韓国コロナ信徒間に集団感染
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の安保カレンダー 2020#9」
2020年2月24-3月1日
【まとめ】
・韓国でコロナウィルス感染者、急拡大。
・新興宗教の信徒間で集団感染が広がった可能性
・北朝鮮でも驚くべき事態が起きる可能性。
今週も日米で狂騒曲が止まらない。米国では先週末のネヴァダ州党員集会でBサンダース候補が5割近い得票率で圧勝、民主党主流派を大いに落胆させた。一方、日本では新型コロナウイルス感染者の発生が日常茶飯事となり、厚労大臣は現状を「次のフェーズ」への移行期と認識しているという。どちらも当分混乱が続きそうだ。
混乱といえば、新型コロナウイルスは中国で始まり日本で拡大したが、韓国や北朝鮮は大丈夫なのだろうか。案の定というか、韓国では19日に53人だった感染者が22日までの3日間で約8倍の433人へと急増したという。しかも、韓国内新興宗教の信徒間で集団感染が広がった可能性があるというのだから、穏やかではない。
感染者の多くは「新天地イエス教会」の信者と教団「聖地」近くの病院関係者だと報じられ、1200人以上に感染が疑われる症状があるそうだ。韓国といえば、先の米国アカデミー賞大賞受賞直後の悲劇である。韓国政府にも問題はあっただろうが、日本の嫌韓派の嫌味な反応もいただけない。新型ウイルスは日韓共通の脅威だろうに。
▲画像 ソウル市内地下鉄車内の消毒作業の様子出典: ⒸSEOUL METROPOLITAN GOVERNMENT
それよりも気になるのは北朝鮮の沈黙だ。平壌が中国からの入国者を止めたのは1月22日頃だが、日本では既に1月18日に感染が確認されたのだから、22日でも遅すぎるかもしれぬ。中国人旅行者は年間10万人以上だから、北朝鮮の医療体制、衛生状態を考えれば、北朝鮮で驚くべき事態が起きる可能性も否定できない。
今週の詳細版では、ネヴァダ州党員集会の後からサウスカロライナ州予備選挙前までの現状について筆者の見立てを書く。一言でいえば、ダークホースになるかと見られたブティジェッジが、僅差とはいえ、バイデンに続く第三位に後退する一方、バイデンは第二位を確保して「首の皮一枚」残ったということだ。
〇アジア
新型ウイルスについて中国国家主席は「状況は依然深刻で複雑であり、感染の予防と管理は最も困難で重要な局面にある」、「新型ウイルスによる肺炎の拡大が経済や社会に比較的大きな影響を及ぼすのは避けられない」としたうえで、影響は短期的で管理可能なものになると述べたそうだ。他人事のような、究極の責任回避だろう。
▲画像 マスクを買うために行列を作る武漢市民たち 1月22日 出典: Chinanews.com / China News Service
〇欧州・ロシア
欧州でも感染が広がっている。イタリアでは感染者が急増し、23日までに150人を超えたという。伊首相は北部の11の自治体を封鎖、「感染が一気に拡大したことに驚いた」と、ここでも他人事のようなコメントをしている。各国とも政治家の不用意な発言には厳しい目が注がれるのだが・・・。
〇中東
先週のイラン国会選挙の結果が明らかになった。地元メディアによれば、反米保守強硬派が定数30のテヘラン選挙区で議席を独占するなど、圧勝したそうだ。投票率は42%程度で、前回を約20%下回る過去最低。だが、米国の圧力で穏健派が失速するのはこれが初めてではなく、イランの強硬姿勢は続くだろう。
〇南北アメリカ
米大統領選は22日にネヴァダ州党員集会があったが、29日にはサウスカロライナ州で予備選がある。このままでは民主党主流派は彼らが忌み嫌うサンダース候補の躍進を止められないかもしれない。これで共和党に続き、民主党すらも「党外の異端者」に乗っ取られることになるのだろうか。
〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きは来週のキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
トップ写真:韓国 コロナウィルス対策会議 202年1月29日 出典:韓国大統領府
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この記事を書いた人
宮家邦彦立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表
1978年東大法卒、外務省入省。カイロ、バグダッド、ワシントン、北京にて大使館勤務。本省では、外務大臣秘書官、中東第二課長、中東第一課長、日米安保条約課長、中東局参事官などを歴任。
2005年退職。株式会社エー、オー、アイ代表取締役社長に就任。同時にAOI外交政策研究所(現・株式会社外交政策研究所)を設立。
2006年立命館大学客員教授。
2006-2007年安倍内閣「公邸連絡調整官」として首相夫人を補佐。
2009年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹(外交安保)
言語:英語、中国語、アラビア語。
特技:サックス、ベースギター。
趣味:バンド活動。
各種メディアで評論活動。