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.社会  投稿日:2024/3/8

NHK午後のワイドショー「ニュースーン」ベール脱ぐ


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

【まとめ】

・NHK午後のワイドショー「午後LIVE ニュースーン」のプレ放送があった。

・多くの時間がNHKの番宣で占められており、試行錯誤の印象。

・民放ワイドショーに視聴率で打ち勝つのは厳しそう。

 

たまたまTVをつけたら、4月から放送開始のはずのNHK午後のワイドショー「午後LIVE ニュースーン」がなぜか突然始まったのでびっくりした。(NHKプラスで3月14日午後5時まで見逃し視聴できる)キャスターは、池田伸子、宮崎慶太の同期コンビ。プラス解説委員。

ティーザーキャンペーンなのか、はたまた、リハーサルを兼ね、実験的に放送して視聴者の反応を見ようということなのだろうか?

どっちにしても、まだ始まっていない番組の中身を半月以上前にまるっと紹介するというのはこの業界であまり聞いたことがない。さすがNHKというべきか、不思議なことをするものだ。

それはともかく内容を簡単に紹介しよう。

放送開始時間は3時10分。月曜から金曜日、毎日3時間の放送だ。きょうは、プレ放送のため、17時まで2時間の放送だった。

前半は、無難に天気予報から入った。次にいきなり、「かけつけライブ」というコーナー。今日は最近最高値を更新中の日経平均が久しぶりに下落したということで、東証から中継で記者リポートだった。ところがどうしたことか、画像がえらく粗い。どうやらスマホで記者が手持ちでリポートしているようなのだが、事故現場じゃあるまいし、なぜちゃんとした中継機材を使わないのか?現場感を出したいのは分かるが、画像がこれじゃあ、TVを見る意味が無い。予算は潤沢にあるのだからそんなところでケチら無くてよろしい。

次は「ニュースのおかわり」なるコーナー。ニュースを深掘りするということで、3月の食品値上げの話とともに、最近広がるサービスの値上げを取り上げた。引っ越し料金と学習塾の授業料が高くなった、と言う話だったが、過去のニュース素材の使い回しだった。

その後、「ミニ番つまみぐい」というコーナー。「漫画家イエナガ複雑社会を超定義」というNHK番組を焼き直し、番組のディレクターもスタジオ出演して、その番組で取り上げたキャンプ市場の話をしていた。ようは番宣であり、「明日の〇時〇分から放送です!」と締めていた。

ネットdeアラカルト」というコーナーでは大河ドラマの「光る君へ」と「歴史にドキリ 紫式部・清少納言~国風文化の誕生~ 」のこれも番宣。

今日のおまかせ」は、アナウンサーが、番組ディレクターから紙で指示をもらい現場を探索するコーナー。埼玉県川越市から中継で、ミッションは、「渋ーい場所をカップルが集うスポットの変えた岡本さん」を探せ、ってブラタモリのパクリですか?尺が短く、見ている方も答えがすぐ分かってしまう。映画館をフードコートに変えたら、カップルが集まるようになりました、と言うお話。なんのうんちくにもなってない。

で、一旦番組は終了。そのまま続くのかと思ったら、短い番宣を挟み、「みんなのうた」、16時の定時ニュースと続き、後半が始まった。一旦番組が途切れるのはキツい。視聴者は何のためらいも無くチャンネルを変えるだろう。本番ではシームレスにニュースーンが続くことを期待するが・・・

NEWS 日替わりプレート」コーナーでは、「株価4万円突破 暮らしへの影響は?」と題して、また東証から中継。今度はスマホではなかったが、ただ記者の解説を聞いているだけではすぐあきる。取材VTRもなく退屈な展開。

次に、「親が就活に!?“オヤカク”」と題して就活内定後、大学生の親に確認を取る企業が増えている、という話を、なんと入社1年目の神戸支局記者がスタジオ解説。いや、新人記者だからいけないわけでは内 ないが思い切ったことを・・・とハラハラしながら見ていたが、意外と堂に入った話しっぷりでほっとした。が、正直、スタジオに記者が来て解説するような話でもないような気が・・・

つづいて、「旬の番組 テイスティング」コーナー。朝の情報番組「あさイチ」から「愛でたいnippon奈良」の焼き直し。奈良のお花満開スポット等を紹介。寺の天井の花の文様とかどうでもいいが、唯一印象に残ったのは、さくらの花びらが入った寒天をくっつけた老舗和菓子店のサクラ羊羹が美味しそうだったことぐらいか。

ところどころ、NHKプラスでご覧になれます、と入るのもうっとうしい。

その後も、ハートネットTV「フクチッチ」「摂食障害」4日放送後編の紹介、でまたNHKプラスの番宣。徹底してる。今後の放送ラインアップも紹介していた。

ドラマ「ベトナムのひびき」の紹介。

前半でやっていた「おまかせ中継」の続き。もう前半でネタバレしてるので興味なし。

蔵出しセレクション」では、俳優が見たかった過去の大河ドラマのワンシーンを、NHKアーカイブスから探してくるコーナー。ようはこれも番宣。

もう徹頭徹尾、番宣のオンパレード。

さて迎え撃つ民放のワイドショーはいかに。

裏番組の日本テレビ系列「ミヤネ屋」は、膵臓がんにかかったことを公表した経済評論家の森永卓郎さんの話。息子さんも出ていて思わず見入る。

ガラッと変わってグルメネタ。今日3月7日は「メンチカツの日」。関西ではメンチカツを「ミンチカツ」というのだそうで、「ミ(3)ンチ(7)」の語呂合わせから来ているとか。そこで「浅草メンチ」なる有名店の行列前でリポーターが中継、メンチカツを頬張り食レポ。テッパンネタで見るものを飽きさせない。

都心明日積雪おそれも、との天気予報を大々的にやり、来週末東京では桜の開花が予報されているので、一足早く咲いた、日本橋オカメザクラの中継などがテンポ良く進む。さすが。

TBS系列の「午後スマ」は、なにやらおどろおどろしいインタビューが目に飛び込んできた。タイトルは、「小6男児 同級生に93万円支払うトラブル」小学校で緊急保護者会開催、となっている。なにやら小学生が同級生に記念硬貨や外国紙幣を高額で売りつけたりしていたという事件らしいのだが、被害にあった子供の親のインタビューだった。小学生がカツアゲというか詐欺というか、同級生から金を巻き上げていた、と聞けばまあ酷い話ではあるが、そんな大々的にやるネタか?とも思うが!そこは民放ワイドショー。そんなことは知ったこっちゃない。視聴者が見れば勝ちなのだ。

こちらも、上野恩賜公園から中継さくら開花の話と、明日東京23区も積雪の可能性、と続く。やはりつい見てしまう作りなのだ。

とにかく民放のワイドショーは一日の長があるのか、中継でもVTRでもテンポが良く、視聴者を飽きさせない。記者やディレクターの解説など、大事故の現場でも無い限りながながと見せるものではない。通常のニュース番組とワイドショーは根本的に違う。

よくもわるくもNHK的な2時間だった。このまま4月を迎えるなら正直、上記の2番組に勝つのは難しいだろう。しかも3時間になるのだ。

番宣は民放もやるし、むしろお手のものだ。しかし、番組のほとんどが番宣ということはない。きょうのニュースーンは番宣しかやっていなかった印象だ。民放のワイドショー関係者は、ほっと胸をなで下ろしたのではないか。

NHKはふんだんに使える予算があるのだからケチらないでどんどん独自取材をやればいい。よく考えたら海外からの中継もなかった。せっかくの国際ネットワークがもったいない。まだ時間はあるので、これからコーナーのラインアップを修正してくるとは思うが、はたしてどうなるか。3週間後が楽しみだ。

トップ図:「ニュースーン」オープニング  出典:NHKプラスより




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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