カーボンニュートラル、ダイバーシティ、DXが進む「2022年を占う!」東京都
西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
【まとめ】
・都の政策目標、443のうち、316が達成済み、とそこそこの成果。
・2022年の課題はコロナによる財政難と人口減少。
・今年、都ファは参院選に向け動く。カーボンニュートラル、ダイバーシティ、DXなどの政策を推進するだろう。
東京都、小池都政は東京五輪、コロナ対策に終始したといっても過言ではない。2022年の新たな東京はどうなるか。Withコロナ、afterコロナどうなるかは予断を許さない状況であるが、そこを予測していきたい。
まずはじめに、「自称東京の兄」が流行語で2021年を振り返ります。
■ おなじみの流行語で2021年を振り返る
1月:緊急事態宣言
コロナが問題になってから、政権は1年もあったのに病床数増やすことすらできなかった、政治の敗北宣言。「渡韓ごっこ」ばりに新大久保で「路上飲み」したくもなってもいいじゃない。「黙食」「人流」「副反応」・・・ほんと「うっせぇわ」と思っている人が少ない従順な国民性・・・なのかもしれない。
2月:総務省接待問題
菅総理の息子さんが東北新社の取締役で、総務省に接待攻勢したのが問題になった。まさに「親ガチャ」が大人になっても続く例である。この世の中では、自分の権力を自覚し、謙虚になり、権限に抑制的な政治家は無理なのかもしれない。政治のリーダーシップ強化によって、省庁内にも「押し活」がはやっているのか???
7月:東京五輪開催
「チキータ」炸裂、スポーツの奥深さや感動に酔いしれる日本国民。いろいろ批判はあったが、開催できたという意味で、銀ブラをできたという意味で、「ぼったくり男爵」の勝利!
ただ光明もあった。「13歳の大冒険」が注目を浴びたように「Z世代」が活躍!
とはいえ、現場ではスケボーは「ゴン攻め」できるけど、都内の公園でスケボーができる公園は本当に少ない(執筆記事参考)。
そして、五輪の後処理。今後の施設建設費や維持管理費がのしかかってくるわけだ。新国立競技場だけでも維持管理費はなんと年間24億円。復興五輪や低コストでのコンパクトな五輪を約束したはずだが・・・・果たせるはずもなかった。「ピクトグラム」の「中の人」が泣いている・・・・かも。「NFT」ででもやってみればよかったのにと思うところ。
▲写真 東京2020オリンピックの閉会式(2021年8月8日、オリンピックスタジアムにて) 出典: Photo by Alexander Hassenstein/Getty Images
9月:自民党総裁選、岸田さん総裁に
突如「ウマ娘」のごとく、安倍ちゃん育成馬が出馬!高市早苗さんという超有能女性が降臨した。「プリティライブ」をするには野田さん1人では足りなかったが、2名の女性候補の出現、そして、4候補のコミュニケーション力にびっくりした国民たち。やっとまともな話が通じるリーダーがでてきて政策論争。高校時代「開成のパパ」と言われたキッシーが勝利。「神奈川連合」は敗れる。
10月:総選挙
与党は「立憲共産党」という指摘で相手の痛いところをつく、まさに「呪術廻戦」ばりの闘争が全国各地で行われた。結果は自民党・公明党の勝利。投票率は55.9%という低さ。さらに当選した女性議員の割合は9.7%、なんと一桁である。「ジェンダー平等」の言葉は実効性を約束されなく、むなしく響く・・・
11月:大谷さん、MVP受賞
謙虚さと成長意欲の「リアル二刀流」の大谷翔平さん。大リーグでMVPを受賞。ホームラン数:46 9勝2敗0S 防御率:3.18 奪三振:156という成績。生まれ変わったら「肉うどん」にはならなそうな(*注:お笑い芸人のロングコートダディのギャグ)大谷さん。来年も活躍に期待だ!
「ととのう」という言葉がある。サウナ→水風呂→休憩を3回ほどくりかえすことで訪れる快感、トランス状態だそうだが、「緊急事態宣言→解除→GOTO」を3回ほどくりかえすことがないように、と願っている。
以上、お笑い芸人のインディアンズ風に「変異株は行方不明やわ」「変異株のやつ東京いったらしいな」と言える日がきますよーに。
■ 東京の政策目標達成度はそれなり
さて、初笑いの冗談のような振り返りはさておき、都政について予測してみよう。昨年6月にこれまでの都政の成果が公表された。2020年度末を(2021年3月)を目標年次とする政策目標443のうち、316が達成済とそこそこの成果を出したと言える。
▲表 【出典】「2020年に向けた実行プラン」事業実施状況レビュー結果
昨年5月に都民ファーストの会が発表した「任期4年間の最終進捗」においても、達成済みが55%となっている。
▲表 【出典】2017年都議選時の公約の進捗公開
政治は利害調整ということを考えると、それなりに成果は出ているといってよい。
■ 2022年の東京の課題
2022年の東京は、新型コロナウィルスの動向、落ち着き次第といったところで、予測がつかない。ただし、コロナの問題を脇においておいても、東京には大きな課題がある。
コロナ対策後の問題は、足元の東京の財政であろう。第一に、財政調整基金と言われる、年度間の財源の不均衡を調整するための積立金の減少である。いわゆる「貯金」のような財源である。1兆円あった金額がコロナ対策で大きく目減り、昨年6月時点で、2021年度末の残高は2837億円になる見通しとされた。第二に、コロナでの税収減も見込まれていることだ。多くの企業の減収によって、都税収入の減少。この金額が4000億円近くと見込まれていて、税収減は都債で賄うことになる。
■ 2022年の東京は人口減?
筆者はそうは思わないが、人口減少も東京都にとっては問題の1つである。2021年12月1日時点の人口は「1,399万8,001人」と1400万人を切ったことが大きな問題になった。この傾向は続きそうだ。
内訳をみても、2020年に東京23区から転出した人は36万と、2019年より2万人増加した。ちなみに転出先としては、藤沢市、三鷹市、横浜市、川崎市、船橋市、鎌倉市といった自治体であるので、東京圏に入ることは確か。とはいえ、東京都にとっては、東京都外に出て行かれては困る。しかし、新型コロナウィルスの自粛期間でテレワークが拡大したことで、多くの都民にとって、都心じゃなくてもよいのではないか?もっとゆとりのある暮らしをしたいというニーズが顕在化している。さらに、岸田政権のデジタル田園都市構想によってさらに傾向が強まるだろう。
東京一極集中是正論者の筆者は、このことを素晴らしいと思っているが、東京都にとっては、人口減少は課題と考えているだろう。人口は政策の前提となっている。こうした兆候を見越したうえで都市計画をしていない。そのため、この兆候がマクロトレンドになった場合、多くの計画を見直す必要が出てくるだろう。都庁にとっては作業量的にも大変なことだと思う。
■ 画期的な政策で国政を超える?
政治面では色々とイノベーションが起きそうだ。都民ファーストの会は、こないだの衆議院議員選挙にて候補公募を行おうとしたように(選挙には間に合わなかったが)、参議院議員選挙で動くことは必至だろう。小池都知事も都民ファーストの会を使って、国政に影響をおよぼそうとするだろう。小池さんの野望をなめたらいけない。
カーボンニュートラル、ダイバーシティ、そうした旗印を掲げて、未来を先取りした政策を打ち出してきた小池都政。都内の新築一戸建て住宅の屋根に太陽光発電設備の設置を義務付ける条例制定のような「画期的な」政策を推進してくるだろう。
都議会でも「新築建築物への太陽光発電設備の設置を標準化し、ゼロエミッション東京の実現を目指す」とも小池都知事は発言している。また、自治体が同性カップルを婚姻相当の関係として公的に認める「同性パートナーシップ制度」を2022年度に導入するとも言われている。中道寄りの都市生活者向けの、時代を先取りした先進的、画期的な政策を進めることは当然のごとく予想される。国政ができない政策を提案してくるという点で、期待できる。
▲写真 LGBTQ差別禁止法を求める集会(2021年6月6日、東京都JR東日本渋谷駅の前で) 出典:Photo by Takashi Aoyama/Getty Images
また、副知事を中心としたデジタル施策の推進も期待できる。着実に、かつ充実した取り組みをしていると聞く。東京都のデジタル化はかなり進んでいくであろう。
小池都知事が就任最初に掲げた「東京大改革」は正直言って、まだまだ不十分である。民業圧迫のような事務事業や利益団体向けの政治的な配慮のような事業などなど、事務事業評価の専門家としては「見直し対象」の事業がふんだんにある。そこに踏み込めるか、単なるデジタル化ではない、DX(デジタル・トランスフォーメーション)を期待したい。
トップ写真:EVバイクコレクションに出席する小池百合子東京知事とユーチューバーのフワちゃん(2021年12月4日、東京国際フォーラムにて) 出典:Photo by Jun Sato/WireImage
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この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者
経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家
NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。
専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。