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.国際  投稿日:2023/8/27

中国の若者失業率 過去最高


澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)

【まとめ】

・中国の若者の失業率は、21.3%と過去最高を記録。

・北京大学教授、寝そべり族やニートを入れたら失業率は最大46.5%に達すると指摘。

・中国国家統計局が青年失業率の発表を暫定的に中止すると発表。

 

今年(2023年)6月、中国の若者の失業率は、21.3%と過去最高を記録(a)した(中国で新型コロナが流行した3年間で、新卒者のうち累積で約1500万人が“就職していない”(b)と推計されている)。

翌7月、北京大学の張丹丹准教授の研究によると、「寝そべり」(若者が競争社会を避け、住宅購入などの高額消費、結婚・出産を諦め、最低限の消費行動しか取らないライフスタイル)や「ニート」(親のすねかじり)のような約1600万人の非労働者をすべて失業者と見なせば、3月時点で、中国の本当の青年失業率は最大46.5%に達し、公式発表の19.7%をはるかに上回ると指摘(c)した。

張丹丹の研究チームは長江デルタの人材募集プラットフォームから、2022年末、新型コロナ流行が蘇州と昆山の製造業に深刻な打撃を与えたことを発見したという。

中国若年層の失業率の高さの問題は、何よりも2020年から3年間続いたコロナの流行に起因し、消費、企業のビジネス環境、更には経済全体の活力に継続的な影響を及ぼしていると主張する。

今年3月まで就業者数は求職者の3分の2水準にとどまった。青年は製造業の雇用の中枢である。今年3月以降、中国の技術者雇用市場が一部改善された。

3月以降、青年失業率の上昇は一般大学卒業生の就職市場を反映しているが、具体的な数値を見ると、大卒者の就職市場は供給過剰で深刻である。

国家統計局の3月の統計によると、16歳から24歳までの人口は全国で約9600万人である。同年齢労働力人口の3分の1である約3200万人のうち、およそ630万人が失業者に分類される。

残り3分の2である約6400万人は非労働人口で、その中のおよそ4800万人は在学生である。したがって、残りのほぼ1600万人は大半が「寝そべり」か「ニート」で、「就労をしない、だが、学生でもない」状態である。実際、正規の就職をしていないので、“広義の失業”と考えられよう。

 若者の失業者630万人と「寝そべり」・「ニート」の約1600万人を合計すれば、青年失業者はおよそ2230万人となる。学生を除く16歳から24歳まで人口は約4800万人なので、もし4800万人中、2230万人を失業者とすれば、全体の46.5%を占める。

「寝そべり」に関しては、都市に残る若者もいるだろうが、「ニート」の場合、当然、実家へ戻る必要がある。

さて、最近、家賃の高騰と経済の停滞に直面し、伝統的に中流階級の夢が可能であった都市から逃げ出す新卒者が増えている(d)という。実は、2022年度卒業生の47%近くが、学業を終えてから6ヶ月以内に実家へ戻ったという。

住宅価格も卒業生が実家に戻る大きな理由となっている。

例えば、昨年12月から今年6月にかけて、北京の家賃は5%上昇し、広州と深圳では2.8%上昇した。ある調査でも、回答者の80.7%が卒業時にアパートを借りるのに苦労していると答えている。

かつて上海財経大学の劉元春学長は、若者の失業問題について次のように言及した。「適切に対処しなければ、経済以外の社会問題につながり、政治問題の引き金にさえなる」(e)と。彼ら若者は中国では“知識人”であり、政治意識も高い。中国共産党にとっては彼らの存在は脅威である。

ところで、8月15日、中国国家統計局が青年失業率の発表を暫定的に中止すると発表(f)した。

2日後の17日、中国外務省の定例記者会見で、AFP通信の記者が「中国が最近、16歳から24歳までの失業率データの公表を停止することを決定した。これでは透明性に欠けるという意見もあるが、どう思うか?」と質問(g)した。

汪文斌報道官は、「中国は経済データの公表では常にオープンで透明性を堅持してきた」と答えた。更に、同報道官は、統計改善の努力の一環として、関連部門が統計指標を調整・削減するのは普通の事だと開き直ったのである。

すると、海外SNS上で、あるネットユーザーが「2012年に習近平総書記が政権に就いて以来、中国の公的な経済データは大量に消えた。2016年までに、経済指標の半分以上が公表されなくなり、現在まで残っているのはわずか10%だ」と鋭く指摘している。

 

〔注〕

(a)『国家統計局』「王萍萍:上半期の就業状況はおおむね安定」(7月18日付)

(http://www.stats.gov.cn/sj/sjjd/202307/t20230718_1941320.html)

(b)『中国瞭望』「衝撃の事実!中国統計局は失業率を下げるためにこんな方法を考案」(2023年6月6日付)

(https://news.creaders.net/china/2023/06/06/2614388.html)

(c)『万維ビデオ』「若者の失業率は著しく見積もられている 北京大学の学者:失業率は46.5%に達する」(2023年7月19日付)

(https://video.creaders.net/2023/07/19/2628404.html)

(d)『万維ビデオ』「ロイター:中国の若い新卒者、都市から脱出」(2023年8月9日付)

(https://video.creaders.net/2023/08/09/2635452.html)

(e)『万維ビデオ』「どうしようもない 李強はすっかり手の出しようがなくなった」(2023年7月7日付)

(https://video.creaders.net/2023/07/07/2624421.html)

(f)『中国新聞』「国家統計局:8月より、若年層を含む年齢層別の全国都市調査失業率を暫定的に停止すると発表」(2023年8月15日付)

(https://news.cctv.com/2023/08/15/ARTIifXAVQ8feqv9unzKEDvG230815.shtml)

(g)『中国瞭望』「若者の失業率に対する汪文斌の回答が嘲笑を買う」(2023年8月18日付)

(https://news.creaders.net/china/2023/08/18/2638734.html)

トップ写真:就職説明会で、採用担当者に履歴書のコピーを渡して話す女性(右)。若者の失業率は過去最高の20.4%付近で推移している(2023年6月9日 中国・北京)出典:Photo by Kevin Frayer/Getty Images




この記事を書いた人
澁谷司アジア太平洋交流学会会長

1953年東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。元拓殖大学海外事情研究所教授。アジア太平洋交流学会会長。

澁谷司

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