中国、米軍が武漢にウイルス
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の安保カレンダー【速報版】 2020#12」
2020年3月16-22日
【まとめ】
・中、武漢にウイルスをもたらしたのは米陸軍の可能性を示唆。
・米、中国による「米国陰謀論」は極めて無責任と非難。
・日、知事による外出自粛など要請・指示が可能な「緊急事態宣言」。
先週は何と仏独伊西など西欧先進国が新型コロナウイルス感染の新たな震源地となった。しかも、本来の発生地である中国が犠牲となった諸国に医療支援を申し出ているという・・・。一カ月前なら想像もしなかったことが今や現実に起こりつつある。更に、その言い草が振るっている。ウイルスは「中国以外」から来たというのだから。
3月12日、中国外交部の報道官は英文でこうツイートした。
“When did patient zero begin in US? How many people are infected? What are the names of the hospitals? It might be US army who brought the epidemic to Wuhan. Be transparent! Make public your data! US owe us an explanation!”
要するに、「武漢にウイルスをもたらしたのは米陸軍かもしれない。アメリカよ、透明性はどうなったのだ?持っている情報を公表せよ。アメリカは中国に説明する義務がある」などと喧嘩を売ったのだ。それにしてもこの報道官、良い度胸ではないか。天下の米国に「ウイルスは米国製で中国は犠牲者かもしれない」と吠えているのだから。
早速米国務省は東アジア太平洋担当次官補が中国大使を呼びつけ厳重に抗議するとともに、この種の中国による「米国陰謀論」は極めて無責任であり、受け入れられないと反論した。だが、こうした中国のやり方は別に目新しくない。2002年の筆者個人の経験を今週のJapanTimesに書いたので、お時間があればご一読願いたい。
今週の詳細版では、ウイルス感染拡大に伴い先週日本で成立した新型コロナウイルス対策に関する特別措置法の是非について考える。同法で総理大臣は「緊急事態宣言」を行い、知事による外出自粛や学校休校などの要請・指示が可能となる。「あれあれ、まだ非常事態の宣言すらもできなかったのか」と不思議に思うのだが・・・。
▲写真 新型コロナウイルス感染症対策本部 出典:首相官邸Facebook
3月15日に米大統領選民主党候補指名を争うバイデン前副大統領とサンダース上院議員の二人による初のテレビ討論会が行われたが、テレビ中継を見る限りでは、どちらかというと、バイデン候補に分があったように思う。また、バイデン氏は副大統領候補に女性を起用すると約束した。さて、一体誰になるのだろうか。
〇 アジア
新型ウイルスは、中国で感染例が減少し、韓国の検査体制が米国で高く評価されたのに対し、日本ではまだ感染者が増え続けている。オリパラは難しそうだが・・・。
〇 欧州・ロシア
先週のイタリアに続き、スペインやドイツでも感染対策が大幅に強化された。このままでは欧州が中国以外では世界最大の感染地帯となるが、その理由は未だ不明だ。
〇 中東
先週バグダッド北郊の米軍駐留基地に複数のロケット弾が新たに撃ち込まれた。白昼の攻撃は異例だというが、2004年当時はそんなこと日常茶飯事だったのに・・。
〇 南北アメリカ
欧州からの米国入国禁止に伴い米国に帰国した米国人が自国の空港で長蛇の列を作っている映像がCNNで流れたのには驚いた。米国よ、お前もか、ということか。
〇 インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きは今週のキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
トップ写真:コロナウィルス 出典:Pixabay; mattthewafflecat
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この記事を書いた人
宮家邦彦立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表
1978年東大法卒、外務省入省。カイロ、バグダッド、ワシントン、北京にて大使館勤務。本省では、外務大臣秘書官、中東第二課長、中東第一課長、日米安保条約課長、中東局参事官などを歴任。
2005年退職。株式会社エー、オー、アイ代表取締役社長に就任。同時にAOI外交政策研究所(現・株式会社外交政策研究所)を設立。
2006年立命館大学客員教授。
2006-2007年安倍内閣「公邸連絡調整官」として首相夫人を補佐。
2009年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹(外交安保)
言語:英語、中国語、アラビア語。
特技:サックス、ベースギター。
趣味:バンド活動。
各種メディアで評論活動。