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.国際  投稿日:2018/8/31

「ビジネス英語」という幻想


坪井安奈(タレント・編集者・プロモーター)

「坪井安奈のあんなセカイこんなセカイ」

【まとめ】

・「ビジネス英語」に怯えるなんて馬鹿らしい

・「業界用語」と「ビジネス用語」は別もの

・英語社会に出て、実践で学ぶことほど早い成長はない

 

 

「英語、話せますか?」と質問された時に、非常によく聞くパターンの返しがある。

 

「日常会話ならできますが、ビジネス英語はちょっと・・・」

 

謙虚さや自信のなさから、こう言いたくなってしまうのは非常に理解できる。だが、少し考えてみてほしい。

 

あなたの言う「ビジネス英語」って、なんだろう?

 

当然、「ビジネスの場に適した英語」という意味だ。でも、その定義は非常に広義で曖昧だ。よく英会話教室の広告などに「ビジネス英語が学べる!」などと謳われているため、私たちは「ビジネス英語」と気軽に言ってしまいがちだが、実例を挙げて「ビジネス英語とは何か」を具体的に説明できる人は、実は少ないと思う。

 

そんな曖昧な言葉に怯えているなんて、馬鹿らしいとは思わないか。私たちはどんなに英語を勉強していたとしても、実際に仕事の場で使ったことがないと、ビジネスの場ではもっと難しい英語が使われているのかもしれないと不安になってしまう。でも、もしかしたらそれは私たちの勝手な幻想かもしれない。

 

結論から言おう。私はビジネス英語なんて言語はないと思っている。前回の人工言語「シングリッシュ」が便利すぎる件の記事でも触れたが、日本人は正しい英語というのを意識しすぎている節がある。だが、私はたとえビジネスの場であっても、英語で重要なのは形ではなく中身だと言いたい。

 

現在、私はシンガポールで英語を使って仕事をしているが、実際に仕事を始めてみれば、形の表現なんて二の次であることを痛感する日々だ。

 

英語は言語で、言語はコミュニケーションだ。だから、相手にきちんと伝わり、自分の思いを理解してもらうことが何よりも最優先されるはずである。

 

 

「ビジネス英語」があるなら「ビジネス日本語」ってどれ?

 

 

もし、仮に「ビジネス英語」というものが存在するなら、「ビジネス日本語」も存在するはずである。では、「ビジネス日本語」とは、どんな言語のことを指すのだろうか?

 

敬語?社交辞令?メールなどでお決まりの「お世話になっております」?「今後ともどうぞよろしくお願いいたします」?

 

もちろん、相手を想って丁寧な表現を使おうとする心遣いは大切だ。でも、普段、我々がメールに「お世話になっております」「今後ともどうぞよろしくお願いいたします」と書く時、そこにはどの程度の「想い」が込められているだろう。

 

正直、そこに心はほとんどない。単なる決まり文句としてつけられた飾りにすぎない。私は日本で働く外国人に、そんな飾りの言葉を使ってほしいとは全く思わないし、そもそも自分自身も学生の時には知らない表現だった。

 

もっとも、最近はFacebookメッセンジャーやLINEで仕事を進める時代だ。日本人の我々でさえ、こういった決まり文句は無駄だと感じる瞬間も多い。

 

たしかに、英語にもある種の敬語や決まり文句のような表現は存在する。

 

Nice to meet you.よりPleasure to meet you.の方が丁寧だし、Please check this quotation.より、Kindly check this quotation.の方が丁寧だ。だが、正直こんなのどちらでもいい。字面よりも、その時の表情や声のトーンの方が伝わり方に何倍も影響すると実感している。

 

メールの決まり文句もたしかに存在する。一般的に、問い合わせがある場合は件名をInquiryから書き出し、本文はDear ○○ Warm greetings from ~などから始め、Thank you and have a great weekend.  Best Regards, ●●などと締める。

 

ただ、これを使えなかったとして、どれほどの問題になるだろうか。もちろん、知っていて損なことはないが、知らなくても仕事はできるのだ。

 

 

「業界用語」と「ビジネス用語」は別もの

 

 

とはいえ、実際に仕事で英語を使うことになれば、難しい単語や表現をたくさん覚えなければならないだろう。でも、おそらくそれらのほとんどはビジネス英語ではなく、「業界用語」と言えると思う。

 

「業界用語」は、英語に限らず、たとえ日本語でも、異なる業界へ転職すれば覚えなければならない言葉だ。

 

たとえば、IT業界で働いていない人は、「UI/UX」「KPI」「MAU」という言葉の意味を知らない人も多いだろう。

 

出版業界で働いていない人は「束見本」「ノンブル」「トルツメ」を知らない、広告業界で働いていない人は「オリエン」「純広」「シズル感」を知らない、テレビ業界で働いていない人は「完パケ」「アバン」「パン」を知らない・・・

 

というように、日本語でも、業界や業種が違えば知らない言葉だらけだ。

 

でも、これは単に知らないだけであり、ビジネスとしての日本語スキルがないということにはならない。一度覚えてしまえばおしまいだ。

 

私たちは英語においてはまだ学生

 

もう一度言おう。「ビジネス英語」なんて変な言語は存在しない。

自分たちが勝手に作ったそんな幻想の言語に怯えずに、英語をどんどん使ってほしいと強く思う。私たちが学生から社会人になった時ように、使ううちに適切な表現というものは身についていくもの。

 

私たちはまだ、英語においては学生であるだけなのだ。であれば、早く卒業しよう。さっさと英語社会に出て、実践で学ぶことほど早い成長はないと私は思う。

 

トップ画像:イメージ 出典)ACフリー画像


この記事を書いた人
坪井安奈タレント/編集者/プロモーター

タレント/編集者/プロモーター。シンガポールと日本で「複業」&「複住」生活。ビジネス番組『賢者の選択』レギュラー出演中。Voicy『坪井安奈のあんな英語こんな英語』毎日更新。

Instagram: @tsuboianna Twitter: @anchuuuuuuu

坪井安奈

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