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.国際,IT/メディア  投稿日:2026/3/11

日本オールドメディアの反トランプ錯乱その2 朝日新聞の虚報 


古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授) 

古森義久の内外透視

【まとめ】

NATOはアメリカにとって依然として極めて重要な存在。

トランプ大統領は対中戦略の一環で2027年の国防費を1兆5千億ドル(約235兆円)に増額するよう議会に要請する方針である。

アメリカの中国軍事研究者たちは、中国を抑止するうえで在日米軍と日本の協力は不可欠だという認識が強い。

 

――(司会)部識者から、トランプが日米同盟を変質させ、場合によっては破棄するのではないかという予測が述べられてきました。また、トランプが北大西洋条約機構(NATO)から脱退するとの見方もあります。

 

古森義久:現在、そのような事態は起きておらず、NATOを否定する動きもありません。実際、NATOはアメリカにとって依然として極めて重要な存在です。

 

 NATO加盟国の一部は、防衛費のGDP比2%目標を達成できていませんでしたが、アメリカは2025年6月には加盟各国に対し5%までの引き上げを求め、首脳会議で合意されました。

 

 日本に対しては、トランプ大統領自身が防衛増増額を直接要求しているわけではありません。しかし一部識者は、アメリカが日本に理不尽な要求を突きつけているかのように受け止め、批判しています。実際には、片務性(責任がアメリカに偏っている状態)から双務性(日米両者が責任を共有し協力する関係)へと移行させ、日米同盟の強化を求めているにすぎません。しかもこの片務性問題はトランプ氏が大統領になってからは一度も述べていません。

 

 かつての「G2(米中二極体制)」という言葉をとらえて、トランプが米中で世界を分割統治する構想を抱いているとする見方もあります。しかし、日本が蚊帳(かや)の外に置かれるかのような前提に立つ日本の識者の国際認識は危険です。トランプ大統領はこの米中のG2という用語も瞬間風速的に一度、使っただけで、新たな政策の表明ではありません。日本側の識者はこの一言をとらえ、アメリカの対中政策の大転換のように評します。これもトランプ叩き、まずありきの異様な反応です。

 

 さらに、トランプ大統領が2027年の国防費を1兆5千億ドル(約235兆円)に増額するよう議会に要請する方針であることは、日本ではあまり報じられていません。2026年度は約9千億ドルを要求し承認されていますが、それを大きく上回る規模です。

 

 これは対中戦略の一環であり、インド太平洋優先戦略の推進、グアムにおける弾道ミサイル迎撃能力の強化、艦艇増強や海兵隊活用などを通じて、軍事的優位性を確立する狙いがあります。

 

 仮に日本に核ミサイルが落とされた場合、アメリカが全面的な核戦争を覚悟して中国を攻撃するかどうかは不透明です。アメリカは公式には日本への核のカサにより、中国を攻撃するという誓約はしていますが。中国は、米本土に届く大陸間弾道ミサイルよりも、日本・韓国・グアムを射程に収める中距離核戦力の増強を進めています。そのためトランプ政権は、中国に対して劣勢にある中距離核戦力を補完する目的で、海洋発射型核巡航ミサイルの配備を決定しています。

 

「朝日新聞」(2025年5月29日付)は、米安全保障当局関係者が日本政府関係者に在日米軍駐留経費の増額を打診したと報じました。しかし、そのような事実は確認されていません。

 

 また「日本経済新聞」(2026年1月14日付)は「日韓、『ドンロー主義』警戒 首脳会談 米つなぎ留めへ連携」との見出しで、高市首相と韓国の李在明(イジェミョン)大統領が奈良で会談したと報じました。「ドンロー主義」とは、かつて中南米政策を指した「モンロー主義」に、トランプの名前のドナルドを掛け合わせた造語です。

 

 しかし、実際の会談では両首脳ともそのような警戒は述べておらず、「ドンロー主義」という言葉も使われていませんでした。

 オールドメディアの記者自身の解釈や思い込みがそのまま記事化されています。

 

 さらに、トランプを「ナルシスト」「独裁者」「外交が稚拙(ちせつ)」などといった、大雑把な印象論で論じる報道ばかりです。肝心のトランプ政権の実際の政策がどうなのか、その内容をほとんど報じない。日本のジャーナリズムはここまで墜ちたかと実感します

 

 アメリカの中国軍事研究者たちは、日米同盟を非常に重視しています。中国を抑止するうえで、在日米軍と日本の協力は不可欠だという認識が強いのです。

 

 また、アメリカは民主主義国家です。国民が日本をどう評価しているかは、日米同盟への支持にも影響します。その土台があるからこそ、トランプ大統領も現時点では日本に対して比較的好意的な姿勢を示しているのでしょう。

 

 にもかかわらず、日本で「トランプは日本を見捨てる」「日本を攻撃する」といった単純化されたトランプ像が広がっているのは、日本の対米観がニューヨーク・タイムズなどリベラル系メディアの影響を強く受けていることが一因です。

 

 日本のアメリカ研究は伝統的に民主党リベラル系に親和的でした。入江昭氏や猿谷要(かなめ)氏らの世代からそうです。アメリカ側でも、日本に好意的だった学者は民主党リベラル系が多く、エドウィン・ライシャワーやエズラ・ボーゲルが代表例です。

 

 しかし、この10~15年で状況は変わりました。共和党系の専門家が安全保障分野を通じて日米関係に深く関与するようになったのです。とりわけ制服組同士の関係は非常に緊密で、政治を超えて軍同士の協力は着実に強化されています。仮に日米同盟が弱体化した場合、日本はどう対応するのか。尖閣諸島に中国軍が進出したらどうするのか――そこまで踏み込んで議論すべきです。

 

(その3へつづく。1)

 

#この記事は月刊雑誌 WILLの2026年4月号に掲載された武者陵司氏と古森義久氏の対談記事の転載です。

 

トップ写真:NATO首脳会議に出席したドナルド・トランプ米大統領 オランダ、ハーグ 2025年6月25日

出典:Omar Havana/Getty Images

 




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