「教育改革 急務」柴山昌彦文科大臣
「細川珠生のモーニングトーク」2018年11月3日放送
細川珠生(政治ジャーナリスト)
Japan In-depth編集部(石田桃子)
【まとめ】
・諸大学の不正入試問題は、医師の働き方の問題をも提起。
・幼児教育無償化と共に、女性の社会進出支援が必要。
・個々の能力に応じた教育の充実に向け、取り組み加速させる。
今年7月、文部科学省科学技術・学術政策前局長の佐野太氏が受託収賄罪で逮捕・起訴された。それに伴い発覚した、東京医科大学をはじめとする大学の不正入試問題は、教育界を大きく揺るがしている。
今回は、第四次安倍改造内閣で文部科学・教育再生担当大臣に就任した柴山昌彦氏をゲストに迎え、今後の教育改革の方針について、政治ジャーナリストの細川珠生が話を聞いた。
まず細川氏は、文科省が今月23日「医学部医学科の入学者選抜における公正確保等に係る緊急調査」の中間まとめを発表したことに触れ、柴山氏に意見を求めた。
柴山氏は、不正入試問題について「入試に関する問題と、医師の働き方に関する問題の両方を含む、奥の深い事案」との見方を示した。国際的に入試における公正性確保の要請が高まっていくことを考慮しつつ、「いくら各大学固有の建学の精神があるとはいえ、不正が認められるべきではない」と述べた。
また、「今回の調査が、浪人年数による差別という、性別による差別よりもある意味深刻な問題を明るみにした」という細川氏の指摘を受けて、柴山氏は、入学後の可能性を年齢のみを基準に判断することは不適切だとし、教育現場に再検討を促す意向を示した。
次に細川氏は、政府が力を入れる幼児教育の無償化に言及した。
細川氏は、幼児期には親子のかかわりが大切であり、幼児教育無償化や子育て支援といった政策の遂行はその理想と逆行するものだとの考えを示した。これを受けて柴山氏は、「親子の時間を持つことのできない事情がある家庭にとって、保育の質を確保する必要がある政策だ」と述べた。
細川氏はさらに、共働きを強いられる経済状況にない家庭についても制度が適用されることについて、社会的なコストや子供にとって良質な教育といった観点から疑問を呈した。これに対して柴山氏は、経済状況の切迫からではなく人生プランとして社会進出を選ぶ女性も含めて、「子育てのために仕事を離れても復帰後より活躍ができるよう、省庁の垣根を超え、政府一体となって仕組みづくりに取り組む必要がある」と述べた。
最後に細川氏は、高等教育の無償化について、ニーズにかなった政策でもある,、日本の教育に「できる子を伸ばす教育」が欠けており、優れた人材が高度な教育を求めて海外に流出することに懸念を示した。
柴山氏は、優れた人材育成に必要な政策として、現在検討が進められているもの、および既に取り組まれているものを以下のように紹介した。
1.主体的でグローバルな人材育成を目指す項目を学習指導要領へ追加
主体的に課題を設定し、ものを考えることができる能力、語学能力、プレゼン能力の教育を学習指導要領に織り込む2.特に優れた能力やリーダーシップを持つ人の育成
・習熟度別のクラス編成(教員の加配)
・能力に応じたきめ細かい教育(AIなどを利用)
・スーパーサイエンスハイスクール、スーパーグローバルハイスクール事業(指定高等学校において将来社会をけん引する科学技術人材、グローバルリーダーの育成に特化した教育を行う)※参考:http://www.jst.go.jp/cpse/ssh/ssh/public/pdf/SSH2018-2019low_mihiraki.pdf、http://www.sghc.jp/
・官民共同改革留学支援制度「トビタテ!留学JAPAN」(意欲と能力ある若者の留学を支援し、グローバル人材を育成する
※参考:https://www.tobitate.mext.go.jp/about/index.html )
・飛び入学制度
これらの方策を、OECD(経済協力開発機構)諸国の例に学ぶなどしながらさらに具体化し、インクルーシブ教育(障害のある者と障害のない者が可能な限り共に学ぶ仕組み※
参考:http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2015/06/16/1358945_02.pdf)とも合わせて教育の充実を図っていくという。
細川氏は、子どもたちが改革の実現を待たずに学校を卒業してしまうことに危惧の念を示し、「取り組みを加速させる」という柴山氏の言葉への期待を述べ、対談を締めくくった。
(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2018年11月3日放送の要約です)
「細川珠生のモーニングトーク」
ラジオ日本 毎週土曜日午前7時05分~7時20分
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細川珠生ブログ http://tamao-hosokawa.kireiblog.excite.co.jp/
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この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト
1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。