[宮家邦彦]<世界中で事件>ベトナム・中国の艦船衝突、ウクライナ住民投票、ナイジェリア女子生徒誘拐、インド総選挙[外交・安保カレンダー(2014年5月12-18日)]
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表
今週(2014年5月12-18日)は何故か世界中で様々な事件が現在進行形で起きつつある。南シナ海では南沙諸島付近でベトナムと中国の艦船が衝突・睨み合いを続けている。ウクライナでは東部ドニェツクとルガンスク両州の「住民投票」が強行され、「国家としての自立」が圧倒的多数で支持されたそうだ。これだけではない。
ナイジェリアでボコ・ハラムに誘拐された女子生徒達も未だ解放されていないし、インドでは一カ月かけた総選挙が漸く最終日を迎えたそうだ。このところウイグル系と思われる暴力事件が多発している中国では、12日にも四川省で路線バスが炎上し死傷者が出ているそうだ。これらの多くは出口が見えていない。
中国はASEAN首脳会議やアジア安全保障問題を議論するシャングリア会合を前に、何故わざわざ巨大オイル・リグを南シナ海に持ち込んだのだろう。対中非難が渦巻くのは目に見えているのに。偶然と見る向きもあるが、筆者は中国による「強烈な不満の表明」だとしか思えない。どうせやるならもっと巧妙にやればよいのだが。
その点はロシアの対ウクライナ工作の方が見事だ。ロシア系住民に「住民投票」をさせても、モスクワは一向に傷付かない。こうしてウクライナが混乱すれば、ロシアの思う壺だ。欧米諸国が如何に不法、違法と騒いでも、何もできない。尤も、中国がロシアのように狡猾だったら、南シナ海情勢は遥かに悪化しているだろうが・・・。
それにしても、日本ではアフリカの女子生徒誘拐事件について感度が弱過ぎる気がする。これは女性の人道問題だ。世界ではオバマ夫人を筆頭にイスラム過激派の蛮行に非難が高まりつつあるのに・・・。四川省の事件がウイグル系の犯行かは未だ判らないが、中国のウイグル問題が今後更に深刻化することだけは間違いない。
これらに比べれば、政権交代の可能性が高いインドの総選挙だけが今後は期待できる動きなのだろうか。なお、11日からイスラエルのネタニヤフ首相が訪日しているのだが、日本での関心は驚くほど低い。これも欧米と日本の温度差の一例なのだが、何とかならないものかなぁ。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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