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.社会  投稿日:2021/4/2

コロナ報道これでいいの?メディア・リテラシーのすすめ 1


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

【まとめ】

・コロナ禍の「イメージ」と「実際の数字」の「違い」認識を。

・行政の数字の垂れ流しではなく、わかりやすく意味付けすべき。

・陽性者数は、母数のPCR検査数、対人口比もあわせて報道を。

 

緊急事態宣言が解除されたが、大阪では感染者数が増加、地方では変異種の話が出ている。どうなるか。

まずは、最新のデータを確認してみよう。

▲図 【出典】厚生労働省サイト、令和3年3月30日0:00現在

「第4波」という人がいるが、PCR検査数と似たようにも思えるのでそういうのは早計ではないかと思ってしまう。

さらに、データの「数字」を確認してみよう。

▲図【出典】厚生労働省サイト、令和3年3月30日0:00現在をもとに筆者作成

死亡率(年齢階級別にみた死亡者数の陽性者数に対する割合)は2%弱なのだ。陽性者のうち50人に1人が亡くなっている。

事実と認識の違い

陽性者数/PCR検査実施人数=0.048  <約20人に1人>

・死亡者数/陽性者数=0.019 <約50人に1人>

これが現実の数字である。PCR検査実施のうち20人に1人が陽性になっているということなのだ。この数字を、高いとか低いとか評価したり、どう解釈するのか、はひとまず置いておこう。

では、世代別に見てみよう。

▲図 【出典】厚生労働省、令和3年3月24日18時時点データより筆者作成

陽性者を年代別の人口で割ってみたのが上記図になる。20代は確かに高いが、それでも0.008という数値。1%以下、130人に1人が陽性者になっているというレベルである。

イメージはこんな感じになる。上記のデータに人口を加味してイメージを作ってみた。

▲図 【出典】筆者作成

さらに40代を見てみるとこうなる。

▲図 【出典】筆者作成

あえて言うがこれに対して解釈はしない。

これが事実である。皆さんの認識はどうであろうか?

■イメージとどれだけ差がある?

大事なのは皆さんの頭の中の「イメージ」との違いである。

前提知識や情報取得環境によって、人それぞれ認識はさまざまである。違いがあるのは当然だ。ある人は「やばい」と警戒し、ある人は「大したことない」と思う。その人の知識や理解度合、興味関心度合、おかれた環境、事情などによって違ってくる。それは当然である。

しかし、メディア視聴環境や提示される情報が多様でなかったらどうなるか。

「感染者数が〇〇」という情報を毎日聞いていたらどうなるか。時間がなく、ニュースを理解するのに暇がない人はそれだけが頭に入ってしまう。

・感染者数が増えた減った、というがその母数はどうなのか?

・人口比でどうなのか?

という当たり前のことが提示されていないことも多い。

行政が出している「数字」をただ垂れ流すのではなく、わかりやすく加工し、その意味を伝え、理解度合にあわせて提示する報道、その責務を果たしているのだろうか。

・陽性者数/PCR検査数

・陽性者数/地域人口

など最低でも必要であろうというのは僕だけだろうか。

トップ写真:緊急事態宣言延長のニュースに足を止める通行人(2020年5月4日 大阪市) 出典:Buddhika Weerasinghe/Getty Images




この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家


NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。


専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。

西村健

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