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.政治  投稿日:2019/7/10

参院選で揺れる連合執行部


八木澤徹(日刊工業新聞 編集委員兼論説委員)

 

【まとめ】

・連合は参院選責任回避のため、役員推薦の時期ずらす。

・支持政党が立憲民主党と国民民主党の2つに割れる事態。

・参院選で野党大敗なら、連合現執行部の責任問題再浮上。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthhttps://japan-indepth.jp/?p=46741のサイトでお読みください。】

 

連合は7月3日、主な産業別労働組合(産別)で構成する役員推薦委員会を開き、神津里季生会長を次期会長に推薦することを決めた。連合会長の任期は2期4年で神津氏は現在2期目。8月の中央執行委員会で了承を経て秋の定期大会で正式に続投が決まる。  

 

神津氏は新日鉄(現日本製鉄)労組出身。産業別組織の基幹労連委員長、連合事務局長を経て2015年10月に会長に就任した。ここ数年の賃上げや政府の働き方改革実現会議のメンバーとして「働き方改革」を推進した。  

 

今年11月に結成30周年を迎える連合は、UAゼンセン出身の逢見直人専従会長代行、自動車総連出身の相原康伸事務局長も留任させる方針だ。 

 

ただ、この時期での役員推薦は異例だ。役薦委の平川純二委員長(JEC連合会長)は7月21日投開票の参院選の結果を役員体制と連動させてはいかない、とし、参院選の結果の責任を取らせないため推薦の時期を一ヶ月早めたことを匂わせた。 

 

今回の参院選では、連合傘下の産別の支持政党が立憲民主党と国民民主党の2つに割れた。自治労や日教組など旧総評系は立民、UAゼンセンや自動車総連など旧同盟系は国民を支持する。神津氏の出身母体である基幹労連は製造業労組で構成する金属労協(JCM)の仲間のJAMの組織内候補を支持するが、JAMの候補は国民が擁立した。 

 

参院選の結果次第では、神津氏だけでなくUAゼンセン出身の逢見会長代行、トヨタ自動車・自動車総連出身の相原康伸事務局長の責任論まで波及する可能性があった。「それを防ぐため先手を打った」(関係者)。 

写真)逢見直人会長代行

出典)Flickr; World Economic Forum

 

1989年に旧総評系と旧同盟系労組が大同団結して発足した連合だが、2016年6月に住友化学や三井化学、昭和電工など大手化学メーカー労組で構成する産業別組合の全国化学労働組合総連合(化学総連)が連合から離脱した。 

 

化学総連は自民党支持の経営側と歩調をそろえていた。当時の民進党がこの年の参院選で共産党と選挙協力に踏み切ったことが背景にあるとみられたが、産別組織全体が連合を集団離脱するのは連合結成以来初めてのことだった。 

 

連合と共産党系の全労連とは敵対関係にある。さらに、右派系の旧同盟系の民間労組と左派系の旧総評系の官公労の対立が起きている。 

 

17年7月には高収入の専門職を労働時間規制から外す高度プロフェッショナル(高プロ)制度導入を巡り、連合内部が混乱した。神津会長が安倍晋三首相と会談し、高プロ制度導入に関する労働基準法改正案の一部修正を条件に受け入れを表明したものの、これに野党や地方組織が反発。21日に中央執行委員会で傘下労組に経緯を説明、理解を求めたものの、結局、27日に札幌市で開かれた臨時中央執行委員会で容認を撤回した経緯がある。 

 

同日夜に官邸で開かれる予定だった政労使会合は中止されたが、高プロを含む「働き方改革」関連法案は国会に提出され可決成立した。 

 

参院選で最低賃金引き上げが争点となっている。神津会長は「最賃をもっと大幅に上げるべきだし、地域間格差是正も図るべきだ」とし、立憲と国民と歩調をそろえたが、消費増税には社会補正制度維持の観点から引き上げに賛成の立場だ。 

 

今回の参院選で野党が大敗すれば、連合の現執行部の責任問題が再浮上。野党共闘も崩壊する可能性がある。

 

トップ写真)神津里季生連合会長

出典)神津里季生Facebook

 

 


この記事を書いた人
八木澤徹日刊工業新聞編集委員兼論説委員

1960年1月、栃木県生まれ。日刊工業新聞社に入社後、記者として鉄鋼、通信、自動車、都庁、商社、総務省、厚生労働省など各分野を担当。編集委員を経て2005年4月から論説委員を兼務。経営学士。厚生労働省「技能検定の職種等の見直しに関する専門調査会」専門委員。


・主な著書


「ジャパンポスト郵政民営化40万組織の攻防」(B&Tブックス)、「ひと目でわかるNTTデータ」(同)、「技能伝承技能五輪への挑戦」(JAVADA選書)、「にっぽん株式会社 戦後50年」(共著、日刊工業新聞社)、「だまされるな郵政民営化」(共著、新風舎)などがある。

八木澤徹

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