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.政治  投稿日:2024/7/30

心に響く「メディア」への厳しさ~石丸伸二に若者が熱狂した理由②


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

【まとめ】

・石丸氏は公約で「政治のエンタメ化」を主張し、メディアの役割に挑戦。

・大手メディアへの信頼低下を背景に、挑戦的な姿を見せることで、既存の「体制」にも挑戦的な姿勢をアピール。

・ただしメディアの先には国民がおり、一定の役割へのリスペクトも必要である。



165万票をゲットした石丸さん。無党派層、国民民主党や維新などや行政改革などの政策に関心がある50歳以下の男性に対してのターゲティングが成功。ウェブマーケティングの成功の陰には、ネット広告を打ったことが効果的だったようだ。ネット広告を打つことで、過去の切り抜き動画がストックとして機能し、認知度が一気に広がった。youtubeライブ、ファンミーティングをして本音を吐露するところなどもすべて計算・演出されているそう。

 

前回は石丸さんの「名言」が熱狂を生んだことが明確になったが、その名言や姿勢にも内容として一部含まれている「大手メディアへの対決姿勢」も熱狂の一つの要因であると考える。

 

◇大手メディアの問題をあぶりだす

 

そもそも日本のメディアの報道の自由度はなんと70位である。新聞と同系列の大手メディアが限られたテレビを支配する構造はもう何十年も変わらない。メディアの集中排除法則、つまり、クロスオーナーシップ(同一資本が新聞とテレビを同時に保有すること)を各国では規制しているものの、日本では規制されていない。ほとんどの政治情報、経済情報、特に行政情報は、NHK、読売新聞・日本テレビ、毎日新聞・TBS、産経新聞・フジテレビ、朝日新聞・テレビ朝日、日本経済新聞・テレビ東京、共同通信、時事通信、あと、ブロック誌である中日新聞(東京新聞)、西日本新聞、北海道新聞などの16社を通じてしか外に出ない状態になっている。ここに、不公正な、アンフェアな壁がある。新規メディアは記者クラブ(日本新聞協会記者クラブ)に入れないし、記者クラブはメディア利権の1つでもある。

 

権力の監視機関としては、センテンススプリングこと「文春」、「新潮」などの週刊誌が先行している。エリート社員からなる大手メディアの「権力」。具体的には、報道内容を選択すること(偏ったニュースやポリコレマターは伝えない)、考え方を一定の枠にはめようとする行為や姿勢に対して、国民の不信は高まっている。SNSなどによって、大手メディアの問題が可視化され、一部の国民は「報道がゆがめられている」「真実を言わない」と感じるようになってきた。

 

問題としては

 

①機能

・権力と対峙するはずが権力の手先になってしまう。

・権力の前ではどうしても追及が甘い。

・大手の情報独占、権力とのチェック機能が働かない。

 

②企業体としての課題

 

・編集と広告は別に放っているものの、広告費をもらっている企業の批判は弱めになりがち。

・自社番組の広告宣伝などが「公共の電波」で流れて公共性がないがしろに。

・質の良いジャーナリズム記事は読まれない、収益化できない。

 

といったことがあげられる。

 

こういう問題が顕在化しているのがメディア環境である。こうしたことに「おかしい!」という問題認識を持った人たちにとって、大手メディアに取り上げられなく、SNSを使用してなんとか対抗している石丸氏の姿勢に共感するのは当然である。

 

◇大手メディアへの警鐘が受けた!

 

安芸高田市でも地元紙記者とかなりの「対決」してきた石丸氏は公約で「政治のエンタメ化」を主張。公約にも「都政の見える化・分かる化を進めます!:SNS・YouTubeを活用し、都民の皆さんの関心を都政に向けます。ガイドラインを遵守し、情報公開を徹底します。」と入れており、メディアの役割に挑戦するような公約を入れていた。

 

大手メディアとの対決姿勢を戦略的に選択するとはいえ、石丸さんの対応は明らかに「社会人としてダメ」と違和感を持った人も多いだろう。私もさすがにここで愛嬌を見せればいいのに・・・メディアへの執拗な対決姿勢はどうかと思った。それはメディアの先には国民がその先にいるからだ。一定の役割へのリスペクトも必要であろう。

 

しかし、彼の哲学、姿勢は、メディアに対して「妥協しない宣言」を体現したともいえるだろう。大手メディアへの信頼低下を背景に、メディアに挑戦する行動を示し、実際、オルタナティブなメディアを駆使しまくっている寵児としては、当然のふるまいかもしれない。大手メディアに挑戦的に見せるだけで、既存の「体制」にも挑戦的な姿勢がアピールできる。それがよりターゲットの問題意識にはまったのだろう。それが石丸現象のもう1つの側面である。

 

 




この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家


NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。


専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。

西村健

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