北朝鮮と中国との関係改善事業動き出す

朴斗鎮(コリア国際研究所所長)
【まとめ】
・停滞していた中朝の経済・物流協力が急速に動き出している。
・9月初めの朝ロ・朝中首脳会談では、中国は経済支援の核心、ロシアは国防戦力現代化の同伴者と位置付け。
・北朝鮮各地で中国との合弁事業計画が活発化するも、北朝鮮側の契約無視、賄賂の横行などにより成果は未知数。
中国のNO2李強首相の朝鮮労働党創建80周年行事訪朝を契機に、長らく停滞していた中朝の経済・物流協力が急速に動き出している。開通が10年以上遅れていた新鴨緑江(アンノプカン)大橋の北側税関・出入国施設が完成間近であり、通関手続きの簡素化に向けた協議も進んでいるという。これは事実上、コロナ・パンデミックを機に生じた中朝間の“物理的封鎖線”の解除が始まった。
■金正恩の対中対ロ政策―「中国は制裁緩和用、ロシアは軍事協力用」
朝鮮労働党書記局は、9月初めの金正恩国務委員長の中国「戦勝節」参加時に行われた朝ロ、朝中首脳会談の成果を踏まえ、最近、軍の高位級に朝中・朝ロ関係の重要性を強調する特別指示文を通達した。
10月2日、韓国デイリーNK北朝鮮内部軍高位消息筋は、「党書記局の特別指示文が9月28日午後軍高位級会伝達された」とし、「指示文には、中国とロシアを北朝鮮の経済、戦力強化に連結する最高首脳部の核心的思想を担っている」と伝えた。
この消息筋によると、党書記局は中国との関係強化を、「国際社会の制裁の中で、物資普及を維持するうえで大きな助けとなる『国家経済の重要な生命線』」と指摘したという。中国との関係強化を通じて国際的孤立を緩和し、長期的に国家戦略を支えることができるとの説明だ。
一方、朝ロ関係を先代(金日成・金正日)時代とは異なり、「最高水準の戦略的同伴者関係」として格上げされた点を大きく強調したという。それとともにロシアを軍事部門での重要なパートナーと言及した。特にロシアを通じて現代戦の経験を間接学習することが北朝鮮軍の戦力近代化に役立つと評価したという。
すなわち中国は経済支援の核心、ロシアは国防戦力現代化の同伴者であることを浮き彫りにしたということだ。そして今後、中国と多様な教育・研究交流を通じて人材養成を図り、ロシアからは戦術・訓練経験と現代的武器運用知識を伝授されることになると位置づけたのだ。
指示文通達について消息筋は、軍高位消息筋は「元帥様(金正恩)の中国訪問遂行団から軍幹部が抜けたことで軍内部には少し残念さが残った」とし「だから党書記局が今回特別指示文を下して中ロ関係の方向を詳細に示して内部結束を固めようとした」と解釈した。
これについて、他の軍消息筋も「国際的制裁環境で国家経済、軍事基盤を維持するのに二つの国家(中ロ)が私たちにとってどれほど重要かを今回の大きな枠組みで、より詳細に明らかにしたわけだ」とし「党で中国は制裁緩和と貿易安定に、ロシアは軍事協力にそれぞれ力点を置いていることが、今後われわれの活路となるだろうが、その成果はもう少し見てみる必要がある」と話した。
■中国との合弁事業計画を全国で推進、しかし成果は未知数
金正恩総書記の訪中以降、北朝鮮各地で中国との合弁・合作事業計画が急速に活発化している。平壌をはじめ平安道や咸鏡道などを中国企業や個人投資家が直接訪れ、現地パートナーと協力を進めているという。
北朝鮮当局は「地方発展20×10政策」で地方の自立的発展と農村振興を推進中だが、織指導部と内閣は今月初め、各道党委員会および人民委員会に対し「中国との合弁・合作事業を全面的に再開せよ」との指示を正式に下達した模様。以後、各地方では党委員会が事業総括を、人民委員会外事局が対中実務協議を担当する体制だという。
「地方発展20×10政策」は、金正恩が掲げる経済再建の目玉政策だが、中国と疎遠となったことで、投資・資材が不足し思うように進んでいなかった。その難局を今回、中国との関係改善に伴う合弁事業で打開しようとしているのだ。平安北道の韓国デイリーNK情報筋は「中央が地方に外資導入の権限を委譲した形で、地方幹部の間では歓迎ムードが広がっている」と語る。
事業形態は大きく三つに分かれるという。第一は、金正恩の訪中後に新たに契約された「新規契約型」。第二は、コロナ禍で中断されていた既存事業を再開・拡張する「再稼働型」。第三は、中国の個人投資家が直接現地入りし、投資を進める「個人投資型」である。
いずれの形態も、中国側が資金・技術・設備を、北朝鮮側が土地・労働力・行政手続きを提供する仕組みだ。たとえば平安北道義州郡の徳鉉鉱山では、中国企業が供給した掘削機材を用いて操業を再開した。
平壌の兄弟山(ヒョンジェサン)区域では、中国の大型建設機械メーカーが合弁でコンクリート・建材生産施設を建設中だ。現地では「住宅建設資材の国産化と自給体制の確立を狙った試み」との見方が広がっている。
また農業分野でも動きが目立ち、平安南道成川郡や咸鏡南道咸州郡などの低生産地域に中国の個人投資家が入り、土地調査や土壌改良、資材倉庫建設などを進めている。これは「個人単位の外資導入モデル」として注目されている。
情報筋は「党はこの事業を通じて地方発展戦略を定着させたい考えだ」とし、「特に経済官僚の間では、今後10年間の国家経済運営を試す重要な段階と受け止められている」と述べた。しかしこの思惑通り進むかは未知数だ。
こうした合弁形態は、過去に在日朝鮮人商工人との間で進められて失敗している。その主な原因は、北朝鮮側の契約無視、賄賂の横行などがあった。中国でも温家宝首相時代に、本格化を試みたが、同じような問題点により実現しなかった。
トップ写真:中国・北京-9月3日ロシアのプーチン大統領(右)と北朝鮮の金正恩最高指導者(左)




























