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.国際  投稿日:2021/4/27

中国国勢調査、結果公表遅れ


澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)

「澁谷司の東アジアリサーチ」

【まとめ】

・中国第7次国勢調査の結果、未だ公表されず。

・中国人口は出生率の低下から、マイナス転落予想。

・少子高齢化で社会活力失い、北京経済はますます苦しくなるのでは。

 

中国共産党は1949年に政権を奪取して以来、国勢調査を7回行っている。

1953年7月、第1回目の国勢調査を実施した。第2回目の国勢調査は、11年後の1964年7月に行っている。周知の如く、1950年代後半の「大躍進」運動は失敗し、食糧危機に見舞われた。そのため、調査時期が1年遅れたのかもしれない。

その後、毛沢東主席が発動した「文化大革命」(1966年~1976年)期間中、中国当局は国勢調査ができなかった。1977年、鄧小平が再復活し、1978年12月、中国で「改革・開放」が始まった。そして、1982年7月、18年ぶりに第3回目の国勢調査が実施されている。

1990年、第4回目の国勢調査からは、10年毎に行われている。ただし、以前の7月1日から11月1日へと調査日が変更された。理由は不明である。

第3次国勢調査(1982年)から8年後の第4次国勢調査(1990年)の間に、人口が1億2800万人増えた。そして、10年後の第5次国勢調査(2000年)では、1億3500万人増加している。

ところが、その10年後の第6次国勢調査(2010年)では、人口が4500万人しか増えなかった。21世紀に入ると、中国にも「少子化」傾向が顕在化した。

さて、問題は昨2020年11月に行われた第7回目の国勢調査である。今年(2021年)4月上旬、調査結果が公表される予定だったが、なぜか延期された(4月25日現在、依然、未発表のままである)。

人口学者、易富賢(『大国空巣』の著者で米ウィスコンシン大学マディソン校研究員)は、2020年の人口を「1990年の人口+出生数-死亡者数-移民数」でシミュレーションしている。

易富賢は、第7次国勢調査では、2020年の中国の実人口が12億5500万人にとどまり、たとえ多くても12億8300万人を超えることはないだろうと予測した(易富賢「2020年国勢調査シミュレーション分析」『人口と未来』2020年11月16日)。

仮に、易の予測が正しければ、最小でも約5700万人、最大で8500万人の人口減である。中国で人口がマイナスに転落するのは、「大躍進」運動後、深刻な飢饉に見舞われた時期(1959年~61年)以来となる。

人口の急激な減少理由としては、出生率が著しく低下したからだろう。中国共産党は1979年から2014年まで、「一人っ子」政策を実施した。一組の夫婦には子供を一人までとする計画生育政策だった。

▲写真 一人っ子政策下において、唯一の我が子を抱き抱えながら北京の紫禁城を訪れる男性。 出典:Kevin Lee/Newsmakers

しかし、2014年には同政策を放棄し、2016年から「二人っ子」政策に転じている。それにもかかわらず、人口は増加していない。おそらく子供の教育費が非常に高いせいではないか。親としては、二人目を躊躇せざるを得ないかもしれない(「都市化」による「晩婚化」も影響しているだろう)。

2020年の高齢化指数だが、易によれば、子供(0~14歳)100人に対する65歳以上の高齢者数では、「シナリオA」で111%、「シナリオB」では102%と子供よりも65歳以上の高齢者が上回るという。

先進国の場合、社会全体がある程度豊かになってから「少子高齢化」時代を迎える。だが、中国は、皆が豊かになる前に、「少子高齢化」の時代に突入した(昨年5月、李克強首相が中国では月収1000元<約1万6000円>の人がおよそ6億人<全人口の約43%>いると暴露)。

すでに、中国は「人口ボーナス」(総人口に占める「生産年齢人口<15歳~64歳の人口>」が「従属人口 <14歳以下と65歳以上を合わせた人口> 」に対する比率が大きい状態)の“アドバンテージ”を失いつつある。

ところで、昨年、中国発展研究基金会が『中国発展報告書2020:中国人口の高齢化の発展傾向と政策』を発表した。

その『報告書』に関して「中国は2022年頃に高齢化社会を迎える。科学的に対応すべきだ」『中国新聞網』(2020年6月19日)という評論が登場している。その一部を紹介しよう。

『報告書』によれば、中国では2000年に高齢化社会に突入して以来、高齢化が昂進している。2022年には、中国の65歳以上の人口が総人口の14%を占めるだろう。

2020年には中国の65歳以上の高齢者は約1億8000万人となり、総人口の約13%を占める。2025年(第14次5カ年計画が終了年)には、65歳以上の高齢者は2億1000万人以上となり、総人口の約15%を占めるようになるだろう。

2035年、2050年には中国の65歳以上の高齢者は約3億1000万人、約3億8000万人に達し、それぞれ総人口の22.3%、27.9%を占める。

60歳以上を高齢者とした場合、高齢者数はさらに増加し、2050年には5億人近くが存在するようになるという。

このまま、中国で若者の人口が減少し続ければ、社会の活力が失われる事は間違いない。今後、北京は経済的にますます苦しくなるのではないだろうか。

なお、『報告書』は、2019~2050年までの中国「都市化」プロセスを2段階に大別した。第1段階の2019年~2036年にかけて、都市人口は8億2600万人から10億4700万人に増加する。だが、第2段階の2037年~2050年の間に、都市人口は10億4400万人から10億1300万人へ減少すると見込んでいる。

トップ写真:中国にて第7次国勢調査を実施する様子(2020年11月1日) 出典:TPG/Getty Images




この記事を書いた人
澁谷司アジア太平洋交流学会会長

1953年東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。元拓殖大学海外事情研究所教授。アジア太平洋交流学会会長。

澁谷司

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