[藤田正美]<中国の負債はGDPの2.5倍>中国経済の成長が減速すれば東アジア発の経済危機が勃発する危険性も
Japan In-Depth副編集長(国際・外交担当)
藤田正美(ジャーナリスト)
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スタンダード・チャータード銀行のリポートによると、この6月末で中国の負債がGDP(国内総生産)の250%を超えたそうだ。日本はGDPの200%なのに、などと早とちりしてはいけない。日本の数字は国債などの国の公的債務だけの話。今回の計算では日本も軽く400%を超える。
それはともかく、中国経済がやばいということが最近、よく海外の新聞に出る。要するに2008年以降のクレジットバブルをどうやって共産党政権は収めるつもりなのかということだ。中国では国営の銀行もあり、国営の企業もある。国営企業の資金繰りをつけるために銀行に融資を「命じる」ことはそう難しい話ではない。
しかしそれで資金繰りがついたとしても、それは市場の歪みとして残るはずだ。政府がコントロールしているのだから、破綻はしないだろうという見方は甘すぎるかもしれない。歪みがいちばん出るのは、本来、廃棄すべき設備が残るとか、不良在庫が積み上がってしまうとかいうところだ。
もちろん中国よりも「悪い国」もある。筆頭は日本で、そしてスペインやイギリス、シンガポール、アメリカ、イタリア、フランスと来て、中国だ。しかし中国よりも悪い国はすべて「先進国」、つまり中国よりもはるかに豊かな国だ。中国の場合、豊かになる前にこれだけの負債を抱えてしまった。
ひとつだけ中国にとって良いことがあるとすれば、こうした借金はほとんど外国の資金ではないということだ。日本の国債を保有しているのも9割以上が日本人。したがって日本同様、外国の投資家のようにあっさりと国債を売り飛ばしてみたりといった「悪さ」はしないとされている 。
しかし中国の場合、シャドーバンキングなどで貸したお金が地方政府に回り、それらが工業団地やらアパートを建設した。そこに外国企業が投資をし、それがシャドーバンキングで返済される仕組みだった。しかし経済の減速でその出口戦略が難しくなっているかもしれない。
そしてもし中国が金融問題で大きく成長が減速するようなことがあれば、東アジア発で経済危機がまた勃発する可能性はある。
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