世界にトビタテ高校生たち!
Japan In-depth編集部(髙橋十詠)
【まとめ】
・グローバル化に対応できる若者を輩出する「トビタテ留学JAPAN日本代表プログラム」の事前研修が開催。
・返済不要の奨学金は全て民間の寄附による。
・十人十色の留学プラン。高校生たちは「わくわくしている」。
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2019年6月8日、トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラムの高校生コース第5期生の壮行会および事前研修が開催された。プログラムに参加する高校生たちは様々な形でこれから海外に飛び立つ。プランはひとりひとり異なり、懇親会、事前研修を通し互いを高め合う刺激的な1日となった。
国際協力銀行の調査によると、世界最先端の少子高齢化社会である日本では、8割以上の企業が海外事業を強化・拡大している。日本企業の海外売上高比率も、2002年の27.9%から2017年の39.3%と増加傾向にある。平成28年12月の内閣府の調査によると、グローバル人材育成の取り組みとして、世論は大学生の留学支援以上に高校生の留学支援を選んでいる。
また、トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム高校生コースの派遣留学生へのアンケート調査によると、高校生が留学にあたり1番気にしていることは「部活を休むこと」であった。一方、3ヶ月以上の留学をする高校生は平成20年を底に増加傾向にあり、留学経験者を積極的に採用していきたいという企業は、全体の6割以上にのぼる。
・トビタテ!留学JAPANとは?
グローバル化に対応できる若者を輩出すべく創立された。主な取り組みである「日本代表プログラム」という海外留学支援制度では、100%民間の寄附を財源としており、2020年までに1万人の高校生、大学生を支援し、日本の内向き志向を打破する狙いがある。(文部科学省より)
日本代表プログラムには以下の5つの特徴がある。
①自分で計画
テーマ、行き先、期間は全て自由であり、自ら立てた計画で応募する。
②幅広い留学が対象
学校に通う留学だけでなく、インターンシップやボランティアも対象となる。今回の事前研修では、アカデミック分野(主に夏休みなどの休暇で2~3週間で渡航する「テイクオフ」、2週間~3か月以内で渡航する「ショート」、4カ月以上1年以内で長期的に渡航する「ロング」にわかれる)、専門を極める目的を持つ「プロフェッショナル分野」、「スポーツ・芸術分野」ボランティア活動を中心とする「国際ボランティア分野」の4分野に別れていた。
③返済不要の奨学金
渡航先エリアや期間によって定額が給付される。
給付金額例:北米に30日間留学する場合、64万円※家計基準を満たさない場合は、38万4000円。
④事前・事後研修
留学前後で、留学の効果を最大化するための研修を実施する。
プログラムに参加した「トビタテ生」が互いに刺激しあい、絆も深まる。
⑤留学生コミュニティ
同志が全国から集まり、支援企業との交流機会も設けている。
また、採用にあたり①熱意、②好奇心、③独自性の3点を重要視しており、成長が期待できるプログラムであると共に、従来の国費留学との違いである。
トビタテ!留学JAPANプロジェクトディレクターである船橋力氏によると、国費を使うと「どうしても成績や英語力を選考基準にしがちだし、学校で座学の勉強をするプログラムになりがち。留学って色々な形があっていい。」ので、上記3点を重視するために完全なる民間の寄附にこだわっているという。政府だけでなく、オールジャパンで取り組もうという姿勢のプログラムだ。
▲写真:壮行会の様子 (C)Japan In-depth編集部
・トビタテ生への想い
壮行会で船橋氏は、自らの経験を織り交ぜ高校生たちへ3つの想いを伝えた。
①”オトナを信用するな”
ここで言うオトナとは、親、教師、マスコミのことを指した。船橋氏は、「親と先生は最大限の愛情をもって色々モノを言う。謙虚な心で話を聞くのは大事。でもそれが正解だとは限らないから、自分で考えること。」と述べた。
またマスコミに関しては、「日本のメディアは海外と比べ、他国の情報が少ない。だからメディアの情報を信用するなという訳ではなく、他の情報も積極的に取り入れよう。」と、自ら海外のニュース情報を取り入れる重要性を伝えた。
▲写真:船橋力氏 (C)Japan In-depth編集部
②”ホップ、ステップ、ジャンプ”
「1カ国だけで世界をみることはできない。」と述べた船橋氏は、20代で3回は海外に行くことを勧めた。「1回目がホップ、2回目がステップ、そして3回目がジャンプ」と数を重ねることで見えてくる世界が違ってくることを説明し、「世界は劇的に変化を続けていて、それは日本にいたら分からない。定期的に行くということも大事。」と述べた。
③”飛び込め!”
船橋氏は、期待や不安、緊張を抱えるトビタテ生たちに、「留学中の心配はどうでもいい。やりたいこともやってみる。やりたくないことも、やってみる。危険なことはしてほしくないけど、それ以外のことはとにかく全部やってみて。」と伝えた。
・研修内容
事前研修は、一般社団法人グローバル教育推進プロジェクト(GiFT)のシニアダイバーシティー・ファシリテーターである鈴木大樹氏を講師として進められた。留学中の安全管理についてなどの説明も織り交ぜながら、主に以下3つのことが生徒に伝えられた。
▲写真:事前研修の様子 (C)Japan In-depth編集部
①Comfort Zone(コンフォート・ゾーン)を出ること
私たちの周りには、コンフォート・ゾーン(Comfort Zone)、ラーニング・ゾーン(Learning Zone)、パニック・ゾーン(Panic Zone)がある。
コンフォート・ゾーンは、1番居心地の良い場所だが、自分が何か変わりたいときはこのゾーンを出なければならない。ラーニング・ゾーンにいると、普段とは違う環境に多少の違和感を感じるかもしれない。鈴木氏は「環境が変わってもいつもと同じ自分、行動を選んでいたら成長はできない。意識していつもと違う自分を選ぶことが大事。」と説明した。
②すべてを”自責”でとらえる
鈴木氏は「ヒトのせいにしていたら成長は起きない。自分の学びは自分でつくるというマインドをもつこと。」と、自分の学びと成長に自分で責任をもつように促した。
③「日本代表プライド」を持つ
これは、日本代表を”自分事化”するということだが、「日本代表としての留学とは何か。どんな可能性があるのか。」という鈴木氏の問いに対して
「愛国心を持ちながら、異文化を受け入れ行動すること。」
「海外で学んだものを日本に持ち帰り、海外のものと日本のものを融合させ、日本の価値をあげること。」
など、生徒から様々な答えが出た。
▲写真:事前研修 グループセッションの様子 (C)Japan In-depth編集部
・トビタテ生の心境
昼食時および懇親会では、トビタテ生同士が楽しそうに会話する様子がみられた。数名に留学を目前とする心境を聞いたところ、目的やプランは様々であった。
「テイクオフ」のテーブルには、フクロウの研究をするためロンドンへ行く生徒がいた。「フクロウの生態や習性について学びたい。そのためにも、近い将来はロンドン大学に進学したい。」と熱意を示した。
また、アメリカ、カリフォルニア州にインクルーシブ教育(障害のある者もない者も同じ環境で共に学ぶ)を学びに行く生徒は、「日本は障害を持っている人とそうでない人で別れている。自分も障害をもっていて、友達や先生方との関係性に悩んだことがあったので、実際に見に行きたい。すごくワクワクしている。」と目を輝かせていた。
「国際ボランティア」のテーブルには、フィリピンで2週間ほど英語を学んだ後、インドにあるマザーテレサ施設でこども支援をするというプランを立てた生徒がいた。
また、軍隊を持たない国コスタリカに渡航という生徒もいた。コスタリカは、日本と同じ平和憲法をもっているという共通点があるが、「日本よりも難しい環境で約70年平和を築き続けてきた理由を、現地の人から学びたい。」と渡航先の国を重視したことを述べた。
▲写真:懇親会「国際ボランティア」テーブル
「プロフェッショナル」のテーブルからは、プログラミングを学ぶために1ヶ月程香港に滞在するという生徒がいた。将来は「災害救助で活躍するロボットをつくりたい。」と夢を語った。
各テーブルで、それぞれの立てたプランや留学に対する思いに対し、「そうなんだ!」「すごい!」という声が飛び交った。研修中も、終始全国から集まった仲間たち同士、良い刺激を受けているようであった。
ここでできた友情は、これから海外へ飛び立つ際に力強い支えになり、帰国後も貴重な財産となるだろう。帰国後の彼に会うのが今から楽しみだ。
▲写真:(C)Japan In-depth編集部
トップ画像: トビタテ生 高校生コース第5期生集合写真 (C)文部科学省
【訂正】
初掲載2019年6月21日の本記事の内容を2019年6月25日、下記の通り訂正しました。
誤)事前研修は、シニアダイバーシティー・ファシリテーターであり、株式会社GiFT parentsの代表取締役・エグゼクティブコーチを務める鈴木大樹氏を講師として進められた。
正)事前研修は、一般社団法人グローバル教育推進プロジェクト(GiFT)のシニアダイバーシティー・ファシリテーターである鈴木大樹氏を講師として進められた。