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.国際  投稿日:2020/12/15

トランプ悪あがきもDCは正常へ


宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2020#51

2020年12月14-20日

【まとめ】

米最高裁はテキサス州の異議申し立てを門前払い。

それでもトランプ氏は恐らく一生、敗北を認めないだろう。

・一方、ワシントンは徐々に正常に戻りつつある。

今年の12月14日は米国の大統領選挙にとって重要な日だ。通常なら12月8日までに各州が選挙結果を認定して大統領選挙人が選ばれ、14日にこれら選挙人が正式に大統領を選出するための投票を行う、はずだからだ。今年ばかりは、どうなるかわからない、と考えているアメリカ人も少なくないのではないか。

更に、通常ならこの投票結果を受け、来年1月6日に連邦議会で行われる投票で正式に次期大統領が選ばれることになっている。ところがというか、案の定というべきか、このプロセスがスムーズにいかない可能性もあるようだ。以上については、報道などで皆さま既によくご存知だと思うので、本稿で詳細には立ち入らない。

本来なら、トランプ陣営の細かな法廷戦術を、というか、前代未聞の「悪足搔き」を詳しく説明する意味などないはずだ。しかし、なぜか日本にも「激戦4州の投票結果に対するテキサス州の異議申し立てを保守派優勢の最高裁が認め、バイデンは大統領になれない」 と信じている人々が、一部ながら、いるらしい。実に不思議な話である。

通常なら一笑に付すところだが、当然のことを当然と言えないのが今年の異常事態の異常さだろう。しかし、幸いというか、当然ながら、米最高裁はテキサス州の異議申し立てを門前払いした。トランプ氏が3人の判事を送り込み、保守派が6人となった最高裁が、政治判断ではなく、法律判断に徹したのは、それが三権分立の基本だからだ。

それでもトランプ氏は恐らく一生、敗北を認めないだろう。来年1月6日にも何か波乱があるかもしれない。一方、ワシントンは徐々に正常に戻りつつある。今週のJapanTimesコラムは日本のトランプ主義者を、日経ビジネスオンラインのコラムでは「バイデン政権=第三期オバマ政権」説を取り上げるつもりだ。ご一読願いたい。

〇アジア

韓国では13日の新型コロナウイルス新規感染者数が1030人に達したという。同国はコロナ封じ込めの優等生だったはずだが、ここにきて感染第3波が猛威を振るっている。考えてみれば、日本でも感染者数は漸増している。一日に何千人も死亡する米国と比べれば良い方だが、日本でも感染者急増・医療危機の可能性が危惧される。

〇欧州・ロシア

ドイツ政府は16日から来年1月10日まで生活必需品を除き、商店を原則営業禁止にすると発表、学校・保育施設も原則閉鎖するそうだ。既に飲食店、娯楽施設などの営業が禁止されており、規制は一層強化される。韓国に続き、欧州の優等生だったはずのドイツでも状況は悪化しつつある。欧州の他国は状況がもっと悪いのだろうか。

▲写真 連邦議会で国民へのコロナ対策の徹底を強い口調で呼びかけるメルケル独首相(2020年12月9日) 出典:ドイツ連邦議会ホームページ

〇中東

先週日本政府は中東派遣中の自衛隊護衛艦と哨戒機の派遣期間を12月下旬から1年延長することを「しれっと」決めた。大義名分は「日本関連船舶の安全確保に必要な情報収集態勢を強化するため」だという。現地情勢は全く変わっていないので当然だろうが、このままでは相当長期の派遣となる可能性が高いだろう。

〇南北アメリカ

先週はワシントンなどでトランプ支持者らが集会を開き、各地で反トランプ派との衝突が発生、怪我人が出ている。米国のトランプ主義者は武装しているので衝突が拡大すれば死者も出かねない。米国の集会参加は「命懸け」だが、それに比べれば、日本のトランプ主義者のデモが実に平和的であったことだけは救いである。

〇インド

特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きは今週のキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

トップ写真:トランプ米大統領とメラニア夫人(2020年11月30日 ホワイトハウス) 出典: flickr; The White House (Public domain)




この記事を書いた人
宮家邦彦立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表

1978年東大法卒、外務省入省。カイロ、バグダッド、ワシントン、北京にて大使館勤務。本省では、外務大臣秘書官、中東第二課長、中東第一課長、日米安保条約課長、中東局参事官などを歴任。

2005年退職。株式会社エー、オー、アイ代表取締役社長に就任。同時にAOI外交政策研究所(現・株式会社外交政策研究所)を設立。

2006年立命館大学客員教授。

2006-2007年安倍内閣「公邸連絡調整官」として首相夫人を補佐。

2009年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹(外交安保)

言語:英語、中国語、アラビア語。

特技:サックス、ベースギター。

趣味:バンド活動。

各種メディアで評論活動。

宮家邦彦

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