中国家電メーカーのEVがすごい
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト
【まとめ】
・中国スマホ・家電メーカーのXiaomiがEVを開発した。
・ライバルの米テスラと性能は同等かそれ以上、価格は低めに設定。
・日産とホンダは、部品共通化に加え、車種の統廃合も加速させるべき。
Xiaomi(シャオミ:小米)というブランドを知っているだろうか?中国のスマートフォン・家電メーカーであり、実は日本市場には2019年末に参入している。
そのXiaomiがEVを開発した。3月28日に発売となったのは、「SU7」。ベースグレードで約450万円というEVとしてはお買い求めやすい価格設定だ。発売開始27分で5万台受注したことが話題となった。
ボディサイズは全長4997×全幅1963×全高1455mm、ホイールベースは3000mmとかなり大きい。満充電航続距離は約700km、ライバルは中国で先行している米TeslaのModel3だ。エクステリアはボテッとしているModel3よりはるかにスタイリッシュだ。
EVは部品点数がガソリンエンジン車の半分で済むので家電メーカーでも参入できるといわれ続けてきたが、Xiaomiが実際に開発してみせた。
これだけのパフォーマンスのEVを一家電メーカーが作ることができることに衝撃を受けたのは筆者だけではないだろう。「日本に同じようなEVがあるか?」と問われれば「NO」と言わざるを得ない。
特に、最近協業を発表した日産とホンダにとって、EV世界販売台数1位のBYD含め、中国勢は強力なライバルとして立ちはだかる。
日本のメーカーは自社開発にこだわり、協業といっても生産・開発現場の反対にあって、先に進まないことが多い。しかし、一刻の猶予もない。
両者が世界市場で勝ち残るためには、思い切った部品の共通化が必要だ。イーアクスルや電池、ハイブリッドシステム、自動運転技術などの共通化は今すぐにでもやらねばならない。そして、車種の統廃合も大胆に進めるべきだ。実はこれが一番難しい。
今でも覚えているが、1990年代。筆者が日産の海外事業部門にいたとき、すでに日産は巨額の負債に喘いでいた。海外事業の効率化を図るため、事務方は大胆な車種の統廃合計画を提案したが、上司はそれを役員レベルに上げなかった。どうせ役員会に諮っても通るわけがないと思ったのかもしれない。構造改革に遅れ、結局、外資を受け入れざるを得ないところまで追い詰められたのはご存じの通りだ。
そして今の日産・ホンダも安閑とはしていられない。米テスラや中国EVメーカー勢に勝つためには、両者の技術部門のプライドなどかなぐり捨て、あくまで経済合理性にのっとって、大胆な海外戦略を推し進めることが不可欠だ。
ただでさえ協業は簡単ではないのに両者にはお荷物がある。ホンダはソニーとEV、「AFEELA」を開発中であり、日産には、ルノーと出資しているEV専門会社「アンペア」がある。どちらも協業の話が出る前のことだが、これらのプロジェクトをどうするかも考えねばならない。
SU7をただの家電メーカーのEVだとなめていたら、とんでもないしっぺ返しを受けるだろう。
トップ写真:スペインで開催されたMobile World Congress 2024で公開されたXiaomi SU7 Max(2024年2月26日 スペイン・バルセロナ)出典:Xavi Torrent/Getty Images
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この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員
1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。
1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。
1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。
2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。