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.国際  投稿日:2020/3/25

トランプ支持率急上昇のなぜ


古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視」

【まとめ】

・トランプ大統領支持率49%と急上昇。

・トランプ大統領のコロナウイルス対策を支持する声高い。

・米、国家重大危機には国民が一致団結する傾向あり。

 

アメリカのトランプ大統領の支持率が急上昇した。しかも同大統領のコロナウイルス感染の防止対策方法への支持が60%という意外なほど高い水準を示し、これまで同大統領の防止策を批判してきた民主党側を当惑させている。アメリカのウイルス感染防止はまだ顕著な効果をあげていないのだが、ここへきてなぜトランプ支持が増えたのだろうか。

3月24日のアメリカのメディアはいっせいに世論調査大手機関のギャロップ社が公表した最新の大統領支持に関する調査結果を報道した。

3月22日までの1週間の全米調査ではトランプ大統領への支持率が49%と、ギャロップ社がこれまで3年余り実施してきた同大統領に関する世論調査では最高レベルの数字を示した。3月前半の同じ調査では44%だったから、わずか2週間で5ポイントの急上昇となった。

同調査結果によると、トランプ大統領への支持率は共和党支持層では92%(前回は91%)、無党派層で43%(前回は35%)、民主党支持層では13%(同7%)となった。これらの数字は中間層と民主党支持層でのトランプ支持が顕著に増えたことを示した。

アメリカのメディアがさらに大きなニュースとして報じたのは同じギャロップ社の調査でトランプ大統領のコロナウイルス対策への支持率が60%という高水準を記録した点だった。

その支持層別の内訳では共和党支持層が94%、無党派層が60%、民主党支持層が27%となり、とくに共和党を支持していないアメリカ国民の間でもトランプ政権のウイルス対策に賛同する人たちが多いという結果が出た。

トランプ大統領の一般の支持が高くなったのも、このウイルス対策への支持率の高さが主要な要因になったとみるのが妥当だろう。

しかしここでわく疑問はアメリカのウイルス感染はまだ広がる一方で、トランプ政権は具体的な対策こそ連日のように打ちだしているが、その成果がまだみえていない点である。成果がないのに、なぜその対策ぶりへの支持が高いのか、である。

この疑問への答えは少なくとも二つ、考えらえる。

第一はトランプ政権のコロナウイルス対策の国民へのアピールが前向きな反応を招いたという要因である。

トランプ大統領が国家非常事態宣言や集団感染地域での隔離政策、民間企業の大幅動員、緊急経済支援策の推進など具体的な措置をとっていることは事実である。だが、その成果は明確には出ていない。

ただしその政策を国民一般に知らせる広報活動が前例のないほど大規模で頻繁となっている。ホワイトハウスからの連日の国民への報告、要請がテレビで実況中継され、一時間以上も続く。

しかもトランプ大統領は自身が記者団からの質問に熱心に答えるだけでなく、大統領直轄のコロナウイルス対策本部の本部長マイク・ペンス副大統領や同本部顧問のアンソニー・ファウチ医師(国立アレルギー感染症研究所所長)、同本部調整官のデボラ・バークス医師らを横に並べて、自由に答弁や発言をさせている。

これらの3人の補佐役がみな複雑な課題に明快かつ懇切に実にみごとな解説を述べている。トランプ政権にしては珍しいこの円滑なチームワークが一般国民の好評を得ているといえそうだ。

▲写真 コロナウイルスに関するプレスブリーフィングの様子 出典:Flickr; The White House

トランプ大統領支持がなぜ、この時点で高まったのかについての第二の理由は、アメリカでの国家の重大な危機には国民が一致団結する歴史的な傾向である。

私自身の体験でも2001年9月のイスラム過激派、アルカーイダによるアメリカに対する同時多発のテロ攻撃の際には、明らかにアメリカ国民は超党派で断固たる一致団結をみせた。時の大統領の下での団結だった。

このテロの際の大統領は二代目のジョージ・ブッシュ氏だった。ブッシュ大統領に対しては就任当初から批判や抗議が多かった。ブッシュ氏がその前年の2000年11月の大統領選挙で民主党候補のアル・ゴア元副大統領と稀なほどの大接戦となって、得票の計算だけでは結論が出ず、最高裁判所の判断を仰いでやっと勝者と判定されたからだった。民主党側はブッシュ大統領の正当性をなかなか認めなかったわけだ。

ところがブッシュ大統領就任から7ヶ月余りで起きたテロ攻撃でアメリカ国民数千人が一気に殺されると、その反撃には国民も野党も大統領の下で固い結束をみせたのだった。一部の世論調査ではブッシュ大統領への支持率は数週間で30ポイントも高くなった

ギャロップ社の世論分析専門家のジェフリー・ジョーンズ氏も「アメリカでは国家の危機となると、現職大統領の支持率が高くなることは歴史的なパターンであり、最もわかりやすい例は第二次世界大戦発生時でのフランクリン・ルーズベルト大統領への驚異的な国民の支持の高まりだった」と述べていた。

とはいえ、肝心のアメリカ国内でのコロナウイルス感染の拡大はまだ止まる兆しをみせていない。トランプ大統領の対策の真価が問われるのはこれからである。

だが今回のギャロップ社の世論調査結果はトランプ大統領の政敵の民主党大統領候補たちや民主党支持の大手メディアだけでなく、トランプ陣営自体をも驚かせたようだった。

トップ写真:コロナウイルスに関するブリーフィングの様子 出典:Donald Trump Twitter


この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

古森義久

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