民の暮らしは楽にならない。「トリクルダウン」が来るはずだったのに来ないじゃないか。そう思っている人は多い。

そして、「女性よ輝け!とか言われても、輝くどころか子供を預ける場所すら見つからないのにどうやって働けというのか!」「子供が欲しくても産めないじゃないか!」こうした女性の「怨嗟の声」は先のコメンテーターの人たちの耳には届いていないようだ。

これから投票日に向け、連日テレビで延々と票読みが繰り広げられるだろうが、有権者は意外と冷静に見ている。個人的には安倍首相の目指してきた方向は間違ってはいないと思う。自衛隊を憲法に明記する事や安全保障により多くの予算を割くことに多くの国民は絶対反対ではないだろう。

しかし、謙虚さを失い、傲慢さが前面に出てくると人は反発するのが世の常だ。社会保障は国民の最大の関心事。若い層から高齢者まで、将来が不安だからこそお金が消費に回らない。その改革に手を付けないでこのまま日本経済が立ち行くとは誰も思っていない。安全保障も経済あってこそだ。

小池氏はそこを突いてくるはずだ。「フェアに戦いたい」と会見で述べた安倍首相。油断していると寝首をかかれることになりかねない。

トップ画像:小池百合子都知事 2017年6月 Photo by 江戸村のとくぞう


この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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