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.政治  投稿日:2019/9/14

「情報機関の設立、急務」山田宏 防衛大臣政務官


細川珠生(政治ジャーナリスト)

「細川珠生のモーニングトーク」2019年7月6放送

Japan In-depth編集部(石田桃子)

 

【まとめ】

・日韓対立の要因は、韓国が条約・協定を守らなかったことと、日本が約束を守らせる力を持たなかったこと。

・GSOMIAの破棄は、日米韓の関係に亀裂を入れた。

・韓国との関係悪化は、従来の甘い戦略を改めるきっかけになる。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=47891でお読みください。】

 

元慰安婦に対する補償の問題や、元徴用工への賠償をめぐる問題、日本政府の対韓国輸出規制の問題で、日韓は対立を深めている先月には、韓国・文在寅政権は日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決めた。今回のゲストは、自民党参議院議員で防衛大臣政務官兼内閣府大臣政務官の山田宏氏対韓政策と安全保障戦略の今後について、政治ジャーナリストの細川珠生が話を聞いた。

 

・韓国側の問題

 

はじめに細川氏は、日韓関係の現状について「(発端は)済んでいる話を蒸し返した韓国だと思う」と述べた。一方で、日本の対韓輸出制限も対立を泥沼化させる要因になった。細川氏は、「報復合戦のような様相を感じている国民も多いだろう」と指摘した。

 

山田氏は、「日韓関係に現在の厳しい状況をもたらした一つの近い原因は、韓国の約束破りだ」と述べ、徴用工訴訟問題を挙げた。日本政府は、元徴用工への補償問題は、日韓請求権協定によって解決したとの立場だ。日韓請求権協定は、1965年の日韓国交正常化に伴って締結。日本が韓国へ経済協力金を支払うこと、韓国が日本に対する請求権を放棄することが定められた。韓国による徴用工訴訟は、「きちんと国同士の条約・協定が守れない所と何をやってもうまくいかないのではないか」との疑念を生じさせた。対韓輸出規制の強化も、その疑念に基づいているという。

 

・対韓輸出規制の強化

 

8月2日、日本政府は「ホワイト国」から韓国を除外する政令改正を閣議決定した。韓国の輸出管理制度に不備があることを根拠とした

「フッ化水素をはじめとする重要かつ危険な物質を、韓国がどう使っているのかわからないという不明部分がずっとあった。協議してくれと言いながら結局3年経ってしまった」と山田氏は話した。

 

また、経済産業省は同日、「ホワイト国」という通称を廃止した。輸出管理の実態に応じた区分を、「ホワイト国・非ホワイト国」から「グループA・B・C・D」に改めた。山田氏によれば、「ホワイト」という言葉が人種差別的意味合いを連想させることを考慮した結果だという。「ホワイト国」または「グループA」に指定された国は、輸出管理において手続きが簡素化される。

©Japan In-depth編集部

 

・日本側の問題

 

山田氏は、「戦後ずっと(日本が韓国を)甘やかしてきた結果が今日になった」と述べた。戦後日本が、中国や韓国に対して「贖罪意識」を持って、譲歩を重ねてきた経緯を説明した。「約束を守らせる力が我々になかった。韓国問題は我々が日本の態度を見直す良いチャンスになるだろう」と述べた。

 

・GSOMIA破棄

 

軍事情報包括保護協定(GSOMIA)とは、秘密軍事情報の保護に関する協定で、締結国間での秘密軍事情報の交換を可能にする。GSOMIAは、韓国の破棄通告に基づいて、今年11月に失効する

 

細川氏は、「文政権は北朝鮮寄りと言われていて、北朝鮮の後ろにはロシアや中国がいるとも言われている」と指摘。日韓での軍事情報の共有がなくなれば、北朝鮮や中国、ロシアを利することになり、世界全体のパワーバランスを揺るがすのではないかとの懸念を示した。

 

山田氏は、「GSOMIAの破棄は、中国やロシアや北朝鮮から見れば、日米韓の関係という、東アジアを形作る1つの安定的な関係にヒビが入ったというシグナル」と説明した。「秘密(軍事情報)そのものが来ないから問題である、ということではない」と述べた。

 

北朝鮮は8月、ミサイル発射実験を相次いで行った。山田氏は、北朝鮮の目的は、日米韓の亀裂をさらに広げることだという。これらのミサイルは、「韓国は全部(射程に)入るが日本までは届かないミサイルで、韓国と在韓米軍を脅している」と述べた。

 

・今後の戦略

 

山田氏は、日本にとって韓国が敵か味方か、今はわからないという。韓国との関係悪化は、「味方ではないと言うことを前提とした戦略を考えるチャンスになった」と述べた。

 

また、日本には、情報を独自に入手する高度な力が必要だと述べた。情報の軽視は、行動の遅れ、失敗につながる。山田氏は「日本にはインテリジェンスつまり情報機関がない、スパイ防止法もないこれでは、いくら外交力、軍事力と言っても、それを動かす情報をどう独自に入手するのか」と述べた。

 

アメリカばかりを情報源として頼っている今の状況では、アメリカに都合の良い情報しか得られないとも指摘した。山田氏は、「ヒューミント(humint)」つまり工作員も含め、日本に相当な独自の情報網があるとなれば、アメリカも機密情報を日本に渡して交換をする」と見ている。

 

山田氏は最後に、「軍事力を使わずに平和を維持すると言う意味で、情報機関の設立は急務だ」と述べた。

 

例えば、日本が東アジアの安全を守るにあたり注目すべきは、南西アジアをめぐる中露関係だという。山田氏によれば、アメリカのインド太平洋軍司令部も現在、中露関係に非常な関心を寄せている。南西アジアは、旧ソ連領かつイスラム教徒の多い地域であり、中国の一帯一路構想の一部でもある。南西アジアをめぐる問題を突いて中露関係を揺さぶり、中国を東アジアに進出させないようにする山田氏は、情報機関があればこの構想を実現できると述べた。

 

トップ画像:©Japan In-depth編集部

 

(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2019年7月6日放送の要約です)

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