小池都政、成果あり 東京都長期ビジョンを読み解く!【特別編】
西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
「西村健の地方自治ウォッチング」
【まとめ】
・小池都知事の衆議院議員選挙出馬が取りざたされる中、これまでの成果を疑問視する声も。
・小池都政1年を見ると、「都政のオープン化」「政党復活枠廃止」などそれなりの成果を上げている。
・まだまだ都政は事業の目標設定や評価の点で問題も多く、一層の取り組みが望まれる。
■ 小池の乱?
衆議院が解散し、総選挙が10月22日(日)に行われることになった。この文章を書いている今現在、小池都知事の衆議院選出馬の是非については明らかになっていないが、その可能性が取りざたされている。
この一週間、民進党の解党など、政治に近しい私から見ても、何が起こっているのか、ふと迷子になった気分になった。演劇を見ているようだ。しかも、猛スピードで展開。
世の中に仕掛けを繰り出し、人をあっと言わせる能力にたけ、世論を見極める天才である「魔術師」小池百合子氏がどう出るか、注目が集まる。
そうした中、「(小池都政は)この1年で成果が出ていない」「(小池氏が都知事をやめることは)都政を投げ出すことだ」という批判がメディアで騒がしい。
■ 1年でこれだけの成果
僭越ながら、長年都政をウオッチしてきて、小池都政についてもこの連載で批判的であった私が地方自治の専門家として言わせてもらえば、この1年かなりの成果があったと考える。
第1に、都政がオープンになり、問題が露出したこと。豊洲市場問題は解決していないという批判は多いが、そもそもこれまでの負の遺産である。問題も様々な要因が複合的に絡み合っている。利害関係者は数多い。こうした問題が表面化したこと自体、彼女の功績だし、そもそも問題が浮上しないままで、我々は知らないまま末代に大きなリスクになっていた可能性がある。
▲写真 東京都議会議場 平成29年9月20日 出典:平成29年第3回定例会
第2に、都政における「リセット」。私も驚いたが、予算編成で慣例の「政党復活枠」というものが以前は存在した。業界団体は自分たちの要望を予算化できるよう、補助金がもらえるように都議に提案、その要望を受けた政党が都に提案し、結果、事業として予算がつけられる。
・各種団体は事業や補助金で利益を得る
・政治家は団体に恩を売れる(票も期待できる)
・各種団体に所属していない人々が(知らない間に)薄く負担をしている
・この枠の事務事業評価結果が見受けられない
という構造だ。
その額、200億円。これが廃止された。
第3に、都政改革本部の取組。これまでの自律的改革の成果以外にも、最近では、外郭団体のトップや役員の公募、外郭団体が独占していた委託契約の民間開放に着手。
個人的にはワイズスペンディングより都議会自民党が掲げた減税を進めるべきだと思うが、都政改革本部の取組は着実に進んでいる。
大変失礼な言い方だが、メディアで発言される方の中に、しっかり調べないでイメージで語る、政治的なポジショニングから語る方がいらっしゃるが、やめてもらいたい。メディアが成長しないと政治はレベルアップしない。
■ まだまだ課題も
「都民ファーストでつくる『新しい東京』~2020年に向けた実行プラン~」などはこれまでの計画からみて、その記述や内容も格段に進歩している。その「事業実施状況レビュー結果」を見ても明らかだ。
▲写真 都民ファーストの会 広報本部基本政策発表記者会見 2017年5月24日出典:「都民ファーストの会」都議 藤井あきら氏HP
しかし、厳しい言い方をすると、相変わらず目標設定やその根拠など疑問も多い。兵庫県庁は多くの指標・KPIで数値を設定し、目標管理をしているし、井戸知事の公約には様々な数字が並んでいる。各分野別計画の数値は何百にも上る。今後はこうした自治体から学ぶべきだろう。
都知事の役割は、組織マネジメントや方向性を決めること。発信力もそうかもしれない。具体的な政策が実現するのには時間がかかる。そのことを我々都民は知っておくべきだろう。
トップ画像:東京都第一庁舎 photo taken by Morio
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この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者
経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家
NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。
専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。