「負担を公平に軽減する難しさ」自民党税制調査会長宮沢洋一参議院議員
「細川珠生のモーニングトーク」2018年12月22日放送
細川珠生(政治ジャーナリスト)
Japan In-depth編集部(石田桃子)
【まとめ】
・「2019年度税制改正大綱」、地方法人課税の偏在是正措置や、診療報酬の見直しに関する提言含む。
・法人事業税の一部国税化と再配分は、都道府県の税収を経済活動に見合うよう調整するもの。
・負担を公平に軽減するには、より精緻複雑な仕組み作りが必要。
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今月14日、与党自民党・公明党は「2019年度税制改正大綱」を決定した。消費税増税も予定される2019年、税制はどのように変わるのか。今回の「細川珠生のモーニングトーク」では、「税制改正大綱」議論の中心を担った自民党税制調査会の会長であり参議院議員の宮沢洋一氏をゲストに迎え、政治ジャーナリストの細川珠生が話を聞いた。
はじめに細川氏は、「税制改正大綱」で決まった、東京都の税収のうち約9000億を地方に配分する施策の正当性について聞いた。宮沢氏は、「都民の税金を地方にばらまく施策だ」という見方を否定した。まず、「約9000億円という数字は正確ではない」と批判した。地方税として会社に納付が義務付けられている税には2種類ある。
(1)法人住民税
(2)法人事業税
(1)については、東京都の税収の一部を国税化し、その全額を地方交付税として再配分することを「平成28年度税制改正大綱」にて 決定済み。今回「2019年度税制改正大綱」で見直されたのは、(2)についてであり、再配分される額は、今年度予算をもとに概算すると約4200億円であるという。(参考1)
次に、「施策の目的は是正であり、合理的」と主張した。従来、東京に本社のある企業の事業税は、東京都に収められた後、支店や工場や従業員の分布に応じて地方に再配分されてきた。しかし事業形態が変化した近年、この方法は、税収の均衡に機能しなくなってきているという。
例えば、地方の商店に代わって普及したコンビニは、本社にロイヤリティを支払うため利益のほとんどが東京に集約する。その他、ネット販売の普及や、分社化、工場の海外移転は、もともと地方にあった利益を東京に集約させた。その結果、東京都はGDPが全国の約20%である一方、全国の法人税収の25%を占めるという、不均衡が発生した。宮沢氏は、「法人事業税の再配分は、税収を経済活動に見合った額に調整する施策だ」と述べた。
▲写真 ©Japan In-depth編集部
細川氏は、「税収は東京都が適切に運営する方がよい」という考えを示した上で、「不均衡の是正」と「ひと・ものが集まる首都東京の特性」との間でバランスを取ることが課題となると述べた。また細川氏は、「2019年度税制改正大綱」が国家予算に関してどのような提言をしているのか、宮沢氏に聞いた。
宮川氏は、医療費についての提言を例に挙げた。医療費をめぐっては、消費税導入直後から議論されてきた問題がある。社会保険診療の料金は非課税であるのに対し、医薬品や設備の仕入れには消費税が課せられるため、医療機関が消費税分の負担を強いられるという問題である。従来は、診療報酬に上乗せをすることで、調整を図ってきた。しかし、医療行為の種類の違いや大きな投資の有無によって、全ての医療機関の負担を公平に軽減することができないという、新たな問題が発生した。この問題に対し「税制改正大綱」では、診療報酬への上乗せについて、金額や項目をより精緻に区分することを提案しているという。(参考2)
細川氏は、国民も来年度の予算審議に向けて、政府で進められている検討について関心を持つべきだと締めくくった。
参考1
法人住民税の一部を国税化し、都道府県に再配分する:「法人住民税の交付税原資化」法人事業税の一部を国税化し、都道府県に再配分する:「特別法人事業税(仮称)及び特別法人事業譲与税(仮称)の創設」 参考:総務省「平成 28 年度地方税制改正(案)について」、「平成 31 年度地方税制改正(案)について」
参考2
社会保険診療:公的医療保険でカバーされる医療
診療報酬:保険医療機関及び保険薬局が保険医療サービスに対する対価として保険者から受け取る報酬。 厚生労働大臣が中央社会保険医療協議会(中医協)の議論を踏まえ決定(厚生労働大臣告示)出典:厚生労働省「消費税と診療報酬について」「診療報酬制度について」
参考URL http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/11/15/documents/14_01.pdf
(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2018年12月22 日放送の要約です)
「細川珠生のモーニングトーク」
ラジオ日本 毎週土曜日午前7時05分~7時20分
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この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト
1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。