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.国際  投稿日:2021/9/12

仏、25歳未満の避妊無料化


Ulala(著述家)

フランスUlalaの視点」

【まとめ】

・仏、経口避妊薬や避妊リングなどの避妊費用を22年1月から無料化。

・15歳未満の未成年者は既に無料。今回、19歳から25歳へ拡大。

・経済的弱者である若者は、今後金銭の負担がなくなり、避妊法の選択肢広がる。

 

フランス政府は9日、25歳未満のすべての女性を対象に、経口避妊薬(ピルや子宮内避妊具である避妊リングIUDなどの避妊法にかかる費用を無料化すると発表した。

予算2100万ユーロ(約27億円)を充てるとし、若い女性が経済的理由から避妊をあきらめることを防ぐために、現在18歳以下を対象としている制度を拡大するとしたのだ。診察代も無料となる。だが、避妊パッチや女性用コンドームは対象とならない。2022年1月1日から実施予定としている。

15歳から18歳までが適用された2013年以降、1000人あたりの中絶が9.5人から6人に減少しており、避妊法を無料化する効果はすでに認められている。望まない妊娠や中絶を防ぐため、2020年に15歳未満の未成年者に対しても無料化を拡大しており、今回は、19歳から25歳への拡大となる。

■ フランスの避妊の歴史

フランスでは、その昔、女性の権利は大きく制限されていた。女性は夫の許可がなければ銀行口座すら持てず、働くこともできなかったのである。妊娠、出産に関しても、女性に自由はなかった。1810年に人工中絶は犯罪とされ、1920年には中絶に関する広告を流すこと及び、避妊に関わる情報の流布、避妊を目的とする製品を販売することも禁止された。

このため女性は、自分の意思とは関係なく妊娠し出産せざるを得ない状況が続いていたのだ。その結果、子育てのために働きに行くことが制限されたり、望まぬ出産をしたことで育児放棄につながっても、その原因は女性にあるとされ罪に問われることになるなど苦難を強いられていたのである。

だが、そんな状況から脱出するべく女性解放運動が活発化した。その結果、1965年には女性が自分の名前で銀行口座を開設しお金を自由に出し入れできるようになり、1967年には避妊具の販売や情報提供が法的に認められると同時にピルの販売も開始され、1975年には中絶も合法化されたのだ。

特に、ピルは女性が自分の体を自分でコントロールできるようになることが画期的だった。今まで男性主導であった避妊法を、産む側の女性自身の手に戻せたのだ。そして、ピルは1974年以降からは社会保障によって払い戻しの対象にもなり、フランスの大多数の女性が利用する避妊法として定着したのである。

■ 現在のフランスの避妊の状況

しかしながら、現在、フランスではピルの使用は他の避妊法も出てきたこともあり、2002年頃から年々減少傾向にある。特に2012年から2013年に第3世代および第4世代の錠剤に関連する、静脈血栓症のリスクをめぐる論争が起こったことで減少が加速した。2010年と2016年の15〜49歳の女性におけるピルの利用率(ピルとコンドーム併用を含む)を見てみても、49.5%だったものが36.5%に減少している。

現在では、避妊リングやコンドームに目を向けている女性も多く、特に30代以上では避妊リングもしくはコンドームを使用する人の方がピル使用者よりも割合が多くなってきている。また、25歳~29歳間での避妊リングの伸びも顕著で、2010年には7.6%だったものが、2016年の発表では19%に増加している。

先日ファッションモデルの益若つばささんが、避妊リングを装着したことをYouTubeで公表し話題を呼んだが、避妊リングは日本においても最近注目されている避妊法である。ピルのように飲み忘れることもなく、一度装着すれば高い割合で長期にわたり避妊ができる手軽さも支持される理由の一つだ。取り出すことにより、その後妊娠も可能だ。

▲写真 避妊リング(IUD) 出典:Photo by Peter Andrews/Corbis via Getty Images

避妊リングミレーナ入れました【IUS】益若つばさより。

今回、25歳以下が無料となる避妊法の中には、この避妊リングも含まれている。今まではできたとしても、安価なピル以外の選択肢もほぼなかった経済的弱者である若者にとっては、今後は金銭の負担がなくなる上、さらに避妊法の選択肢が広がることになるのだ。

個人の経済状況に関係することなく、かつ自分に一番適している避妊法を選べることが重要である。今回、無料化の適用年齢を拡大したことで、救われる女性が増加するのは間違いない。

 

<参考リンク>

避妊:25歳以下の無料避妊サービスは「性教育の欠点を隠すものではない 

フランス社会における避妊

フランスの避妊事情

フランス人女性と避妊 :  2016年ヘルスバロメーターの最初のデータ Baromètre santé 2016

25歳までの無料避妊措置:Véran氏が発表した措置に関する3つの質問Véran

トップ写真:ベルギーの無料ピル自動販売機(2012年9月21日) 出典:Photo by Sander de Wilde/Corbis via Getty Images




この記事を書いた人
Ulalaライター・ブロガー

日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、著述家として活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。

Ulala

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