休館だった国会図書館が復活
文谷数重(軍事専門誌ライター)
【まとめ】
・国立国会図書館(東京本館が再開)。
・研究者や著述業の危機はひとまず去る。
・サーモ検温は37.5度、喫煙室は廃止。
研究者や著述業にとって永田町の国会図書館は最重要の施設である。これは日本最大の図書館であり本や雑誌が揃っているだけではない。進駐軍収集資料や政治家の日記といった憲政資料や全国地方紙のバックナンバーも一番揃っている図書館だからだ。*1
だがコロナ問題から3月5日以降に休館状態にあった。これは利用者にとって一大不便であった。先行研究や資料の調査ができなくなったためだ。分野によっては何もできない。そのような状態に陥ったのである。
その永田町の東京本館が本日11日に再開館した。1日200人までの制限付き、かつ事前申込の上での抽選制度である。
その入館・館内はどうなっているか。たまたま当籤した立場であるが、筆者が利用の合間に見た状況を簡単に述べる。
▲写真国会図書館東京本館が11日に再開館した。人数制限の張り紙。 出典:筆者撮影
◾️ 入館は2人づつ
まずは事前の申し込みである。これは国会図書館のHPにあるフォームに名前、メールアドレス、利用者ID、利用希望日を記入して送信する形である。
当籤すると「抽選の結果(当選)【国立国会図書館】」といったメールが送られてくる。
あとは特に手続きはない。指定日に国会図書館に行くだけである。時間指定もない。
入館は基本的に本館から。管制は自動ドアの前から始まる。風除室に一度に2人づつ入り 消毒しサーモグラフィー検温、予約確認を受ける。おそらくマスク着用のチェックもここだ。
ちなみに検温の基準は37.5度である。高湿度で筆者は汗だくだったが難なく通過できた。
なお、11日の開館の9時20分の待機人数は筆者含めて35人である。
これは制限200人のうちの2割である。研究者や執筆業はそれだけ困っていた。当籤1日を十二分に使おうとしているのだろう。
開館時は駐車場には空きがあった。乗用車が4台停められていた。いつもは「本当に利用者か」疑わしく、今回も停められるか怪しんでいた。ただ少なくとも朝一番なら車でも大丈夫そうである。
▲写真 駐車場。別に駐輪場もある。自転車は満車ということはない。館内撮影禁止のため敷地外側から。 出典:筆者撮影
◾️ 閲覧机は2人掛
館内の感染症対策は概ね離隔でのみなされていた。
本館の申込/電子資料利用端末は1列4台だが1台ごとに電源を落としていた。それで席間120センチは確保している。
閲覧の机、椅子の配置も同様である。一席飛ばしである。3尺6尺の閲覧卓を2人が角と角で使う形だ。
資料出入、複写の窓口は全てビニールで飛沫防止がなされていた。これは売店も同じである。
また窓口では接触防止の工夫がなされていた。従来はICカードは職員手渡しであった。それが利用者が自分でICカードをリーダーに置く方法に変更されている。
◾️ 喫煙室廃止
感染症対策以外での変化点はあまりない。入館管理と離隔を除けばほぼ従来通りである。
たとえば検索等システムはそのままである。
また進むと見ていたロッカー電子化もそのままだ。利用者ICカードを鍵としたタイプは増えてはいない。
気がかりであった音楽映像資料室もそのままである。映画視聴に際して皮膚に触るヘッドフォンを使う方式のため「利用制限や持ち込みが必要となるかも」と心配していたが従来どおりとのことである。*2
強いて最大の変化を示すなら喫煙室の廃止である。「4月1日以降は職員含めて敷地を含めて完全禁煙とされた」とのことだ。
細かいところをいえば机や椅子もそのままである。
ただし本館食堂の机と椅子だけは年度末で更新された。
◾️ 館内サービスはいままでどおり
利用方法も従来と変わるものではない。
閉架式なのでまずは資料請求からだ。本は三冊まで、雑誌は一〇冊まで、地図は五枚までである。届いたら閲覧室ほかで閲覧する。そこでメモをとり必要があれば資料を預けて有料複写を申請する形である。
食堂、喫茶、弁当喫食、売店、理容、ATMも従来通りである。
なお売店では筆者がお気に入りの丸彦製菓の「おかきせんべい うに味」が55円から40円に値下げされていた。
中庭利用も以前のとおり。従来と同じだ。本館と新館の連絡通路の西側と通路屋上は見る限りでは特に改修等はなかった。なお電話をするなら電話可能スペースより外に出たほうが気兼ねなく話せる。
▲写真 中庭。あまり知られていないが連絡通路の上、本館2階の喫茶店と新館3階の議会官庁室は中庭でつながっており日中の好天時には利用できる。 出典:グーグルアースをキャプチャー。
嬉しくはないが空調はあまり効かせないままだ。背広は向かない温度である。筆者はこの時期は半袖・半ズボンに裸足にゴム草履の「裸の大将」スタイルで利用している。それでもやや蒸す感じはする。
なお、館内はガラガラである。
利用者は相当にまばらだ。制限人数1日200人であり、もともと人がいない午前中のこともあるが、平日の台風や大雪の日よりも少ない。
また国会図書館ではいつ行っても5人10人は見知った顔がある。それが今回はいなかった。*3 ただ、入場制限の200人はまずは暫定的な数字である。状況をみながらじきに緩和されるだろう。
*1 これは地方紙だけではない。例えば産経新聞は縮刷版はない。批評等のため古い記事を探すには新聞室で国会図書館が撮影したマイクロフィルムを閲覧する必要がある。実際に筆者は昭和42年映画『血と砂』について産経の映画評を批評したが原典となる紙面確認は国会図書館でしかできなかった。
*2 ちなみに音楽・映像資料室は娯楽のための視聴はできない。利用理由の提示、例えば「福田さんの『フード理論』について小論を書くため、『七人の侍』のフード解釈を確認したい」といった形の申請が必要である。これは憲政資料室も同じである。
*3 筆者も「裸の大将」スタイルで週平日2-3回行っている。他人からすれば「いつも見る芦屋雁之助風」としてでも類識別されているのだろう。
トップ写真:国立国会図書館 出典:著者撮影
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この記事を書いた人
文谷数重軍事専門誌ライター
1973年埼玉県生まれ 1997年3月早大卒、海自一般幹部候補生として入隊。施設幹部として総監部、施設庁、統幕、C4SC等で周辺対策、NBC防護等に従事。2012年3月早大大学院修了(修士)、同4月退職。 現役当時から同人活動として海事系の評論を行う隅田金属を主催。退職後、軍事専門誌でライターとして活動。特に記事は新中国で評価され、TV等でも取り上げられているが、筆者に直接発注がないのが残念。