.政治  投稿日:2018/9/26

”沖縄米兵住居侵入事件”報道された?

Pocket

Japan In-depth編集部(佐藤瑞季)

【まとめ】

・9月7日夜、沖縄県読谷村で米兵が住居侵入で緊急逮捕された。

・「9月19日まで12日間報道されなかった」のは本当か→3社が報じており”誤り”

・背景に「県知事選の最中で安倍政権に不利にならないように」という意向が働いたのか→”根拠不明”

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真の説明と出典のみ記載されていることがあります。その場合はJapan In-depthのサイト  https://japan-indepth.jp/?p=42162  で記事をお読みください。】 

 

沖縄県知事選の開票日まであとわずかだ。ネット上では沖縄県知事選に関する様々な言説が飛び交っており、事実か否か疑わしいものも多い。有権者が正しい情報をもとに、選挙権を行使することが重要であることから、候補者等の発言だけでなく、これらのネット上の言説を点検していくことも重要だ。 

写真)沖縄選の候補者一覧

出典)各候補者のfacebookページより

 

今回は、個人ブロガーとして影響力のあるきっこ氏(@kikko_no_blog)のツイッター上での以下の言説について、真偽を検証していく。

 

【検証対象】

言説内容

「9月7日夜、沖縄県読谷村で突然、米兵が自宅に侵入して来たため、その場にいた高校2年の少女は「殺される」と思い、生後5カ月の妹を抱いて窓から脱出した。しかし、この事件は、県知事選の最中ということで、安倍政権に不利にならないように今日まで12日間も報道されなかった」とのこと。

(2018年9月19日のtweetより)

https://twitter.com/kikko_no_blog/status/1042748617012834304

 

この言説を

⑴9月19日まで12日間報道されなかったのか
⑵背景に「県知事選の最中で安倍政権に不利にならないように」という意向が働いたのか

という2点に分けて検証していく。

 

はじめに、今回の検証対象言説で取り上げられている「事件」の概要は、報道を総合すると以下のとおりとなる。

沖縄県読谷村の民家に無断で入ったとして、沖縄県警嘉手納署は8日、米軍嘉手納基地所属の陸軍上等兵を住居侵入の疑いで緊急逮捕した。20日に那覇地検が嫌疑不十分であるとして、不起訴処分を下した。

事件発生当時、容疑者は酒に酔い上半身裸の状態であり、侵入された家には高校2年の少女と生後5カ月の女児だけしかいなかった。少女は「殺される」と感じ、妹を抱きかかえて裸足で窓から飛び出し、近隣の知人宅に逃げ込んだという。

写真)嘉手納基地の米軍の様子

出典)在沖米空軍嘉手納基地のTwitter(@KadenaAirBase_J)

 

事実・証拠

 

⑴9月19日まで12日間報道されなかったのか

 

調査対象としたのは、琉球新報沖縄タイムス、全国紙の読売新聞朝日新聞日本経済新聞毎日新聞産経新聞の7紙だ。

 

9月7日以降の各紙のデータベースで「沖縄 米兵」、「嘉手納署」、「読谷村」というキーワードで検索をかけ、事件に関する記事の有無を調べた。また、琉球新報、沖縄タイムスは一部の記事しかサイトに掲載しないとのことだったので、加えて紙面閲覧、問い合わせを行った。

 

最初にこの事件について報道したのは朝日新聞である。 

 

沖縄の米兵、酔って住居侵入した疑い 県警が逮捕

 

沖縄県読谷村の住宅に入ったとして、嘉手納署は8日、米軍嘉手納基地所属の陸軍上等兵を住居侵入の疑いで逮捕し、発表した。酒に酔っていて「間違って入った」と供述しているという。

 署によると、容疑者は7日午後10時半ごろ、読谷村内の住宅の無施錠の玄関から屋内に入った疑いがある。「外国人が騒いで人の家に入った」と110番通報があり、駆け付けた警察官が住宅近くにいた容疑者を緊急逮捕した。近くの知人宅で数人で飲んでいたが、1人で出て行ったという。

 

出典 )interest archive

 

 

9月8日に緊急逮捕を報じ、米兵による住居侵入を伝えているものの、少女についての記述はなかった。この記事は現在、閲覧できない状況だ。朝日新聞に問い合わせたところ、「詳細は述べられないが、個人情報の保護という観点から編集部の判断で消去された」とのことだ。おそらく逮捕された米兵が不起訴になったことが記事削除の理由ではないかと推測される。

 

また、9月9日には、琉球新報が「酒酔い住居侵入 米陸軍兵」、沖縄タイムスが「住居侵入疑い 23歳米兵逮捕」という見出しで、社会面で事件を報じていた。これらの記事にも在宅していた少女らに関する記述はなかった。

 

その後、20日に琉球新報沖縄タイムス、21日に毎日新聞の西部朝刊、読売新聞の西部夕刊、22日に再び琉球新報で、初めて少女らが在宅していた事実やその様子などが報じられていた。

 

こうした事実は、読谷村議会が事件を調査し、19日の臨時会で事件について抗議する意見書と抗議書を決議したことで明らかになった。そこには、「上半身裸のアメリカ兵の1人」、「被害者は侵入者を見た瞬間に殺されると思い、無我夢中自宅でのリビングの窓から乳飲み子を抱え飛び出し近所に助けを求めた」等、具体的な記述があった。同日、読谷村の石嶺村長は在沖米陸軍のセオドア・ホワイト司令官に抗議した。

写真)読谷村長の石嶺傳實氏

出典)読谷村HP

 

なお、日本経済新聞、産経新聞は24日現在、この件に関する報道は確認できなかった。

 

判定:誤り

 

以上をまとめると、朝日新聞が8日付で、琉球新報、沖縄タイムスが9日付で米兵逮捕の案件を報じているため、きっこ氏の「12日間も報道されなかった」というのは事実と異なり、「誤り」と言える。

 

⑵報道されなかった背景に「県知事選の最中で安倍政権に不利にならないように」という意向が働いたのか

 

他方で、少女らが在宅していた事実など、事件の重要な事実関係が12日間報じられず、村議会の調査で初めて報じられたことも確かである。では、きっこ氏の指摘するように、こうした事実が報道されなかった背景に「県知事選の最中で安倍政権に不利にならないように」という意向があったと言えるのか。きっこ氏のツイッターやブログを見たところ、そのように主張する具体的根拠を何も示していなかった

 

そもそも、米兵の住宅侵入事件は知事選(9月13日告示)の5日前に発生し、「県知事選の最中」に起きたわけではない。また、県知事選は30日の投開票日まで続くが、選挙中盤の20日以降になって詳しく報道されている。したがって、少女らが在宅していた事実などが報じられなかったことと「県知事選の最中」であることは、直接の関係がなく「安倍政権に不利にならないように」という根拠はないと言える。

 

ただ、嘉手納署は、事件発生当初の捜査で、少女らが在宅していた事実を把握していた可能性がある。そうした事実がメディアの取材で明らかにならなかったのはなぜなのかという疑問は残る。だが、今回の検証ではそうした疑問を解明できなかった。

 

 

判定:根拠不明

 

この事件は、発生当初から多くのメディアが報じており、知事選の最中に詳しく報じられている。少女らが在宅していたことが報じられなかった理由は定かでないが、「県知事選の最中ということで、安倍政権に不利にならないように」という主張は事実に基づかず、根拠が不十分である。

 

 

(JIDファクトチェック方針)

 Japan In-depth(JID)は、ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)と協力して、沖縄県知事選(2018年9月30日投開票)に関する言説・情報のファクトチェックに取り組みます。候補者などの政治家、有識者の発言、メディアの報道・ニュース記事など、知事選に関連する社会的に影響の大きな言説を取り上げます。本プロジェクトにおけるファクトチェック記事は、FIJのファクトチェックプロジェクト参加メンバーの調査等によるものですが、編集責任者はJID・安倍宏行編集長となります。

 

 このプロジェクトで使用する判定基準は、次のとおりとします。

 

 「正確」

 「おおむね正確」   (重要な部分は事実に基づいているが、一部に不正確、ミスリードな点もある)

 「ミスリード」 (言われていること自体は事実だが、誤解を与える内容である)

 「根拠不明」              (誤りと断じられないが、事実と認めるだけの根拠が不足している)

 「誤り」

トップ画像:©FIJ

 

 

 

Pocket

copyright2014-"ABE,Inc. 2014 All rights reserved.No reproduction or republication without written permission."