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.国際  投稿日:2024/9/17

マラッカ・シンガポール海峡 深刻な海賊問題


中村悦二(フリージャーナリスト)

【まとめ】

・マラッカ海峡・シンガポール海峡は世界で最も混雑する海峡の1つ。

・近年そこで海賊の問題が深刻化し、発生件数は10年前の4倍以上となった。

・マラッカ海峡協議会は、同地域での船舶の安全確保と事故防止に尽力。

 

1990年代の中頃、シンガポールに駐在していた。夜8時過ぎになると、マラッカ海峡の風に当たり夕涼みをする子供連れの親子の姿をよく見かけものだ。

マラッカといえば、セント・フランシス・ザビエルの石像のあるマレーシアのマラッカを浮かべがちだが、ここでいうマラッカ海峡は、図1で示めされているようにマラッカ海峡・シンガポール海峡全体を指している。

マラッカ海峡・シンガポール海峡には、道路の通行帯と同じ「分離通行帯」があり、右側通行となっている。マラッカ海峡は長さが約970km、幅が西口(396km)東口(20km)、シンガポール海峡は長さが約90km、幅が西口(20km)東口(35.7km)。

▲写真 マラッカ海峡の地図 出典:iStock / Getty Images Plus

マラッカ海峡・シンガポール海峡は年間12万隻以上の船舶が通行する世界で最も混雑する海峡の一つ。航行安全の目印となる灯台、ブイなどが設けられ、うち重要なものは51か所という。

シンガポールは、国土が東京都区内と同程度と狭いながら、東南アジア有数のハブ空港であるチャンギ国際空港、それにコンテナ取扱量が世界2位(2020年)のシンガポール港を有する東南アジアの要衝となっている。

■ シンガポール・マレーシアで海賊の存在が問題化

シンガポール、マレーシアで問題になっているのが海賊の存在だ。国際海事局(IMB=International Maritime Bureau)の作成資料によると、2023年までの10年間の世界各地域の海賊・盗賊の発生件数は図2で示されている通りだ。

▲図2 海賊等の発生状況 出典:海上保安庁国際海事局年次報告書

マラッカ海峡・シンガポール海峡での発生件数を見ると、当初の3年間がそれぞれ9件、11件、14件と増加傾向を示したものの、その後減少した。しかし、2017年の9件の後、増加に転じたのは2019年から。2019年が12件、2020年が23件、2021年が36件、2022年が38件、2023年も38件と増加してきている。海上保安庁によると、現金、乗務員の所持品、船舶予備品などの窃盗が多数を占めているという。

日本のマラッカ海峡協議会、シンガポール海峡・マラッカ海峡での船舶の安全確保・事故防止に努力

日本の船会社などで構成するマラッカ海峡協議会によると、同協議会は日本船主協会、石油連盟などエネルギー関連団体の協力で、シンガポール海峡・マラッカ海峡での船舶の安全確保・事故防止などに努力している。同海峡の航行援助施設基金への資金拠出、沿岸3か国が行う航行援助施設維持管理業務に対する技術協力や同海峡の航行安全・海洋環境保全に向けての国際関係業務、同海峡の水路測量業務、同海峡に関わる人材育成などを行っているという。

トップ写真:マラッカ海峡を航行する船舶 出典:Rex_Wholster/GettyImages




この記事を書いた人
中村悦二フリージャーナリスト

1971年3月東京外国語大学ヒンディー語科卒。同年4月日刊工業新聞社入社。編集局国際部、政経部などを経て、ロサンゼルス支局長、シンガポール支局長。経済企画庁(現内閣府)、外務省を担当。国連・世界食糧計画(WFP)日本事務所広報アドバイザー、月刊誌「原子力eye」編集長、同「工業材料」編集長などを歴任。共著に『マイクロソフトの真実』、『マルチメディアが教育を変える-米国情報産業の狙うもの』(いずれも日刊工業新聞社刊)


 

中村悦二

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