[古森義久]<オバマ大統領 支持率41%、最低水準に>超大国らしい指導権を失わせた米オバマ外交
古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)
アメリカ国民の間でのオバマ大統領への支持がますます落ちてきた。5年ほど前、アメリカ史上初の黒人大統領として颯爽と登場した時からみると天地の差ほどの違いである。大統領自身にとってこの春は文字通りの内憂外患に迫られ、残酷な政治季節となりそうだ。
オバマ人気の低落を改めて示したのは3月12日に発表された『ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)』と『NBCテレビ』の共同世論調査結果だった。オバマ大統領への支持率が41%と、この調査の5年間での最低水準を示したのだ。不支持率は逆に最高の53%だった。これらの数字は今年1月の同じ調査ではそれぞれ43%と48%だった。だからオバマ氏への支持は着実かつ大幅に減り、不支持が増えるという一方的な流れが明確となったわけである。
今回の調査ではとくにオバマ大統領の外交政策への支持率が41%と、これまたこの調査での最低を記録した。エジプト、シリア、リビア、そしていままたウクライナと、アメリカにとっては超大国らしい指導権をすっかり失った後退や挫折の一途なのだ。このオバマ外交への支持率は今年1月には44%だった。ここでも右下がりの傾向が顕著なのだ。
内政をみてもオバマ大統領が就任以来、最も精力を注いできた「オバマケア」、つまり医療保険改革が、法律がすでにできてもなお国民多数派の反対で揺らいでいる。今回のWSJ・NBC調査でも、対象となった国民の49%がこの法律は「悪い」と答えた。「よい」と答えた人が35%だったから、この法律の破棄を求める共和党側はなお勢いづくことになる。
さらにオバマ大統領にとって深刻なのは、今回の調査で今年11月の中間選挙(連邦議会の上院の3分の1と下院全体の改選)では投票相手を決める際にオバマ大統領への批判を要素にすると答えた人が33%もいたことだろう。オバマ支持を要素にして投票すると答えたのが24%だった。
このオバマ支持の比率は今年1月には35%だったから激減である。つまり民主党の上下両院議員選での候補たちにとって、オバマ大統領からの支援はマイナスになる、オバマ氏との縁を切ってみせたほうが有利になるということなのだ。
だからいまさらに激しくなったオバマ不人気は民主党全体に大きな影響を与える見通しが強くなったといえる。そうなると、2016年の大統領選挙での最強候補とされる民主党ヒラリー・クリントン氏の勝利への展望もそう簡単には予断を許さないことともなろう。
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