可能性に「気付き」、将来を「築く」〜何度でもやり直せる社会を目指して〜(前編)
「今、あなたの話を聞きたい」
Japan In-depth編集部(外園桃子・髙橋十詠)
【まとめ】
・鬱や不登校に対しての理解や関心は、都心と地方で差がある。
・都心の良い点は、所属するコミュニティーを自分で選べること。
・近代社会で生きづらさを感じてる人は世界的に増加しているのではないか。
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これらの言葉にどのようなイメージを持つだろうか。「社会についていけない」と感じるだろうか。では、その価値観は一体いつ、どこから生まれたのだろうか。
上記のような経験をした人の多くを、社会に輩出している会社がある。「何度でもやり直せる社会」を目指すキズキグループ。
キズキグループは「やり直したい」気持ちをサポートする会社として、個別指導塾「キズキ共育塾」を中心に、行政からの委託による若年無業者の「就労支援事業」や、経済的な困難を抱える家庭への「学習支援事業」など様々なアプローチから、困難を抱えた方々を支援している。
今回、代表の安田祐輔氏に話を聞いた。
まず、キズキグループ創設の経緯について安田氏は、「入社後、鬱になり会社に通えなくなった時がターニングポイントだった」と述べた。当時はリーマンショックとも重なり、どう食べていこうか悩んでいたとき、「自分が持っているスキルが、勉強を教えることだった。」という。
安田氏は、「食いつなぐために英語を教えたりしていたが、ただ勉強を教えるだけだと興味がわかず、意味のあることがしたかった。大学受験をやり直すときに苦労した経験があり、そういう人に特化した塾があったらニーズがあるのではないかと思い、8年前につくったのがこの塾。」と述べた。
また、会社の創立過程で苦労したことは、お客様の確保だと答えた。「社会的に意味のあることをやりたい」と思っていた分、お客様が入ってこないと「たいして意味がないのではないか」と葛藤したり、自身の生活への不安を抱いたりしたという。
▲写真 キズキグループ代表(創業者)安田祐輔氏 ©Japan In-depth編集部
次に、「社会的に意味のあることがしたい」と思うようになったきっかけとして、どのようなきっかけがあったのかを聞いた。
安田氏は、「親が4回離婚していて、自分も12歳で家を出てしまっていたり、自分がちゃんとした家庭で育ってないことが大きかったかもしれない。」と答えた。
一方で、論理的に物事を考える安田氏は、何か社会に良いことをする、というフワっとした考えに共感できなかったという。
「よく仕事は貢献だと言うが、それなら本当に貢献してることをやりたいと考えてしまう性格もあった。虐待や中退、鬱で仕事を辞めていたり、自分が社会問題の当事者であったこともある。さらに、”それは何のためにあるのか” というのを考えがちだったのだと思う。」と、はっきりした目的を追求していたことを述べた。
では、実際に活動していく中で今の日本をどう見ているのか。
安田氏は、「中退、不登校のことで言うと、かなり問題が可視化されてきて、NHKが不登校の特集をし、原因が実は学校の先生だったとか分かってきている。」と述べ、教員をアンケート対象にしていた文科省の調査に対し、NHKが対象を子どもにしたことで、今まで浮かび上がらなかった要因が明るみになったことを説明した。
(*参考:東洋経済ONLINE 不登校新聞 不登校は「家庭が原因」?教員と生徒で食い違い NHKによる中学生1968人調査で見えた実態 )
つづけて、「東京は、親も学校に行かなくてもいいと言ってくれるような、親が変にプレッシャーを与える家庭はかなり減っている。地方はまだまだだけど。だから時代としてはかなり良い感じなのかなと思う。」と述べた。
地方と都心間で生まれる差は、以下の3点から来ると安田氏は推測している。
(1) 地方はヒエラルキーがはっきりしている。学校が偉く、勉強のできる子は、だいたい地元の国立大学へ行き、公務員や教員、銀行員などが就職先の選択肢になるという。ヒエラルキーが明確である分、他の道が想像しにくい。
(2) 一方、東京にいると色々な方法で仕事をしている人を目にする機会が多い。良い大学を出て公務員になる人もいれば、ベンチャーを立ち上げて公務員より稼ぐ人もいる。つまり様々な生き方が身近にあるので、学校に行かないという道も想像しやすいということ。
(3) 地方で引きこもると、引きこもりが長引きやすい。近所の付き合いが濃密な分、噂になりやすく、昼に外出できなくなるからだという。
安田氏は、「東京のいいところは、自分の所属するコミュニティを自分で選べるというところ。結構不登校ぎみの子で、東京に出てきて楽になった子は多い。そういう人たちにとっては生きやすい場所だと思う。」と述べた。
また、20代〜40代で働けなくなった方々の支援も行っているが、それはそれで別の問題があるという。発達障害で働けないと、障がい者就労の枠組みになる。障がい者就労の既存の福祉のプログラムは単純作業が多く、高学歴で鬱になった人にとっては適切な受け入れ先がないのだ。これも安田氏の支援を行う理由の1つでもあるという。
文科省の調査によると、不登校の数もこの数年で増加しているという。
この事実に対し安田氏は、「学校行かなくても別にいいのではないかという時代になってきた。それはそれで、いいのではないかと思う。皆自立して、社会でそれなりに満足して生きていければそれでいいと思うので、別に学校に行かない人が増えたこと自体が社会問題になっているかというと、そうではない。その後もずっと引きこもって外出しなくなり、自殺してしまうとかであれば社会問題だと思うが、別の道が見つかっているならそれは社会問題ではないと思う。」と意見を述べた。
それでもなお、現代社会に生きづらさを感じる人たちに対し、どうアプローチすればよいのか。
安田氏は「難しい」と返答に窮し、「近代社会は生きづらさとセットだと思うから、もっとこうやれば幸せになれるわけでも、もっと頑張って働けば稼げるわけでもない。それはアメリカもヨーロッパも一緒。」と、時代の発展と生き方に関しては日本に限らないことを指摘した。
安田氏は加えて、「イスラーム圏もそう。イスラーム原理主義ってやはり生きづらさとかから来ていて、なぜ生きてるのかとか、コーランに全部答えが書いてある。そういう意味では、別に日本だけという話でもない。変化の激しい時代の中で、自分の居場所をうまく見つけられない人は、世界的に増えてるのではないか。」と、生きづらさについてグローバルな視点で触れた。
(後編へつづく。)
キズキグループ:https://kizuki.or.jp/company/
キズキ教育塾: https://kizuki.or.jp/
キズキビジネスカレッジ:https://kizuki.or.jp/kbc/
トップ画像:キズキグループ代表(創業者)安田祐輔氏 ©Japan-Indepth編集部
【訂正】2019年9月9日12:00 下記の通り訂正いたしました。
・誤:僕はどちらかというと不良よりだったので、大学受験をやり直すときに苦労した経験があり
正:大学受験をやり直すときに苦労した経験があり
・誤:自分も14歳で
正:自分も12歳で
・誤:以下の2点から来る
正:以下の3点から来る