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.国際  投稿日:2020/12/2

米上院議員2議席改選決選投票が鍵


宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2020#49

2020年11月30日-12月6日

【まとめ】

・米、「政権移行期間」始まる。上院議員2議席改選決選投票が鍵。

・フロノイ女史「アフリカ系ではない」ことの方が問題。

・バイデン次期政権、積極的な女性の登用。日米の差は広がる。

今年もあっという間に12月になった。コロナ騒ぎが中国の武漢で静かに始まったのは一年前の今頃だが、もう何年も経ったような目まぐるしい一年だった。そんな気がする毎日である。ワクチンが出来そうなことも奇跡的というか、画期的なことだが、政治、経済、文化など人間の活動がかくも大きな影響を受けるとは正直思わなかった。

一つ間違えば2002年のSARSだって2020年のCOVID-19のようになっていたかも、と思うとゾッとする。仮にコロナ禍が去っても、いつ何が起きるか本当に分からなくなった、ということか。今年の3月第1週から海外旅行をしていない。いつになるか分からないが、次回の海外出張は初めての時と同じくらい緊張するだろうなぁ。

さて、米国では漸く「政権移行期間」が始まった。トランプ氏は性格的に「絶対に負けを認めない」のだろう。でも、こんなことを繰り返していたら、流石のトランプ・ファンも付いていけなくなるのではないか。それよりも筆者は、もっとスマートで賢い「トランプ」型政治家の方が恐ろしい。その意味ではトランプ氏の体たらくの方がマシである。

次期政権の閣僚が決まり始めたが、先週書いた「恐らく国防長官はフロノイ女史となるだろうから、一応安心」というのは訂正が必要かもしれない。彼女の能力よりも、彼女が「アフリカ系ではない」ことの方が問題だとすれば、フロノイ女史にとってはお気の毒としか言いようがない。

▲写真 ミシェル・フロノイ氏(真ん中) 出典:Flickr; U.S. Institute of Peace

何故かって?「女性であること」はバイデン次期政権では今や決して物珍しいことではないからだ。何しろ、広報関係の幹部は7人全員が女性である。それに比べると、我が国の状況は「残念」としか言いようがない。米各州レベルでは知事こそ男性がまだ多いが、州務長官となると女性が非常に多い。日米の差は広がるばかりである。

今週のJapanTimesではイランの核物理学者の暗殺事件を取り上げた。本来筆者は「陰謀論」が大嫌いだが、流石にこの事件だけはコメントせずにいられない。それにしても、あのイラン国内で、特に金曜日のテヘラン郊外で、62人ものプロを動員し、確実に仕事をするオペレーションには脱帽する。コラムではその目的を推測している。

〇南北アメリカ

ジョージア州では現職引退のため1月5日に上院議員2議席改選の決選投票が行われるが、どうもトランプ氏とその熱狂的な支持者の動きが共和党候補に逆風となる可能性があるらしい。この結果はトランプ氏の将来の影響力とも絡み、政治的に極めて重要となる可能性が高い。1月5日は要注意だ。

〇アジア

韓国で法相が検事総長の職務停止を命じた問題で、行政裁判所は命令の効力停止を求めた検事総長側の訴えを認めたという。これで検事総長は暫定的に職務に復帰するたが、文在寅政権と検察との対立の方は異常事態のままだ。こんな国の司法に振り回されるのも「如何なものか」と思うのだが・・・。

〇欧州・ロシア

欧州で興味深い同盟議論が起きている。独国防相が対米依存を重視し、「欧州が戦略的に自立できるという幻想は終わらせるべきだ」と主張、これに対し仏大統領は「欧州が国防面で本気度と自立を示した場合にのみ、米国は同盟相手として欧州を尊重する」と述べたそうだ。日本でも同様の議論が必要と思うのだが・・・。

〇中東

旧聞だが、米国の次期国務長官は2017年に、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)、エジプトを支持するトランプ大統領の外交姿勢を批判しているらしい。中東に造詣の深いブリンケンがアジアにどの程度コミットするのかは心配だが、最も気になるのは新政権とイスラエルとの関係である。これまでとは違う両国関係になりそうだ。

〇インド

珍しく特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きは今週のキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

写真:バイデン氏 出典:Flickr; Joe Biden




この記事を書いた人
宮家邦彦立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表

1978年東大法卒、外務省入省。カイロ、バグダッド、ワシントン、北京にて大使館勤務。本省では、外務大臣秘書官、中東第二課長、中東第一課長、日米安保条約課長、中東局参事官などを歴任。

2005年退職。株式会社エー、オー、アイ代表取締役社長に就任。同時にAOI外交政策研究所(現・株式会社外交政策研究所)を設立。

2006年立命館大学客員教授。

2006-2007年安倍内閣「公邸連絡調整官」として首相夫人を補佐。

2009年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹(外交安保)

言語:英語、中国語、アラビア語。

特技:サックス、ベースギター。

趣味:バンド活動。

各種メディアで評論活動。

宮家邦彦

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