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.国際  投稿日:2023/8/12

スズキ インドでの四輪車400万台体制へ


中村悦二(フリージャーナリスト)

【まとめ】

・印、スズキは四輪車年産能力を2030年度までに倍の規模に拡大。

・他国は半導体不足で自動車市場が力強さ欠く中、インド市場の急回復が目立つ。

・中間所得層に狙いを定めた市場拡大策は過熱化しそう。

 

インドの乗用車市場で重きをなすスズキは、同国での四輪車事業を効率化すると同時に、年産能力を2030年度(2030年4月-2031年3月)までに現行の倍の400万台規模に拡大する。このため、スズキの100%子会社であるグジャラート州のスズキ・モーター・グジャラートマルチ・スズキ・インディアの子会社とした。

マルチ・スズキ・インディアは1983年からデリー近郊のハリアナ州グルガオンで乗用車の生産を始めた。同社のR.C.バルガバ会長によると、まず2025年前半までに年産規模20万台の工場稼働を予定、年産400万台規模時の輸出は75万-80万台を見込んでいるという。

実は、スズキとインド重工業省の合弁による軽自動車「マルチ800」国産化プロジェクトに関し、現地で取材したことがある(当時の社名はマルチ・ウドヨグ)。1982年10月のことだ。

場所はデリー近郊、ハリアナ州グルガオンのプロジェクト立ち上げの事務所だった。事務所は、初代首相ジャワハルラル・ネルーの娘のインディラ・ガンディー首相(当時)の次男であるサンジャイが手掛けた国民車計画で造成されたテストコースにあった。サンジャイは不幸にも航空事故死してしまい、計画の行く末を見届けられなかったが、事務所内は外気同様、熱を帯びていた。

スズキの関係者からは「何しに来た」といった感じで見られたが、当方はデリーで重工業省の関係者を取材し「是非見てこい」と言われていた。

国民車計画はマスコミの報道で知れ渡り、ボンベイで乗ったタクシーの運転手は「できることなら自分もマルチの購買予約をしたい」と目を輝かせていた。

マルチ800は品質の高さと価格の安さで大人気を博した

2022年度のインドでの乗用車販売は前年度比26.7%増の389万114台。二輪車、同国でまだよく見かける三輪車、商用車を含めた自動車全体では20.4%増の2,120万4,162台だった(表1参照)。

▲表1

メーカー別の乗用車販売台数では、トップはマルチ・スズキで、シェアはかって程の高さではないが41.3%を占める。以下、韓国の現代、地場のタタ・モーターズ、マヒンドラ&マヒンドラ、韓国の起亜自動車、トヨタ・キルロスカル、ホンダ、ルノー、地場のシュコダ・オート、MGモーターと続く(表2参照)。

▲表2

三井住友DSアセットマネジメントによると、“他国では半導体不足などで自動車市場は力強さを欠くなか、インド市場の急回復ぶりが目立った”という。今年1月に3年ぶりに開かれたインド最大のモーターショー「オート・エキスポ」では、各社が電気自動車(EV)やスポーツタイプの多目的車の展示を競った。

インドは2023年4月に中国を抜いて人口世界一になったと見られている。世界銀行のデータによると、インドの都市人口は1960年の18%から2020年には約36%に増大している。

一世帯当たりの乗用車保有率は、中国の40%に比べ、インドはまだ8.5%と低い(英ユーロモニター調べ)。インドの自動車メーカーの中間所得層に狙いを定めた市場拡大策は過熱化しそうだ。(敬称略)

トップ写真:日印合弁工場でスズキ・マルチ800の輸出車両の検査の様子(1989年12月13日インド)出典:Sjoerd van der Wal /GettyImages




この記事を書いた人
中村悦二フリージャーナリスト

1971年3月東京外国語大学ヒンディー語科卒。同年4月日刊工業新聞社入社。編集局国際部、政経部などを経て、ロサンゼルス支局長、シンガポール支局長。経済企画庁(現内閣府)、外務省を担当。国連・世界食糧計画(WFP)日本事務所広報アドバイザー、月刊誌「原子力eye」編集長、同「工業材料」編集長などを歴任。共著に『マイクロソフトの真実』、『マルチメディアが教育を変える-米国情報産業の狙うもの』(いずれも日刊工業新聞社刊)


 

中村悦二

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