[藤田正美]<韓国メデイアも書く「韓国は三流国家?」>韓国旅客船沈没事故の朴大統領「殺人」発言
Japan In-Depth副編集長(国際・外交担当)
藤田正美(ジャーナリスト)
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◆<韓国旅客船沈没事故>それにしても気になる朴大統領の「殺人」発言
韓国南西部珍島沖で転覆し、沈没した旅客船セウォン号。日本でも連日報道されている。政府の対応の遅さやまずさに批判が出る一方で、多数の旅客に「その場所にとどまるよう」指示する一方で、船長をはじめ多くの乗組員が先に脱出したことに非難が集中している。そんな中、朴槿恵(パク・クネ)大統領は、「殺人のようだ」と語った。
一国の指導者が特定の人物の行為を「殺人」という強い言葉を使って非難するのは異例のことだ。そもそも、まだ事故の原因は判明していない。もちろん事故を起こしてからの船長の行動はつじつまの合わないものだ。
メディアなどから批判されるのは仕方がないとしても、最高権力者が簡単に結論を出していいという話ではない。一歩間違えば、リンチにもなりかねないからである。
この事故では、韓国政府の対応のまずさにも多くの批判が集まっている。救助された乗客の数を間違えたことや初動の遅さなどに、韓国メデイアも「韓国は三流国家だったのか」と書いた。
オバマ大統領の訪韓を控えて、朴政権の支持率が低下するという事態に大統領が内心焦ったのは想像に難くない。非難の矛先をかわそうとしたことが、あの発言に結びついたのかもしれない。
大衆が受け入れやすい言葉で、他人を攻撃するのはポピュリスト(大衆迎合)の常套手段である。2008年のリーマンショックで槍玉に挙げられたのは、高給を取る投資銀行の幹部だった。役人が攻撃の対象になるのはどこの国でも同じだ。もちろん批判がいけないと言っているのではない。問題は、人に非難を集中することで、社会の仕組みという根本的な問題から目をそらしてしまうことである。
朴大統領の発言を聞いたとき、すぐに頭に浮かんだのは「イラ菅」こと菅首相だった。
福島第一原発の事故で、菅首相は専門家の意見に耳を傾けるどころか、自分の知人を官邸に招いて、意見を聴取した。そしてアメリカからの支援の申し出を受け入れず、結果的に情報の共有は大幅に遅れた。さらに官邸での対策会議の議事録をいっさい残さず、原発の事故対応という初めての経験を教訓として残すことに失敗した。
目の前に展開する恐怖の事態にどう対応するのか、それが最大の問題であることに疑いはない。しかし国家の指導者には、長期的かつ大局的な視野を冷静に保つことが要求される。
それがなければ、現場は安心して動けない。指導者がすべてを決めるわけではない。指導者はすべての責任を取ることが重要なのだと思う。その意味では、原発事故対応のまずさを認めなかった菅政権は、歴史の汚点を残した。
朴大統領がこの後、どのような対応をするのか。それによっては指導力がさらに低下するのは避けられないかもしれない。
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