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.国際,IT/メディア  投稿日:2026/3/11

日本のオールドメディアの反トランプ錯乱その4 残る道は中国への屈従


古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
古森義久の内外透視

 

【まとめ】
中国経済の構造的な危険性が高まり、対外的な経済・地政学的圧力を圧力を強めている。

日本企業の中国撤退が加速し、技術・資本回収のリスクが顕在化している。

日米同盟に関する日本国内の誤った認識は、中国への屈従という結末を招きかねない。

 

 

 日本のいわゆる「識者」、そしてそのことを流布するオールドメディアがトランプ大統領やトランプ政権の政策をいかにゆがめて伝えてきたか。安全保障から経済、貿易までその錯誤の実態を経済アナリストの武者陵司氏との対談という形で自由に論じてみた。

 

古森義久:経済は、ルールの共有、契約の尊重、知的財産の保護といった普遍的基盤があってこそ持続します。しかし中国は、その国際的な普遍性に最も背を向けている国の一つです。現体制である以上、経済的に安定したグローバル覇権を確立できるかについては、慎重に見るべきです。

 

 一帯一路もその典型例です。自由貿易とは異なり、中国主導の進出モデルです。実際、一帯一路の収支は中国にとっても必ずしも順調とは言えません。EUで唯一正式参加したイタリアも、後に離脱しました。コロナ禍も重なり、中国との関与のあり方が問題視されたのです。

 

武者陵司:中国の人口は世界の約17%です。しかし工業生産の比率は4割前後を占めています。品目によってはさらに極端で、レアアースは9割近くを中国が握っているとも言われます。これは歪な構造です。

 

 逆に言えば、中国は外需依存度の高い経済構造を築いてきたのです。仮に各国が中国からの輸入を大幅に減らせば、中国は鉄鋼からレアアースに至るまで深刻な供給過剰に直面することになります。

 

 そのとき、中国には巨大な供給能力だけが残る一方で、国内需要は伸び悩む可能性があります。よって、中国はバブル崩壊の初期段階にあると言えます。価格維持政策で急落を防いでいる面もあるものの、構造的な調整が本格化する可能性は否定できません。

 

 国民の将来不安が強まれば、家計は消費より貯蓄を優先します。そうなれば国内需要はさらに弱まります。巨大な供給能力と伸びない需要。この組み合わせは極めて危ういのです。

 こうした体質を踏まえると、中国は経済的にも地政学的にも極めて危険な存在だと言えます。

 経済を維持するには海外市場への輸出を拡大せざるを得ません。その過程で外交的・経済的圧力を用いる傾向が強まります。日本に対する様々な圧力も、こうした構造と無関係ではないでしょう。

 

  • 日本企業の撤退 

 

――(司会)2025年からの動きとして、ソニーやキヤノンなど日本企業が中国から撤退し始めています。

 

武者:2022年には富士フイルムが中国市場から撤退し、複合機工場を売却しました。

 背景には、複写機技術の開示を求められた問題があります。日本は事務用複写機分野で、富士フイルム、キヤノン、リコーなどが世界的な強みを持っています。中国側はその技術を取り込もうとしましたが、富士フイルムは応じませんでした。結果として、撤退を選択したという流れです。

 

 さらに、中国で利益を上げても資本を自由に本国へ送金できないという問題もあります。最終的に技術だけを奪われるリスクもあります。フォルクスワーゲンの事例が象徴的です。市場参入当初は成功したように見えても、合弁条件や技術移転を通じて徐々に優位性を失いました。

 中国市場では、主導権を握られ、場合によっては撤退を余儀なくされることもあります。仮に利益が出ても自由に回収できなければ、その意味では限定的です。結果として、資産を安値で売却せざるを得ないケースもあります。

 

古森:話題を日米関係での日本側の誤認に戻します。「朝日新聞」(2月7日付)は「力の支配 変質する米国」との見出しで、国際政治学者の鈴木一人氏が、日米同盟についてこう述べています。

「米国は欧州からもインド太平洋地域からも手を引き、今後よほどのことがなければ同盟国のために血を流すことはないでしょう」

 日米同盟があっても日本は守られないと言うのか。何を根拠にこんなことが言えるのでしょう。私がワシントンでトランプ政権だけでなく、議会や研究機関を幅広く取材していて、「アメリカは有事に日本を守らない」というような声はまったく出てきません。反応は日米同盟の強化という、むしろ逆の方向なのです。

 

 私は日本にいるだけでアメリカ政府の動きが手に取るようにわかったかのように語る専門家の認識が理解できません。

「朝日新聞」夕刊(2月9日付)「素粒子」には、次のように記されていました。

「底が抜けたのか。社会の。政治の。戦後民主主義の。リベラルの。護憲の。この国の。それとも何の。釜の底を見つめ、なぜ朽ちたのか考えることから始めたい」と。

〝底〟とはリベラル派の妄想です。底が抜けたのは戦後民主主義を絶対視してきたリベラル派の間違った思考そのものではないでしょうか。日米同盟についても同様で、彼らは「アメリカは守ってくれない」と主張します。そして、日本が単独で中国と抑止のバランスを取ることは不可能だと論じます。抜けた底というのは実は朝日新聞の底だと思います。

 

武者:そうだとすれば、中国と融和するしかない、という結論になります。

 

古森:その通りです。残された三つ目の選択肢は、日米同盟も頼れず、日本独自でも対抗できず、中国の言いなりになるということになってしまいます。

 

(5につづく。全5回)

 

#この記事は月刊雑誌 WILLの2026年4月号に掲載された武者陵司氏と古森義久氏の対談の転載です。

 

トップ写真:希土類金属鉱山で働く労働者たち 中国・江西省南城県、2010年10月20日

出典:Jie Zhao/Corbis via Getty Images

 

 




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