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.国際  投稿日:2020/8/12

香港、民主派逮捕相次ぐ 国会議員ら抗議の緊急会見


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

【まとめ】

対中政策に関する国会議員連盟JPAC)が緊急記者会見

・在日香港人民主活動グループ、日本へ香港人保護・人権保護を要請。

・JPACは、官邸で政府に対策を取るよう要請した。

 

香港の警察当局が8月10日、中国政府に批判的なメディア関係者や民主活動家ら10人を、違反の疑いで相次いで逮捕したニュースは世界中を駆け巡り、日本にも衝撃が走った。日本語を流ちょうに操り、Japan In-depthチャンネルにも出演したことのある、大学生の民主活動家で香港民主化の女神のニックネームを持つ周庭(アグネス・チョウ)氏が逮捕された一人だったからだ。

▲写真 周庭氏 2019年11月香港区議会選挙後のインタビュー ⓒJapan In-depth編集部

逮捕者には、中国に批判的な新聞アップルデイリー創立者で香港のメディア王と呼ばれる黎智英(ジミー・ライ)氏も含まれていた。周氏と黎氏は11日深夜に保釈された。

8月12日、「対中政策に関する国会議員連盟(JPAC)」が衆議院議員会館で記者会見を開き、緊急声明を発表した。JPACは、国安法の施行を受けて結成された、超党派の国会議員連盟だ。

▲写真 左から串田誠一衆議院議員、桜井周衆議院議員、山尾志桜里衆議院議員、中谷元衆議院議員 ⓒJapan In-depth編集部

会見には、議員連盟から共同代表である、自民党の中谷元元防衛相国民民主党の山尾志桜里衆議院議員の他、自民党の長島昭久JPAC事務局長ら、国会議員数名と、有識者数名、在日香港人民主活動グループ「香港の夜明け」から数名が参加した。

▲写真 中谷元 元防衛相 ⓒJapan In-depth編集部

「香港の夜明け」のメンバーは、香港情勢について報告した。

まず、8月10日一斉逮捕時の警察の行動について、「日本に報道されていない事実」として次の3点を説明した。

・アップルデイリー本社で不必要に報道資料が荒らされた

・アップルデイリー本社の捜査に立ち会う記者が選別された(中国に批判的なメディアは排除された)

・黎智英氏、周庭氏らは逮捕前に連日監視されていた可能性がある

中国と香港政府が国安法を用いて、香港人を身体的にも心理的にも脅かしている可能性を訴えた。

▲写真 有識者、在日香港人民主活動グループ「香港の夜明け」メンバ ⓒJapan In-depth編集部

また、立法会選挙を巡る情勢を次のように説明した。

・香港当局が、国安法を理由に立候補者の資格をはく奪

・香港当局が立法会選挙を延期、中国全人代が選挙延期と現職議員の任期延長を決定

国安法による人権と自由の侵害、一国二制度の破壊が起こっていると主張した。

さらに、日本に対して、ライフボート政策、国家安全法に関する日中刑事共助条約の一時中止、人権法の遂行を強く求めた。

▲写真 在日香港人民主活動グループ「香港の夜明け」メンバー ⓒJapan In-depth編集部

有識者各位が見解を述べたあと、JPAC発起人の一人・山尾志桜里氏が、「香港国家安全維持法に基づくジャーナリスト・民主運動家の逮捕に関する声明」を読み上げた。

声明の概要は次の通り。

・国安法施行と活動家の摘発、立法会選挙をめぐる対応に対する非難

・日本政府に対する、国安法に関わる捜査への協力拒否・ライフボート政策実施の要請

JPACは、12日16時に官邸に声明を提出し直接要請を行った。

JPAC設立総会には、政府の担当者らが出席していた。Japan In-depthが取り組みの進捗を尋ねると、外務省・法務省からの参加者は、「重大な懸念を持って注視する」「刑事共助条約について検討している」と述べるにとどめた。

10日の一斉逮捕について、欧米諸国が「人権侵害」等と厳しい批判を行う中、日本政府は「重大な懸念」を表明するにとどまっている。

 

トップ写真:ⓒJapan In-depth編集部


この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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