ゴーンと司法
.JID  投稿日:2014/5/22

[Japan In-depthニコ生公式放送リポート]“美味しんぼ”騒動を考える


Aya(ライター)

 

福島第一原発の事故による健康への影響をめぐる描写が物議を醸した人気漫画「美味しんぼ」。福島県や専門家から風評被害を助長するなどと批判を浴び、掲載誌である小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」編集部からは「批判を真摯に受け止め、表現のあ り方について今一度見直す」とのコメントも出された。(注1)

番組では、漫画に精通している明治大学国際日本学部の藤本由香里教授、そして経済政策の専門家である社会保障経済研究所代表の石川和男氏を招いて、この騒動について様々な角度から検証した。(Japan In depthチャンネル 2014年5月17日(土)放送:テーマ「“美味しんぼ”騒動を考える」)

騒動は、4月28日発売の「スピリッツ」に、福島を訪れた主人公が鼻血を流すというシーンが掲載されたことから始まった。その次の号には「福島を除染して人が住めるようになんてできない。これが福島の真実。」という台詞もある。これらの表現が環境省や一般の読者からの批判の的となった。

「美味しんぼ」の福島編は大きく分けて、第一部と第二部に分かれており、現在議論を呼んでいるのは第二部だ。第一部では、福島の農産物の安全性を問い、結果として「福島の農産物は安全だ」という内容になっている。藤本教授は「第一部は福島に残った人を支援する目線で書かれているが、第二部は福島から避難した人、(福島に留まっている人に)避難してもらいたいと思っている人の目線で描かれている」と指摘する。

とは言え、今回の「美味しんぼ」にはいくつかの点で明らかに問題があったとも指摘している。

  • 表現が直接的であまりにショッキングであること。
  • 取材は2011年に行われており、情報が古いという点。
  • 一口に福島といっても、いろいろな地域があり、放射性物質の濃度は様々であるのに「福島は」と一括りにしてしまっていること。
  • 政府への怒りを描くためにこのような表現技法をとったのかもしれないが、意図とは違って却って福島の人たちを困らせてしまっていること。

といった点だ。

番組内で、今回の「美味しんぼ」騒動について三択のアンケートを取ったところ、「美味しんぼの主張には反対」が42.5%、「一理あるが、表現方法に問題があった」が39.4%、「大切な主張だと思う」が18.1%であった。

藤本教授は、「ネット上の意見などを見ていると、反対が大多数であるような印象を受けていた」と、この結果に意外さを示しつつ、「ネット上の情報は、声の大きい極端な意見が多く見える傾向にある。反対意見を書くと批判されやすいので、黙っている人も多い。」と述べると共に「この問題は美味しんぼが悪い、悪くないといった単純な議論ではない」と藤本氏は指摘した。

この騒動の陰には、政府による情報提供の不十分さという問題もあるのだ。事故発生以来、政府側や自治体が、放射線の人体への影響について、丁寧に説明し、国民がそれを正しく理解してれば、このような大きな騒動にはならなかったのではないか。

石川氏は「政府の中に情報提供を包括的に担っている部署がなく、情報提供の手法にまだまだ問題がある」と述べる。その上で、「情報を受け取っても、受け手側が興味を示さなかったり、理解できなかったりする側面もある」と受け手側の問題点についても指摘した。

被災地は「風化」と「風評被害」、二つの「風」に悩まされている。今回の騒動は「風評被害」という点で厳しく批判されているが、あえて肯定的に見れば、こうして福島が描写されることで風化に歯止めをかけたともいえる。福島を覆う問題は様々な利害が絡み合い、複雑多岐にわたる。だからこそ、既存のメディアは、情報を断片的に切り取って伝えるのではなく、相反する見方があることを提供し続ける責任があろう。

そして、情報の受け手側も、情報を鵜呑みにしてTwitterやfacebookで拡散する前に、その情報の真偽や、その情報が拡散されることによって誰が喜び、誰が困るのかをもう 一度考えるべきである。

注1)5月19日発売の「週刊ビッグコミックスピリッツ」25号で、”美味しんぼ“「福島の真実」編は終了した。編集部は『「美味しんぼ」福島の真実編に寄せられたご批判とご意見』と題し、地方自治体からの抗議文や、識者の意見などを10ページにわたって掲載した。

 

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