[安倍宏行]<テレビが地方の情報を報道できない理由>東京キー局とローカル局の関係をもっと密にすることが重要
安倍宏行(ジャーナリスト)
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風評被害と風化の二つの風に東日本大震災の被災地はさいなまれている。そんな現状を、東北の酒と食を楽しんで、吹き飛ばそう。そんな思いで始まった『解放食堂』という震災復興支援イベント。
2013年の春に東京で産声を上げ、秋には初めて関西に進出。まずは大阪で開催した。今年に入り、春に名古屋で、そして7月25日に京都でも行われた。
「関西は震災に対する関心は低い」「そんなイベントに金を出してまで人は集まらない」関西で解放食堂を開催するにあたり、そんな先入観があったのは事実だ。しかし、実際にやってみたら、毎回150人から200人が集まった。しかも圧倒的に若い人が多い。メディアは報じないが、若者を中心に復興に対する思いは予想外に強い。
本来ならメディアにはあらゆる情報が集まるはず。しかし、自分で実際にこうしたイベントを企画・運営すると、メディアの中にいたらわからないことが多いと気づく。何故、メディアは時として地方の情報を吸い上げることが出来ないのか。民放テレビに関しては答えは意外と明白だ。
テレビ局は全都道府県にあるが、ニュースのネットワークは東京キー局を核としてローカル局と緩やかな取材協力関係を気づいている。日本テレビにはNNN系列、テレビ朝日にはANN系列、フジテレビにはFNN系列といった具合だ。
民放テレビのニュース番組は東京キー局がメインで制作する。地方のニュースはよほどの大事件でもない限り、各県のローカル局が売り込まなければキー局には伝わらない。
つまり、キー局には意外と地方のニュースに疎いということだ。直接取材していないのだから地方の空気感、ましてや10代、20代の若者の気持ちなぞ、分かれという方が無理だろう。
こうした情報のギャップを無くすには、キー局とローカル局の関係をより密にするしか無い。幾らお互いの幹部が会議を開いても効果は薄いだろう。いっそのこと、記者を交流させたらどうか?1年~2年、お互い記者を派遣するのだ。経費はかかるがメリットは大きいと思う。
地方の記者に中央行政の仕組みや永田町の政治力学などにを知ってもらい、キー局の記者には地方自治の実態や問題点を学んでもらう。せっかく全国にネットワークがあるのだから活用しなければ勿体無い。
まだまだ被災地の復興は道半ばだ。現状を伝え、そして風評や風化を防ぐ。メディアのやるべきことは多い。解放食堂に集まる若者の声を聞くたび、もっと被災地のこと、地方の声を伝えなければ、と決意を新たにするのだ。
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