羽ばたけ、女性起業家 東京都が後押し
安倍宏行(Japan In-depth 編集長・ジャーナリスト)
「編集長の眼」
【まとめ】
・東京都主催の女性起業家を支援するプログラム「APT Women」の第一期受講生が発表された。
・日本に埋もれている最大の未利用エネルギーである「女性の力」を生かし経済を活性化させる目的がある。
・受講者は女性起業家のロールモデルとなることが期待されている。
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APT(Acceleration Program in Tokyo for Women)第一期プログラムキックオフイベントが、9月29日、都内で開催された。「APT Women」とは東京都が主催する女性起業家を支援するプログラムである。初の女性都知事としてこのプロジェクトを支援する小池百合子氏も登壇した。
・APT Women(アプトウィメン)事業概要
写真)デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社 金澤静香氏
©Japan In-depth編集部
まず初めに、東京都女性ベンチャー成長促進事業APT Women運営事務局デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社の金澤静香氏が登壇した。金澤氏はまず、女性が起業しにくい現状の背景として、管理職経験の不足、企業やスケールアップに必要なノウハウを得られるネットワークの乏しさなどを挙げた。
こうした課題を解決するために立ち上がったのが‘APT Women’だ。スケールアップを目指す女性起業家に短期集中型育成プログラムを提供し活動をサポートしていく。プログラムは以下の内容で構成されている。
・国内アクセラレーションプログラム(3か月間)
1 講義型プログラム
2 イベント型プログラム
3 個別メンタリング
・海外派遣プログラム(2週間弱)
「国内アクセラレーションプログラム」の内、1つ目の講義型プログラムは、国内外の著名な起業家や投資家、ビジネススクール等の教授陣を講師として招き、課題を解決し得る知識・スキルやスケールアップに必要なノウハウの習得の他、起業エコシステムに対する理解をより一層深めるという。
2つ目のイベント型プログラムは、(受講生の)スケールアップに欠かせないビジネスパートナーと為り得る大企業との定期的な接触の機会を確保することで、事業拡大に必要なネットワークを築くこと目指す。
3つ目の個別メンタリングで、受講生一人一人に応じ、事業計画のブラッシュアップ等を支援し、スケールアップが円滑に進むようサポートする。
「海外派遣プログラム」は、海外への販路拡大や事業展開を目指す10名を選抜し、女性起業家の活躍がめざましく、スケールアップの舞台にふさわしい海外都市へ派遣するものだ。
このプログラムは「全員参加型プログラム」と「個別支援」から成り、前者は現地での資金調達やPRに関するノウハウ習得を目的とし、後者はビジネスパートナーとの商談や現地のマーケット調査等、海外展開を強力に進められる知識と経験を獲得できるようサポートするものだという。
金澤氏は「プログラム終了後は受講生に後に続く起業家に対して、ノウハウ・ネットワーク(を引き継ぎ)、起業という新しい生き方を選択するロールモデルとなり、東京が女性起業家の活躍しやすい都市になることを期待している」と述べた。
・受講者に寄せる期待
写真)小池百合子東京都知事・希望の党代表
©Japan In-depth編集部
続いて本プログラム主催者小池百合子東京都知事が登壇した。小池氏は「女性ベンチャーを育てることは東京を元気にする秘訣である。」と述べた。これまで自身の経験含め、女性というだけで起業の際、融資を受けられないといった事例も多くあった、という。「やる気のある女性、知恵のある女性、アイデアのある女性。女性の力を生かして、起業の先頭に立ってほしい。」と期待感を示した。
また、日本は女性活躍推進のランクが低い(The World Economic Forum“WEF”145か国中111番目)現状を指摘、「女性起業家たちに力をつけて世界に打って出るような気持ちで挑戦してほしい。」とエールを送った。
さらに、起業を考えている人に対し、ワンストップサービスで相談できる「TOKYO創業ステーション」の活用を勧め、「子育てで仕事を辞めざるを得なくなった人には、子育て中だからこそのアイデアを見つけてほしい」と述べた。また、「女性が輝く東京が日本の経済を牽引する。それぐらい大きな志をもって頑張ろう。ビジネスは結果がすべて。」と檄を飛ばした。
写真)株式会社ベアーズ取締役副社長 高橋ゆき氏
©Japan In-depth編集部
続いて審査員を務めた、株式会社ベアーズ取締役副社長高橋ゆき氏が登壇した。高橋氏は、審査の際、受講者たちの目、佇まい、声が印象的だったという。「佇まいからオーラを出すことは重要である。」と述べた。また、目からは熱意、声からは「覚悟が感じられた」といい、これら3つの重要性を強調した。
・受講者の思い
第2部では交流会が行われ、この日初めて互いに顔を合わせることになった第1期プログラム受講者同士は勿論、一般参加者たちも積極的に交流を深めていた。
写真)第二部交流会の様子
©Japan In-depth編集部
20人の受講者のうちの一人である、「ママのための子供服リユースプラットフォーム「キャリーオン」の運営」をしている株式会社キャリーオン(2017年9月29日サイトリニューアル)代表取締役長森真希氏に話をきいた。
写真)株式会社キャリーオン代表取締役 長森真希氏 ©Japan In-depth編集部
長森氏は「今は女性にとって起業するのがいい時代。行政も後押ししてくれる。チャンスを生かすべきだ。」と述べるともに、「自分のプロダクトには自信があったので、選ばれるかどうかは“必要とされるかどうか”だと思っていた。」と心境を語った。また、APT Womenに一番期待することとして「“出会い”である。どういった“ご縁”をつなげていけるかだ。」と今後生まれるネットワークに期待感を示した。
長森氏はアジア特に途上国の起業家と出会う中で、「立ち上げてからのスピード、退路がない必死さ。」に圧倒されたという。「日本でもそうしたエネルギーを生み出したい。」と決意を述べた。
写真)アボワールインターナショナル株式会社代表取締役 中村真由美氏
©Japan In-depth編集部
また、「お洒落で実用的な乳がん患者用下着の開発・販売」をしている、アボワールインターナショナル株式会社代表取締役中村真由美氏は、海外派遣プログラムで「乳がんの治療は欧米が最先端。欧米の患者はどうしているのか見てきたい。」と述べた。
また、「日本に次いで乳がん患者が増加している東南アジアでは日本と同じ年齢層で(がんの発症が)増加しており、医療は行き渡っていない。下着で患者の役に立ちたい。」と意欲を示した。
APT Women第1期は10~12月に国内アクセラレーションプログラムを実施、来年1月下旬から女性起業家が活躍しているニューヨークへの派遣を予定している。
第2期は来年度前半、第3期は来年度後半を予定。各期終了後、受講生全員から本プログラムを通じて得た経験等を都内の女性起業家や起業を考えている人に対して発表する場を設ける。
記事制作:Japan In-depth編集部(大川聖)
取材:Japan In-depth編集部(大川聖、萩生田真衣)
トップ画像:APT Women 第一期プログラムキックオフイベント登壇者とプログラム受講生 ©Japan In-depth編集部
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この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員
1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。
1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。
1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。
2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。