<ランナーは3万6000人>世界最古にして全米最大のマラソン大会「ボストンマラソン」に行ってきた!
渋谷真紀子(ボストン大学院・演劇教育専攻)
世界最古であり全米最大のマラソン大会、ボストンマラソン。
今年は、昨年の爆破テロを乗り越えるべく、合言葉”BOSTON STRONG! 「ボストンよ、強くあれ!」”を背負った大会となりました。全世界から集まるランナーは昨年より9千人増え、総勢3.6万人。沿道の応援は、史上最多だったと言われています。
私も応援に行ってきました! ボストンは移民社会で、全世界から多くの学生が集まることもあり、人種・宗教・母国語と多様性に富んだ都市です。その分、「ボストンは一時的に住む場所であり帰属意識を以前は特に感じていなかった」と話す友達もいました。
しかし、ボストンマラソンでテロが起き、社会からの疎外感が犯人を追い込んだともいわれる中で、多様な人達が共存し協力し合える社会へと建て直そう!と“BOSTON STRONG”の意識が強くなっていったと言います。
主犯格の男との銃撃戦の場となり警察官1人が亡くなったMIT(マサチューセッツ工科大学)では、”MIT STRONG 「MITよ、強くあれ!」” として、コミュニティとしての結束力を強める動きが続いていると、学生から聞きました。数々の追悼式、亡くなった警察官の基金の設立等、「悲しみを忘れず次の一歩へ団結を!」という勢いを感じると言います。
大会では、彼の名前を書いて走るランナーを、MITの一団が応援し続ける姿も観られました。その他、テロ被害者の1人である義足のランナーが”THE VOICE IN YOUR HEAD THAT SAYS YOU CAN’T DO THIS IS A LIAR「もう走らないなんて嘘はつかない」”と背中に書いて走り、沿道から勇姿を称える声援が鳴り響く場面もありました。
市民を救ったBoston消防団、看病にあたった医師・看護士団を代表して走るランナー達に、”Thank you!!”という声援。”Almost there! 「あと少しだ!」” “Keep it on!! 「最後まで頑張れ!」””Great job! 「よくやった!」” 等、とランナーと応援者に一体感がありました。
話を聞いたテキサスから来たランナーは「今日はボストンからパワーをもらって、彼らのために走った」と話してくれました。一方で残念なことも…4月15日、テロから一年後の追悼式が行われた直後、まさにテロが起きた付近と同じマラソンのゴールラインの近くで不審物が発見されたのです。
大学から「不審物が発見され、犯人未逮捕のため、近くに立ち入らないように」という内容の緊急メールを受信した際には、友達と青ざめました。爆破物ではなく、ただの悪戯だとわかったものの、これだけボストン中が安全な社会を取り戻そうとしている中で、不謹慎な悪戯があったこと自体、大変ショックでした。犯人の“BOSTON STRONG”と叫ぶ声が監視カメラに映っており、逮捕の材料となったそうです。
このスローガンが市民の間で真の願いとして共有されるのではなく、「まやかし」になってしまう怖さを感じました。心から周りの人と信頼しあえないと、実際の行動には繋がっていかないということです。隣人と助け合うことが、小さなことだけれど大切な原点です。
“BOSTON STRONG”を単なるスローガンで終わらせないためには、1人1人に居場所がある社会を形成することが不可欠だと思います。それが出来て初めて、本当のボストンの再生が達成できるのだと感じた出来事でした。
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