[古森義久]<日本の巨額援助で中国が軍拡>日本の援助で作られる中国共産党の独裁統治と反日宣伝
古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)
中国の日本非難がますますエスカレートしてきた。尖閣諸島への領海侵入などに留まらず、中国の国内でも、国際的な舞台でも、日本を世界の「危険分子」に仕立てる反日宣伝に熱がこもってきた。その先頭に立つのは習近平国家主席自身である。
だが中国はなぜここまで日本を敵視するのか。理由は多々あるが、ここらで日本の対中外交のあり方を反省することも必要だろう。これまでの対中政策に大きなミスはなかったのか。 日本が1972年の中国との国交を樹立して以来、中国への外交政策の最大項目を一つだけあげるとなると、それは巨額の経済援助、つまり政府開発援助(ODA)だろう。
日本の対中経済援助が始まったのは1979年、以来、2010年ごろまでに中国へ与えたODA総額は3兆円を超した。同時に事実上のODAに等しい旧日本輸出入銀行の「資源ローン」という援助がほぼ同じ期間、総額3兆円も供与された。総額6兆円の日本国民の公的資金が中国に与えられたのである。
この援助も無償と有償があり、有償は最終的には返済されるが、その条件が一般の融資とは異なり、受け手側にあまりに有利なため「援助」とみなされる。日本の援助の目的は政府の「ODA大綱」により、単に経済開発だけでなく、民主主義や人権の拡大、非軍事、友好などとされる。対中ODAも当然、巨額の援助供与により中国側の対日友好を増し、民主主義や人権をも広げると期待されていた。
しかし中国側の対日友好がODAによって増進されなかったことは明白である。
私自身は日本の対中ODAが始まってすでに20年が過ぎた1998年から2年ほど中国に駐在したが、まず第一に中国の一般国民が日本からの援助についてなにも知らされていないことに、びっくりした。「援助→友好」という図式は存在しないのだ。
第二に、日本からの援助は空港、鉄道、高速道路、港湾というインフラ建設に大部分が投入され、それらインフラが中国の軍事能力向上に寄与していることに驚いた。中国側がそれらインフラ施設は軍隊の機能を高めると公言していたのだ。
第三に、日本からの援助はみな共産党政権向けであり、結果としてこの政権の独裁統治能力を高めていることにも、懸念を抱かされた。
日本の戦後の対中外交の失態はまずこのへんの誤算にあるといえそうだ。
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