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.国際  投稿日:2022/6/22

イスラエル総選挙、ネタニヤフ復活も


宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)

「宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2022#25」

2022年6月20-26日

【まとめ】

イスラエル、10月に3年半で5回目の総選挙が行われる見通し。最大野党のリクード党首ネタニヤフ前首相復帰の可能性も。

・ベネット政権は当初から寄り合い所帯であり、総選挙自体驚くべきことではない。

・イスラエルは国家として存続し、外交政策に大きな変化はないだろう。

 

先週から今週にかけて、あまり目立たないが、かなり重要な動きが世界各地で散見された。中でも筆者が最も気になったのがイスラエル政局だ。多くの読者にとって関心は低いだろうが、次回総選挙でネタニヤフ前首相が復活すればどうなるのか、元々中東屋だった筆者は、大いに気になるのである。

関連する各種報道を取り纏めれば次の通りだ。

●6月20日、ベネット現首相は連立を組むラピド外相と、来週クネセット(イスラエルの国会、定数120)を解散することで合意。過去3年強で5回目の総選挙となる。

●今後はベネット氏に代わりラピド氏が選挙管理内閣を率い、総選挙は10月となる見込み。最大野党の右派リクード党首ネタニヤフ前首相復帰の可能性もある。

●ベネット政権は21年6月、左右両派にアラブ系まで加えた8党の連立で発足したが、特にパレスチナ問題を巡る不一致が大きく、当初から寄り合い所帯だった。

直接のきっかけは6月6日、ヨルダン川西岸のユダヤ人入植者へのイスラエル法適用を延長する法案が与党議員の造反で否決されたことだそうだが、こうした事態は政権発足当時から十分予想されていたこと。現連立政権はネタニヤフを首相の座から引きずり下ろすためだけの「野合」だったから、総選挙自体は驚かない。

▲写真 現政権発足後最初の会合に出席するベネット首相(2021年6月13日 イスラエル・エルサレム) 出典:Photo by Amir Levy/Getty Images

筆者の現時点での見立ては次の通りだ。

●やはり、ネタニヤフは強い、イスラエル政治の権化なのかね。彼の「切り崩し工作」はかなり効果的だったのだろう。現政権はもう少し続くのかな、とも思ったが、意外に脆かった。関係者には申し訳ないが、筆者は1993年8月9日から1994年4月28日まで続いた細川内閣を思い出している。

●3年半で5回目の総選挙とは、最悪期の日本政治でもなかった頻度で、それ自体もの凄い話なのだが、それでも、イスラエルは国家として存続し、外交政策に大きな変化はないのだろう。7月にはバイデン大統領がイスラエルやサウジアラビアを訪れるらしいが、計画が変更されるという話は聞かない。

●そうは言っても、このような首相交代劇を永久に繰り返せるのか、と問われれば答えは否だろう。こんな事態を繰り返していたら、いつかはボディブローのように効いて来る可能性が高い。それでも、「2人いたら、3つの意見が出て、4つの政党ができる」という昔聞いたジョークを思い出した。こんなこと今は誰も言えないだろうが・・・。

〇アジア

ロイターによれば、中国の避暑地・北戴河で7月1日からテスラ車両の進入が禁止されるという。この「北戴河」、党幹部や長老らが人事や政策につき意見交換・調整を行う舞台だが、日本でいえば一昔前の「軽井沢」だろう。テスラ車両搭載カメラの安全性を懸念したためらしいが、それでは「中国のEV化」って一体何なのだろうね。

〇欧州・ロシア

来週スペインでNATO首脳会議が開かれ、日韓豪NZ4か国首脳会合があるそうだが、どうやら日韓二国間会議はないらしい。4か国会合は「日本側からの提案」だというが、日韓はマルチでは対面するが、バイでは時期尚早ということか。当然だろう。日韓首脳会談を安売りする必要はない。時間をかける方が近道だと思うが・・・。

〇中東

サウジアラビアが「虹色」のおもちゃや子ども服は「同性愛を促進する」としてリヤド市内の店舗から商品を押収したそうだ。同性愛を禁止するイスラム法解釈により、「ルールと風紀に反するスローガン」を取り締まるのだという。だが、実態を知る者にとっては、こんなことで同性愛がなくなるとは到底思えないのだが・・・。

〇南北アメリカ

コロンビアの大統領選決選投票で、左翼ゲリラ出身で元ボゴタ市長だった上院議員が当選したそうだ。コロンビアで左派政権誕生は初めてだが、米国はどう対応するだろうか。日本には直接関係がない、などと言わず、米国の外交を鳥瞰的に見るためにも、南米の情勢をしっかりフォローしておく必要がある。

〇インド亜大陸

特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きは今週のキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

トップ写真:演説をするイスラエル前首相ネタニヤフ氏(2022年4月6日、イスラエル・エルサレム) 出典: Photo by Amir Levy/Getty Images




この記事を書いた人
宮家邦彦立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表

1978年東大法卒、外務省入省。カイロ、バグダッド、ワシントン、北京にて大使館勤務。本省では、外務大臣秘書官、中東第二課長、中東第一課長、日米安保条約課長、中東局参事官などを歴任。

2005年退職。株式会社エー、オー、アイ代表取締役社長に就任。同時にAOI外交政策研究所(現・株式会社外交政策研究所)を設立。

2006年立命館大学客員教授。

2006-2007年安倍内閣「公邸連絡調整官」として首相夫人を補佐。

2009年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹(外交安保)

言語:英語、中国語、アラビア語。

特技:サックス、ベースギター。

趣味:バンド活動。

各種メディアで評論活動。

宮家邦彦

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