無料会員募集中
.国際  投稿日:2022/5/23

仏、ブルキニ着用許可を巡り議論


Ulala(著述家)

フランスUlalaの視点」

【まとめ】

・エリザベット・ボルヌ氏がフランス史上2人目となる女性首相に任命された。

・ボルヌ氏は、マクロン政権の1期目では、交通担当相や環境相、労働相を歴任した。

・グルノーブル市で、イスラーム女性信者が着用する水着、ブルキニがプールで認められ議論に。

 

5月16日、フランスで女性に関する二つの大きな決定がなされた。

1つ目は、フランス史上2人目となる女性首相が任命されたこと。2つ目は、6月1日からグルノーブル市の市営プールで、プール使用時に許可される衣類の種類が増えることが決定したことである。これにより、グルノーブル市は、イスラームの女性信者が着用することが多い全身を包む水着、ブルキニの着用がプールで認められる2番目の都市となった。

 フランス史上二人目の女性首相

大統領2期目に入ったマクロン大統領は、首相に環境相や労働相を歴任したエリザベット・ボルヌ氏(61)を任命した。フランスで女性が首相に就任するのは、ミッテラン政権時代の1991~92年に首相を務めたクレッソン氏以来、2人目となる。マクロン大統領は、30年に渡るフランス内閣における男性支配を終わすことを望んでいて、それが実現されたのである。

新首相となったエリザベット・ボルヌ氏は、1961年パリ15区生まれだが、彼女の父親は、1939年にフランスに亡命したポーランド出身のユダヤ人の一人でもある。11歳で父親を亡くした彼女は、薬剤師でもあったフランス人母に育てられたが、経済的には苦しい生活を送っていた。

しかし、国の奨学金を得て勉学の道をあきらめることなく進学することが可能となり、フランス最高峰の高等教育機関であるエコール・ポリテクニークに入学。また、最難関名門理工系グランゼコールの一つである国立土木学校のエンジニア資格も取得し、さらにMBAも取得している。

マクロン政権の1期目では交通担当相環境相労働相を歴任し、「慢性的に赤字で、ストライキを毎年繰り返すフランス国鉄の改革」をし、「新型コロナウイルスの感染拡大では失業対策」に取り組み、すでにマクロン政権の主要な政策を成功させた。2期目は重要な課題として「年金制度改革」が待ち受けており、確実に推進していくことが期待されている。

このようにすでに1期目で大きな活躍してきているのにもかかわらず、あまりそこまで目立つこともなかったボルヌ氏だが、女性が理系の道を進む人も少なく、また首相にまで上り詰めた数少ない女性となることで、女性のキャリア形成の道筋を示すローモデルとなることは間違いない。就任時のスピーチでも、「女性に夢の果てまで進んで欲しい」と語った。

しかし、今後、多勢力による大きな反発も予想されるため、どこまで対抗できるかも注目されるところだ。

■ グルノーブルの市営プールで、ブルキニが着用許可に

さらに、同日、フランスに住む女性に関する注目されている規則がグルノーブル市で決定された。6月1日からグルノーブル市で運営している市営プールでは、許可される水着の範囲が拡大することとなったのだ。この決定により、以前からフランスを含む西洋社会で大きな争点となってきた、イスラム教の女性が着用している全身を包む水着ブルキニを許可することになる。だが、同時にブルキニだけではなく、上半身を隠すことのない水着であるモノキニも着用可能になった。

グルノーブル市の市長であるエリック・ピオル氏は、これを「差別をしないことを保証するため」としている。女性が着たい水着を制限されることなく着用する権利を守ることが目的なのだ。この結果、グルノーブル市は、フランスでブルキニが許可されている2番目の都市となった。すでにレンヌ市では、2018年からブルキニ着用は許可されている。

▲写真 2019年スポーツイラストレイテッド水着ショーでお披露目された新作ブルキニ(2019年7月14日 米国・フロリダ・マイアミビーチ) 出典:Photo by Frazer Harrison/Getty Images for Sports Illustrated

これに対して、グルノーブル市があるイゼール県の知事は大きく反発。以前よりフランスでは、「ブルキニはイスラム教の規則に基づいて着用しているため、これを許すと宗教的な目的を持つ団体に屈服することになる」という意見もあり、知事もその立場で反発を強めている。

また、ジェラルド・ダルマナン内相もフランスの価値観でもあるライシテに反するとして、必要に応じて撤回を要求するように知事に支持しており、違法性についての捜査も開始した。

「本人が自由に好きな水着を着る女性の権利」を優先するか、それとも、「フランスの理念を崩壊させるイスラム教の規則に基づいた水着の排除」を続けるか。フランスは、現在、大きな分岐点を迎えている。

 

<参照リンク>

Twitter:GDarmanin

Twitter:Elisabeth_Borne

franceinfo:「プールでのブルキニ」

LADEPECHE.fr:「グルノーブルのプールでブルキニを着用」

Twitter:laurentwauquiez

franceinfo:「首相に任命されるエリザベット・ボルヌ氏」

20 minutes:「グルノーブル市に先立って、レンヌ市ではすでにプールでのブルキニ着用が許可されている」

トップ写真:官邸で引き継ぎ式を行う新首相のエリザベット・ボルヌ氏(2022年5月16日 仏・パリ) 出典:Photo by Chesnot/Getty Images




この記事を書いた人
Ulalaライター・ブロガー

日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、著述家として活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。

Ulala

copyright2014-"ABE,Inc. 2014 All rights reserved.No reproduction or republication without written permission."