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.政治  投稿日:2020/5/21

防衛省、陸自の新小銃と新拳銃公開


清谷信一(軍事ジャーナリスト)

【まとめ】

新小銃「20式 5.56mm小銃」と新拳銃「9mm拳銃SFP9」が公開。

・新小銃は排水性や防錆機能向上。新拳銃は装弾数増加、グリップ選択可能に。

令和2年度予算、新小銃は調達費9億円と初度費1億円、新拳銃は調達費2,000万円計上。

 

5月18日、防衛省陸上自衛隊新小銃「20式 5.56mm小銃」新拳銃の「9mm拳銃SFP9」の報道公開が行なわれた。

現用の89式5.56mm小銃を後継する20式5.56mm小銃は、89式5.56mm小銃のメーカーでもある豊和工業が自社資金で開発した自動小銃・89式5.56mm小銃に比べてコンパクトで、排水性や防錆機能が向上している。

重量は3.5kg、銃身長は330mm、伸縮式でチークパットも可変式のポリマー製銃床の採用により、全長は783~854mmと、89式5.56mm自動小銃(固定銃床タイプで916mm)に比べて短くなっている。弾倉はポリマー樹脂製で装弾数は30発。89式5.56mm小銃の弾倉も使用できる。

作動方式はガス圧式で、89式で採用された3点バースト(3点制限点射)は実用上の必要性が低いことに加えて、構造が複雑でコストが高くなり、故障頻度の増加するリスクがあることから採用されていない。

▲写真 20式5.56mm小銃の安全装置。3点バーストモードは廃止されている。 ©清谷信一

フォアグリップは2脚を兼ねており、先端には銃剣を装着できる。銃剣は89式多用途銃剣を使用するが、バヨネットシースは新たに設計されている。レールマウントには光学照準装置などの装着が可能で、公開された20式5.56mm小銃には、ディオン光学技研の「MARCH」ブランドの8倍光学照準装置が装着されていた。

▲写真 20式5.56mm小銃用に導入されるベレッタ「GLX 160 A1」 ©清谷信一

報道公開では新たに導入する、ベレッタ「GLX 160 A1」グレネードランチャーも展示された。GLX 160 A1はNATO標準の40 ×46mm弾を使用するグレネードランチャーで、グリップと銃床を装着すれば単体でも使用できるが、陸上自衛隊は20式5.56mm小銃に装着して使用する予定となっいる。光学照準装置とグレネードランチャーの調達計画、グレネードランチャーが使用する弾薬の種類などは、現時点では明らかにされていない。

20式5.56mm小銃の導入にあたっては、令和2年度予算に3,283挺の調達費9億円と初度費1億円が計上されており、水陸機動団即応機動連隊教育隊などに順次配備される。

▲写真 報道公開された「9mm拳銃SFP9」 ©清谷信一

現用の9mm拳銃を後継する9mm拳銃SFP9は、ヘッケラー・アンド・コッホのSFP9を輸入の形で導入する。SFP9はNATO標準の9×19mm弾を使用する、ストライカー式の自動拳銃で、装弾数は9mm拳銃の9発から15発に増加している。

全長は186mm、重量は710gで、グリップ後方はモジュラー式になっており、射手の掌の大きさに合わせて3種類の中のグリップが選択できる。令和2年度予算には323挺の調達費2,000万円が計上されている。

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タグ: グレネードランチャー, ディオン光学技研, ヘッケラー・アンド・コッホ, ベレッタ, 光学照準装置, 拳銃, 自動小銃, 豊和工業, 防衛省, 陸上自衛隊

 

(この記事は、東京防衛航空宇宙時評からの転載です)

トップ写真:報道公開された「20式5.56mm小銃」 ©清谷信一


この記事を書いた人
清谷信一防衛ジャーナリスト

防衛ジャーナリスト、作家。1962年生。東海大学工学部卒。軍事関係の専門誌を中心に、総合誌や経済誌、新聞、テレビなどにも寄稿、出演、コメントを行う。08年まで英防衛専門誌ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー(Jane’s Defence Weekly) 日本特派員。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関「Kanwa Information Center 」上級顧問。執筆記事はコチラ


・日本ペンクラブ会員

・東京防衛航空宇宙時評 発行人(Tokyo Defence & Aerospace Review)http://www.tokyo-dar.com/

・European Securty Defence 日本特派員


<著作>

●国防の死角(PHP)

●専守防衛 日本を支配する幻想(祥伝社新書)

●防衛破綻「ガラパゴス化」する自衛隊装備(中公新書ラクレ)

●ル・オタク フランスおたく物語(講談社文庫)

●自衛隊、そして日本の非常識(河出書房新社)

●弱者のための喧嘩術(幻冬舎、アウトロー文庫)

●こんな自衛隊に誰がした!―戦えない「軍隊」を徹底解剖(廣済堂)

●不思議の国の自衛隊―誰がための自衛隊なのか!?(KKベストセラーズ)

●Le OTAKU―フランスおたく(KKベストセラーズ)

など、多数。


<共著>

●軍事を知らずして平和を語るな・石破 茂(KKベストセラーズ)

●すぐわかる国防学 ・林 信吾(角川書店)

●アメリカの落日―「戦争と正義」の正体・日下 公人(廣済堂)

●ポスト団塊世代の日本再建計画・林 信吾(中央公論)

●世界の戦闘機・攻撃機カタログ・日本兵器研究会(三修社)

●現代戦車のテクノロジー ・日本兵器研究会 (三修社)

●間違いだらけの自衛隊兵器カタログ・日本兵器研究会(三修社)

●達人のロンドン案内 ・林 信吾、宮原 克美、友成 純一(徳間書店)

●真・大東亜戦争(全17巻)・林信吾(KKベストセラーズ)

●熱砂の旭日旗―パレスチナ挺身作戦(全2巻)・林信吾(経済界)

その他多数。


<監訳>

●ボーイングvsエアバス―旅客機メーカーの栄光と挫折・マシュー・リーン(三修社)

●SASセキュリティ・ハンドブック・アンドルー ケイン、ネイル ハンソン(原書房)

●太平洋大戦争―開戦16年前に書かれた驚異の架空戦記・H.C. バイウォーター(コスミックインターナショナル)


-  ゲーム・シナリオ -

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清谷信一

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