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.政治  投稿日:2020/3/3

「世界の感染症リスクへの対応必要」自民党コロナウイルス関連肺炎対策本部長田村憲久衆議院議員


細川珠生(政治ジャーナリスト)

Japan In-depth編集部(佐田真衣・霜野莉沙)

【まとめ】

・感染拡大のピークをなだらかになるようにしていくことが重要。

・海外からの入国全面ストップは難しい。

・世界の感染症の情報を分析し、リスクや対応について考えておく事が必要。

 

自民党政調会長代理で党のコロナウイルス関連肺炎対策本部長田村憲久衆議院議員に、政治ジャーナリストの細川珠生新型コロナウイルス対策について話を聞いた。

まず、細川氏が、政府の新型コロナウイルス対策の基本方針が出されて、その後総理がイベントの自粛要請をしたりして対策が進んでいるが、政府の対策をどう評価するか聞いた。

 

■ 政府の対応

田村氏は、「国内的な大きなイベントは控えて頂くという方針だ。この2週間ぐらいがひとつの分かれ目だ。感染を完全に止めることは出来ないが、感染の拡大をいかにおさえていくか。ピークをなだらかになるようにしていく」ことが政府の考え方だとの見方を示した。

中国の武漢は完全に街を封鎖しており、もっと厳しい対策をすべきだとの声があることを紹介した上で田村氏は、「もともと感染症法というのは、エイズやハンセン病などが対象で、歴史的に差別や偏見と密接に関係しているので気を付けなければならない。新型コロナウイルス自体を甘くみているわけではないが、エボラのように致死率が50%だと一類感染症に指定して場合によっては交通封鎖などをする。しかし、新型コロナウイルスに関しては今のところ致死率は約2、3%だ。そこまでの対応をするべきではない。」と述べ、現在の政府の対応以上の対策は必要ないとの考えを示した。

細川氏は、自民党の対策本部が2月6日に提言を出し、また新しい提言が26日に出された事を紹介した上で、その内容について聞いた。

田村氏は、「基本方針では、熱があったり風邪の症状があれば、会社に出ないといったお願いをしている。また、個人の休業補償はどうするのかという問題もある。コロナウイルスがあるかどうか調べるPCR検査が行われている。このPCR検査の保健所の対応が、不明確なところもあるので、この検査に関する基準をもう一度明確化する。民間で検査できるところがあるという話もあり、やりますという医療機関があるのならば、検査を行ってもらうことは検討できないのか、などの趣旨で(基本方針を)出している。」と述べた。

細川氏は、民間を使えばもっと検査の件数がアップするのに、上手く回ってないという批判がある事を指摘した。

これに対し田村氏は、今は一日約900件くらい行えるキャパシティはあるが、党として、他の民間機関で検査を行えるところがあれば、役所につないだりするなど、協力する考えを示した。

更に田村氏は、「検査を行うことができる中小の検査機関もあると思う。しかし、この無類の感染症、特性がよくわからないウイルスに関しては、これを扱う覚悟といったものを持って頂かないと、国の方から無理矢理やってくれとは言いにくい。なので手を上げてもらい、お願いするということに落ち着いた。」と経緯を説明した。

田村氏は、インフルエンザの簡易検査キットは、ピーク時一日10万に近い数が使用されていさるが、新型コロナウイルスの簡易検査キットを開発するのには数か月かかる。オリンピック前までにそうした検査ができるように、増産を依頼中であることを明らかにした。

▲写真 ⒸJapan In-depth編集部

 

■ 今後の出入国について

次に細川氏は、今後の入国制限についてどのように考えているか聞いた。

田村氏は、「人口比あたり感染率が高い地域はこれから増えていく。しかし人を止めると物も止まり、かなりの弊害が生まれる。日本は中国に地理的に近いこともあり、企業のサプライチェーンのみならず、生活物資も依存している。全部止めるには、かなりのリスクを覚悟しなければならない。」と述べ、海外からの入国を完全にストップするのは難しいとの考えを示した。

また田村氏は、「エボラの様に致死率が高くても、感染する人が少なければ亡くなるひとは少ない。一方、致死率が低くても感染するひとが多ければ亡くなる方は増える。どうやって(感染の)山(ピーク)を小さくするのか、全体の感染者を増やさないようにするか、という2つの努力をする必要がある。」と述べた上で、不要不急のイベントは控えてもらい感染拡大を防ぐ事が必要だと述べた。

政府は、今回のことで困った企業などへ、最大限の経済対策や支援を行なっていきたいとしているが、党の経済対策も今週には出てくると思うとした。

また、田村氏は、「感染力がインフルエンザウイルスに近い事を考えると、致死率もある程度低いと考えられる。国民の権利・行動を制約することとバランスをよく考えてリスクコミュニケーションを行う必要がある。」と、経済への影響と行動制限という難しい判断には、との考えを示した。

 

■ 今後の対策

細川氏は、これまでの日本の経済対策がインバウンド頼みだったことが、今回打撃を受けた大きな要因だったのではないか、との考えを示した。今後の日本の経済成長をどうしていくのか考えを聞いた。

田村氏は、「内需をどうやって強くしていくかを考える必要があるが、これまでの日本はインバウンドが少なすぎたので、世界並に増やそうとしており、そこは変えない。日本はサプライチェーンをかなり中国に依存してきたが、リスクヘッジのためには、中国に依存するのではなく分散化を考えたり、産業構造のあり方を考えなくてはならない。柔軟に対応できるバランスの良い日本経済へと構造を変化させる必要がある。」と述べた。

さらに、「こういうことはまた起こる。危機管理の面からも、対応の面からも、いくつかの反省点がある。中国は感染症が発症しやすい風土。今回みたいなことが起こらないように危機管理を行う必要がある。今の日本には感染症に関する常設の監視・分析・対応機関がない。常に世界の感染症の情報を把握・分析し、日本に入ってくるリスクや対応について考えておかねばならない。今回のことを反省し、同じことが起こってもより良い対応ができるようにしたい。」と述べた。

(このインタビューは2020年2月27日に行われたものです)

 

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この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト

1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。

細川珠生

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