[藤田正美]<集団的自衛権>第二次大戦後の日本の平和は本当にアメリカが定めた平和憲法のおかげだったのか?
Japan In-Depth副編集長(国際・外交担当)
藤田正美(ジャーナリスト)
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集団的自衛権の行使容認が閣議決定された。日本の安全保障の転換点というより、日本人の安全保障観の転換といったほうがいいかもしれない。
ある女性向けのサイトでこの問題を議論した。集団的安全保障の行使容認に賛成か反対かという議論である。だいたい4人に1人が賛成、3人が反対。全体の世論調査に比べると反対という人が多い。回答者は圧倒的に女性だからそれも無理はないのかもしれない。
ただこうした議論をしていていつも思うのは、国を守るということのリアリティだ。世界の中でずっと平和だった国はほとんどあるまい。大なり小なり戦ってきた国が多い。外敵のこともあれば、内部の敵というケースもある。
日本は第二次大戦後ずっと平和だった。幸いなことに違いない。そのおかげで日本は世界でも例を見ないような戦後復興を遂げ、世界第二位の経済大国になることができた。しかしそれはアメリカが定めた平和憲法のおかげだったのか。それともアメリカという抑止力に守られていたからなのか。
もし平和憲法があるから平和だったというのなら、そもそも自衛隊ですら必要ないという論理にならないか。もし平和憲法が世界に類を見ない「先進的な憲法」というなら、原理的平和主義が世界に広がらないのはなぜなのか。人類は武力紛争を避けるためにいろいろなことをしてきたのに、いまだに戦争がなくならないのはなぜなのか。そういった議論が必要だろう。
議論している間も現実は迫ってくる。中国は何かと日本を目の敵にし、尖閣諸島では領空・領海侵犯が相次ぐ。自衛隊機に対する嫌がらせも起こっている。尖閣で隙を見せれば、実効支配すべく中国が上陸するかもしれない。北朝鮮が核ミサイルを日本に飛ばすとは思えないが、中国が尖閣を占領するシナリオははるかに現実味がある。
もしそうなったらどうするのか。自衛隊員の血を流しても無人の島を奪還するのかというとなかなか難しいかもしれない。いちばんいいのは、中国にその気を起こさせないことだ。そのためにアメリカは何度も尖閣は日米安保条約の対象であると明言している。個別自衛権で対処できるどうかではなく、米軍が一緒に戦ってくれるのかどうかが抑止力になるのだと思う。
そして軍事同盟である以上、双務的なものであるのが当然だ。「集団的自衛権があるのに使えない」というのがそもそも苦し紛れの理屈だったと思う。もちろん集団的自衛権を行使するかどうかは、その時の力関係や国内情勢などいろいろな要素を勘案して内閣が決めることだ。
時の内閣が恣意的に決めるのは問題だという言い方があるが、時の内閣は間接的であれなんであれ、国民が選んだ内閣だ。その内閣が歴史に対して責任をもって判断するのは当然の話である。
日本の周辺の安全保障環境が変化してきたのだから、われわれ自身の安全保障観や憲法観も根本的なところから改めて考えてみるべきではないかと思う。
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