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.政治  投稿日:2022/9/24

「インフレ対策、軽減税率引き下げを」日本維新の会馬場伸幸代表


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

編集長が聞く!」

【まとめ】

・この5年、今の日本維新の会になってから、党運営や方向性は間違っていない。今後、党のガバナンスなど改革を進める。

・インフレ対策としては軽減税率8%を5%にするとか、消費しやすい環境作りが重要。

・来春の統一地方選、党所属の地方議員の数を約400人から600人に増やす目標は「高すぎず、低すぎず」。

 

8月27日、日本維新の会は、松井一郎代表の後任を選ぶ代表選挙を行った。足立康史・衆議院議員、馬場伸幸・共同代表、梅村みずほ・参議院議員の3人が立候補。その結果、馬場伸幸氏が新代表に選出された。今後の党の方針などを聞いた。

■ 新体制での党運営について

安倍: まず、今後の党運営をどう考えていますか?

馬場: そもそもわが党の代表選というのはかなりイレギュラーなルールになっており、任期というものがありません。国政選挙か統一地方選挙が終わった後に選挙を総括する意味で代表選挙をするかどうかを、まず特別党員で決めるのです。何故そういうことになっているのかというと、選挙というのは党にとって非常に大事なので、選挙でどういう力を得たかというのを総括的に判断するというのがこの考え方の根拠になっています。

だから今回も本来は参議院選挙で掲げていた目標、改選議席の倍増と比例で野党第一党の得票を得るということはクリアできたので、そもそも代表選挙はする必要がないわけです。しかし、松井代表から、代表選挙をやってくれという強い希望があったので行ったわけです。

安倍: 元代表の任期が決まっているわけですからね。

馬場: そうですね。特にこの5年、今の日本維新の会になってから、党運営とか方向性とかは間違っていないと思います。徐々に結果が出ているわけです。だから今までの方向性を大きく変える必要はなく、松井路線を継承しながら、でも組織もだんだん大きくなってきているので、やはり改革するべきところもあると思います。継承しながら改革をさらに積み上げていくというのが今後の党運営の基本路線だと思います。

安倍: 改革というのは具体的にはどういうものですか?

馬場: 例えば、党のガバナンスです。これまでの10年間、常任役員会という党としての最高意思決定機関に女性が一人もいませんでした。今回大阪の女性地方議員さんを登用しました。党内ガバナンスは時代に応じた改革をやっていきます。選挙対策本部も、今までは選挙の直前にしか設置してなかったのですが、これを常駐で設置することをさっそくやりました。

他にはハラスメント相談室のような、今の時代に応じたセクション、機関を設置しました。あと、どの党にもあるんですが、女性局とか青年局ですね。このような機関はジェンダーフリーと言いながらも女性とか青年とか、自らジェンダーの存在を認めてしまっていますよね。これらをすべて統合して「ダイバーシティ推進局」というものを設置しました。

安倍: その方が分かりやすくていいですね。

馬場: そうなんです、そういう時代に応じた変化を一個ずつやっています。

■ 馬場色をどう打ち出すか

安倍: 関西テレビの取材で馬場さんの知名度が松井さんほどではない、と出てました。印象は「強面(こわもて)」とか言われていましたが(笑)今後、馬場路線を敷くにあたって、ご自身の認知度を高めるためにどうされますか?

馬場: 関西テレビさんがインタビューしたのが、局の近くの商店街なんですよ。僕の選挙区というか住まいが堺市なので、川をわたるんですね。その時も言ったんですけど、「いやいやこれ、天満の商店街でインタビューしてるんでしょ!」と。堺でやってくれたら100人にきいたら100人とも馬場さん知ってる、ていいますよ。ていったんですけれど。(笑)やっぱり発信することは大事ですが、僕は橋下さんや松井さんとはタイプが違うので。ずっとみなさんに申し上げてるのは、自分は野球で言えば、8番キャッチャーなんですね。地味、というか、コツコツ型なんですよ。

安倍: 野村監督、古田監督、キャッチャーで有名な人はたくさんいますよね。一番頭脳を使うのがキャッチャーじゃないですか?

馬場: 橋下さんとか松井さんは思い立ったらすぐ行動みたいな感じで、強引といわれても引っ張っていくタイプでしたが、僕はそういう性格ではないので、自分らしくやっていこうと。

安倍: そうですよね。馬場さんもおっしゃっていたように、“維新=マッチョ”という印象が強いですよね。馬場代表がそれを変えていく良いきっかけかなとも思っていますが。

馬場: そうですね。SNSでいろんな調査をしてみても、わが党はSNSでの発信力が低いという結果になっています。もちろん政党なので政策とかを発信することも大事ですが、親しみを感じられるようなSNSの発信も大切ですよね。さっきのその強面というところにも通ずると思うんですが。この前、滋賀の彦根にいって街をぶらぶら歩いて、ちょっと興味ありそうな地元の方に、「(維新に対して)どんな印象をもってますか?」とか「ここ変えたほうがいいと思うところはありますか?」などと聞いてみたんです。そんな動画を撮って今編集しているところで、親しみを感じられるようなコーナーを作っているんです。

安倍: それはいいですね。一人一人の議員さんがやってみてもいいですし、「あっこういう女性の議員さんがいるんだ」って思うきっかけになりますしね。イメージを少しずつ広げていくことに繋がると思います。憲法改正については、どう進めていくつもりですか?

■ 憲法改正

馬場: これは舞台裏を申し上げると、立憲民主党の国会対策委員長が安住淳さんになりましたよね。安住さんは、政策とか法案とか憲法審査会もそうですが、いろんな委員会とか審議会の運営を一つずつ武器として使い、それで自民党と渡り合おうとするタイプの方です。だから、憲法審査会を重視したり、憲法改正の議論をしようという「論憲」に取り組むことは度外視して、憲法改正を、自分の目的を達成するための道具の一つに使う可能性は高いです。前の通常国会は憲法審査会が開かれた回数が16回と過去最高でしたが、臨時国会では、とりあえず安住さんなら一回とめて様子を見る可能性が高いと思います。

安倍: 一応維新としては、通常のスピードで憲法改正の議論を粛々と進めていくという考えでいいですか?

馬場: もう一歩踏み込んで、いつ国民投票するのかを決めないといけないと思います。目標とする期日がないからだらだらやってしまうんですね。ぼちぼち自民党も踏み出してもらわないといけないです。

安倍: その自民党との個別協議ももちろんやっていると。

馬場: そうですね、僕らは一貫して同じことを言ってるんですけどね。

安倍: 改正案に関してもだいぶ前に出して、そのままぶれていないですよね。

馬場: いつ国民投票するか、期日の設定と、憲法審査会の会長から各政党で憲法改正項目があるのかないのか、あるんだったら第何条をなぜどのように変えるべきなのか、を取りまとめてほしいという要請を出してくれないか、と通常国会が終わるときに申し上げました。幹事会の場でも申し上げています。

安倍: まだ要請が出ていないんですか?16回もなにやってたんでしょうか?

馬場: まあ、今までのレビューみたいな感じですよね。(笑)

 インフレ対策

安倍: そんなこと言っているうちに台湾有事とか始まったらどうするんですかね。ところで、経済安全保障ですが、ウクライナの戦争とかでエネルギーが危機的状況になっています。岸田総理も原発を動かすと言っていますが、まずは当面の電力危機に関して日本の政治が思考停止になっていると思うのですがいかがですか。

馬場: 岸田内閣の特徴だとおもいますね。岸田さんって「検討使」って呼ばれていますよね。安倍さんや菅さんと比べると遅い。検討はするけど決断・実行力はない。

安倍: そこが支持率と関係してくるのでしょうか。

馬場: 今回の内閣支持率の低下はトリプルパンチですよね。国葬と統一教会と物価高。

安倍: このインフレ、どうしたらいいですか。日銀も金利上げなかったらずっとこのままですが。

馬場: コストプッシュインフレですからね。コストを下げることを考えるのと、消費しやすい環境づくりが大事です。

安倍: (自民党は)5万円配ると言ってますが。

馬場: 対症療法すぎるわけです。お年玉ではないのですから。

安倍: だったらどうすべきですか。

馬場: まず消費税を下げるべきだと思いますよ。他の政党は、消費税を単純に下げるとか無くすとか、そういう主張ですけど、うちの政党は、日々お買い物に出る、そこの部分の家計費を助けていく。消費税の軽減税率は食料品は8%ですよね。この軽減税率制度を使って、今の状況であれば、8%を5%にするとか、値上がりしてるのもほとんど食料品ですから。

安倍: 1割以上値上がりしているものもあります。

馬場: 値上がりしているのは2万品目とか言われてる。これは絶対に効くと思いますね。

安倍: ガソリン、電気、ガスはどうですか。

馬場: ガソリンも、僕らも最初はトリガー条項やれとか言ってましたが、結局ガソリンも暫定税率ですよね。25円10銭。正式名称は当分の間税率とかいうらしいんですが。当分って40年も50年も経ってるのにいつになったら終わるんでしょうね。やっぱり暫定税率を廃止するべきです。25円10銭は確実にエンドユーザーに恩恵が発生するわけですよね。

安倍: 今元売りに補助金出しているけれど、あれじゃなく、ということですよね。

馬場: そうですね。そっちの方が効果がある。今は1リッター170円前後ですか。1リッター150円くらいにはなるでしょう。

安倍: 地方の人は車を2台も3台も持っててガソリン代大変なことになっているんじゃないでしょうか。電気代も高い。今年の夏、うちも今まで見たことないような電気代の請求書が来ました。最近在宅勤務が多くてエアコンを結構使ってるのもあり、電気代が倍近く高くなりまして。

馬場: 去年に比べて今年の一般家庭の消費支出は年間8万円前後の負担増になっています。そこを圧縮してあげる努力をしなくてはいけません。はい5万円なんて・・・

▲写真 馬場伸幸日本維新の会代表 ⒸJapan In-depth編集部

■ 元統一教会問題

安倍: それから統一教会。これも、難しいとは思うのですが。信教の自由もありますし。ほとんどの政党になんらかの形で関係している。そもそも自民党は公明党とくっついているわけですからそこは誰も何も言わないんだけれど、その距離感はどうしたらいいんですかね。

馬場: 本質的な問題は、政治と宗教の関係ではないわけですよ。カルト的に霊感商法をやってたとか、異常なお金集めをやってるとか、そういう宗教団体に政治家が広告塔として使われていたとか。もっとひどいのは逆に、立派な広告塔にしてもらうために、寄付を逆にもらったり、手伝ってもらったりとか、もう戦略的互恵関係になっている人たちがいる。それがやっぱり政治家として問題です。

安倍: 世界日報に寄稿するくらいはいいということですか。

馬場: そう思いますけどね。

安倍: 今言ったみたいに明らかに不適切な関係はダメだということですね。一方、そもそも地方議員に信者がいるじゃないですか。そのような人たちが条例であるとかいろんなものに働きかけたりしていると一部報道されてます。そういうのは維新の中で調べましたか?

馬場: 全国は厳しかったんで、大阪には250人の地方議員がいるので、大阪の議員は全員調査をかけました。でも、それは本人が言うか言わないかは分からないし、今自民党も170人近く出たとか、立憲さんはそれほんまかとか、そんなことを言い出したら何を言っても通用しないという感じがします。

安倍: そこまであぶり出すことはできないけども、今言ったみたいに、不適切な付き合いはしないと党としてきちんと決めると。

馬場: そこはきちんと通達も出しています。それに、合理的な判断のできない状態になっている人から、異常な浄財を集める、これが安倍さんの銃撃事件の根本的な原因の一つになってるわけです。いま消費者金融も年収を証明できる書類をもっていかないと、貸す側も貸せないというルールになっていると思うので、どう考えても個人の、特に主婦である方が一億円というのはおかしいと分かる。そういう被害者をこれ以上出さないためにも、何かしらのルールを決めるべきだと僕は思います。

安倍: そこは何か法制度で決めるべきですか。

馬場: 政調の方で今法制局などと連絡して、取り消し権とかダイレクトにできなくても何かブレーキがかかる法案を作ろうと作業をやっています。

安倍: クーリングオフではないですけど、そのような感覚ですね。

馬場: 紀藤正樹弁護士に党の政調会に来ていただいて、色々話聞いたんですが、宗教団体・法人の中でカルト的なところは20くらいあるらしい。そういう団体に注目していく事も必要で、クーリングオフ制度も、6年くらい前に法律の中に霊感商法という言葉が改正されて入った。そこから、宗教団体のトレンドとしては物を売るよりも現金をもらうほうにシフトしているみたいです。

安倍: 今は物を売っていないと統一教会の代表も言ってましたよね。寄付ですからと。

馬場: うん。そういう逃げ道を自分たちでつくっていると告白している。そのような逃げ道をふさぐということを考えなければいけない。

■ 安倍元総理の国葬

安倍: 元総理の国葬はどうですか。

馬場: 最初から、私は国葬自体には賛成なんですね。でも早い段階からなぜ国葬をやるのか、お金はどれくらいかかるのか、やっぱり、予備費として枠をとってあってそこから使うから問題ないでしょというのは違う。早くから説明をするべきだと。当初は賛成の方が多かったけれども段々下がってきた。必ず賛成と反対が逆転しますよと僕はずっと言ってたのですが、結果そうなりました。

安倍: この間岸田さんが会見して説明していましたけれども。

馬場: もう遅いです。

■ 統一地方選

安倍: ところで、来春の統一地方選、600人という大きな目標を掲げてますけれども、これは今どんな段階なんですか。

馬場: いま、各ブロックごとに責任者を決めて、都道府県支部に精緻な数字を出すようにとお願いしています。ベースとなる数字は去年の衆議院選挙と今年の参議院選挙の票を各都道府県とか市町村ごとに割り当てて、そこの議会にあてはめたら何人通るかと言うことをベースに、そこから現実的な人数というのを今最終的に目標設定してもらっているところです。

安倍: なるほど。600人というのはその数字ですか?

馬場: その数字は、2回の国政選挙の数字を割り当てると、1200人くらい通ることになるんです。それは実際には無理なので、400人地方議員がいるのですが、そのうち250人が大阪で、大阪以外が150人。この大阪以外の150人を倍増させるという目標を立てて、550人になりますよね。(600人というのは)目標としては高すぎず、低すぎずかなと。

安倍: 現実的な戦略目標ということですか。これから認知度を今まで以上に高めなくてはいけませんね。

(インタビューは2022年9月15日実施)

トップ写真:ⒸJapan In-depth編集部




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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