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.国際  投稿日:2018/12/21

サウジ皇太子の威光、絶対ではない


宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)

「宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2018 #51」

12月17-23日

【まとめ】

外務省の依頼で中東4カ国を回った。

・露ゲートでトランプ氏に何か起きればサウジ皇太子の地位も危ういとの見方。

サウジ皇太子の威光も決して絶大ではない。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトでお読みください。】

 

今年もあと二週間となった。今バンコク発の全日空便で羽田に向かって飛んでいる。いつもなら月曜日の夜に何とか書き上げるのだが、今週は事情変更。過去一週間、外務省の依頼で中東4カ国を回り講演やインタビューを行った。最近海外講演は米国ばかりだったなと反省し、安易に引き受けたのが間違いだった。

 

結果的には、7日間で4カ国、経由地を含め7カ国の「地獄のロード」となったが、それをOKしたのは筆者自身だから、まさに自業自得だろう。昨日はアラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビで朝昼晩の三回、講演とプレゼンをこなした。楽しかったが、体力的限界を超えたらしく、執筆が遅れてしまった。

 

オマーンは筆者の大好きな、湾岸地域の良心を代表する国だ。この古くからの海洋国家は相変わらず堅実で開放的。イランは目と鼻の先、ホルムズ海峡に近いアラブ首長国連邦とオマーンだが、オマーンがイランとも関係が良いのに対し、UAEはイランに対する警戒心に満ちていた

写真)オマーン・スール

出典)Wikipedia

 

オマーンからは深夜便でイスタンブール経由チュニジアに向かった。イスタンブールといえば、かのサウジ人ジャーナリストを思い出す。某国総領事館にだけは何となく敬遠だ。もっとも、トランプ政権とサウジの二人の「皇太子」は反イランで一致している。あの事件は「トカゲの尻尾切り」で終わりだろう。

 

しかし、出身国名は言えないのだが、今回会った湾岸アラブのある識者は、ロシアゲートでトランプ氏に何かが起これば、サウジ皇太子の地位も危うくなると本気で心配していた。なるほど、そういう見方もあるのだな、サウジ皇太子の威光も決して絶大ではない、ということかもしれない。

写真)トランプ大統領とムハンマド皇太子(2017)

出典)Wikipedia; Public Domain

 

チュニジアではまだ民主化の試行錯誤が続いているようだ。ベンアリ時代の方が良かったという声すら聞いた。民主化しても、経済が良くなるわけでも、素晴らしい政府ができるわけでもない。民主主義とは何十年か過去を振り返った時、致命的なミスだけはなかったと言える政治体制でしかないのだから。

チュニスの次はエジプトだ。あの懐かしい首都カイロは筆者が2年間アラビア語を研修した場所。イラン革命直後からサダト大統領暗殺の直前まで住んだが、あれから40年、エジプトは元の軍政に戻ってしまった。今週の産経新聞コラムではエジプトでの日本式教育について書いたのでご一読賜りたい。

 

ここまで書いたところで、PCの電池が残り20%になった。この原稿を機内Wi-Fiで送信できるうちに送ってしまわないと。というわけで、今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

 

トップ写真)中東地域地図(イメージ)

出典)pixabay; ErikaWittlieb

 


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