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.国際  投稿日:2020/3/31

新型ウイルス、迫る感染爆発


宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)

「宮家邦彦の安保カレンダー【速報版】 2020#14」

2020年3月30日-4月5日

【まとめ】

・日本でオーバーシュート起きなかったら、奇跡的に幸運。

・4月9日頃、1週間約10倍の増加速度で感染者が増加の可能性。

・あらゆる直接接触停止し、経済社会活動を低下させる必要がある。

 

日本でのCOVID-19オーバーシュート(感染例急増)が目前に迫っている気がしてならない。先週までなら、「まさかね!」と思いつつも、可能性の一つとして自分なりに考えてきた。しかし、今週になって考えが変わった。「今後日本でオーバーシュートが起きなかったら、むしろ日本人は奇跡的に幸運だろう」と確信し始めたからだ。

きっかけは一通のメール。この「COVID-19に関して(お願い)」と題された代物、送り主はある国立大学に籍を置く高名な感染症専門家だ。彼が紹介してくれた内容は衝撃的で、「ウイルスと共存する長期戦略は存在しない・・・爆発的な感染拡大を止めるには我々の生存をかけた短期決戦」が必要という。正直なところ、最初は新手のスパムメールだと疑った。

ご丁寧にも添付ファイルはWord版・PDF版の両方があり、下手に開くと「感染」する恐れもあった。だが、スパムとは違いURLも書かれている。恐る恐るURLを開いたら、どうやら本物らしい。そのメールで紹介されていたのは横浜市立大学生命ナノシステム科学研究科の佐藤彰洋特任教授。しかも、内容は極めて黙示録的だ。ちょっと長くなるが、ここに重要部分を引用させて頂く。

・COVID-19は・・・理論的には、「ウイルスを消滅させ終息させる」か、「全員がウイルスにかかり病気になる」かのどちらかしか、解はないのです。・・・爆発的な感染拡大「オーバーシュート」・・・が発生しますと、日本国の全人口に向かって1週間で約10倍の増加速度で感染者が増加していきます。・・・これが起こり始めるのは、4月9日頃・・・我々の意思決定でそれを制御できるのはその14日前の3月26日頃でした。

・何もしないとやはり、4月9日からこの医療容量の超過が始まりまして、感染者数を1万人を超えたところから、10万人までその1週間後、100万人までその2週間後、1000万人までその3週間後と増加していきます。・・・すなわち、これは・・・ウイルスを消滅させるか我々がウイルスに消滅させられるかの二者択一の問題であり、・・・この2週間で・・・生命維持に直接かかわらないあらゆるヒトとの直接接触を伴う社会活動を完全に停止させるレベルまで経済社会活動を低下させる必要があります。・・・

▲写真 コロナウイルス医療現場 出典:Health.mil

読者の皆さんはどう思われるだろうか。筆者はこれが政治的影響を考える必要のない「感染症専門家」が現時点で考え得る最も現実的な予測と提案だと受け止めた。

医療の専門家でもない筆者が「オオカミ少年」をやるのは本意ではない。しかし、多少なりとも危機管理をかじった者として、この種の「悪い話」は常に念頭に置く必要がある。佐藤教授の推測が間違いであることを祈りつつも、最悪の事態には備えるべきだ。

今週は世界各地の外交的動きが鈍い。当然だろう、各国ともCOVID-19対応で忙殺されているからだ。ウイルス関連以外のトピックスを拾ってみた。

 

〇 アジア

日韓通貨スワップ協定で再び両国がギクシャクしているらしい。韓国側が再締結に前向きなのに対し、日本の財務大臣は「金を貸す方が頭を下げるという話は聞いたことない」と言い放ったそうだ。日韓関係が理屈では解決しない典型例である。

 

〇 欧州・ロシア

中国の医療支援に感激したセルビアの大統領が五星紅旗にキスし習近平氏を「兄弟であり友人」と呼んだそうだ。欧州で孤立気味のセルビアとはいえ、実に節操がない。

 

〇 中東

原油相場の下落が止まらない。3月30日、ニューヨーク原油は一時19.92ドルとなった。パンデミックによる需要減退と露サウジ間の価格競争激化で当分安値は続くのか。

 

〇 南北アメリカ

Wポストの世論調査でトランプ(47%)とバイデン(49%)の支持率が拮抗しているという。前回はバイデンが7%リード、トランプ挽回というが、日本語では目糞鼻糞という。

 

〇 インド亜大陸

インド在住の友人が「ニューデリーでもCOVID-19 のロックダウンは時間の問題」だと言ってきた。インドでオーバーシュートが起きたら文字通り「地獄」になるが、それは他の途上国でのパンデミックの序曲に過ぎないのかもしれない。

今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きは今週のキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

トップ写真:第24回新型コロナウイルス感染症対策本部 出典:首相官邸Twitter


この記事を書いた人
宮家邦彦立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表

1978年東大法卒、外務省入省。カイロ、バグダッド、ワシントン、北京にて大使館勤務。本省では、外務大臣秘書官、中東第二課長、中東第一課長、日米安保条約課長、中東局参事官などを歴任。

2005年退職。株式会社エー、オー、アイ代表取締役社長に就任。同時にAOI外交政策研究所(現・株式会社外交政策研究所)を設立。

2006年立命館大学客員教授。

2006-2007年安倍内閣「公邸連絡調整官」として首相夫人を補佐。

2009年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹(外交安保)

言語:英語、中国語、アラビア語。

特技:サックス、ベースギター。

趣味:バンド活動。

各種メディアで評論活動。

宮家邦彦

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