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.社会  投稿日:2026/4/29

大学数793校 vs 18歳人口109万人 ― 「ゾンビ大学」を生む構造と教育の質


執筆:福澤善文(コンサルタント/元早稲田大学講師)

 

■本稿のポイント

2026年の18歳人口は約109万人だが、文部科学省の推計では2035年に約96万人、2040年代以降さらに激減する見通し。一方で大学数は793校と微減にとどまる。

・私学事業団の2025年度調査では、私立大学の53.2%(316校)が定員割れで、なお高水準。経営難でも閉校・統合は進まず、学生の集まらない「ゾンビ大学」が温存されている。

・大学設置認可の段階で世の中のニーズが疑わしい大学まで認可が下りており、私学助成金(税金)が投じられている現状は再考が必要である。

・終身雇用が崩れて新入社員の3人に1人が3年以内に転職する時代、企業内教育の補完を担うのは大学であり、社会に出すレベルに達しない学生を安易に卒業させない厳格化が必要である。

日本の18歳人口は減少を続け、文部科学省の推計では2035年に約96万人、その後も激減が見込まれるが、大学数は2025年度で793校と微減にとどまり、私立大学の53.2%が定員割れの状態にある。コンサルタントで元早稲田大学講師の福澤善文氏は、経営難でも閉校・統合に踏み切らない「ゾンビ大学」の温存と、学生に十分な教養・基礎専門性を付けないまま卒業させる現状の双方を問題視し、人口減少社会こそ大学教育のカリキュラムを抜本的に見直し、社会に通用する人材を育てる教育機関へと転換する好機だと論じる。(Japan In-depth編集部)

18歳人口の激減と大学数の微減ミスマッチが続く構造

人口が年々減少している我が国で、大学受験年齢の高校生の人口も急激に減るはずなのに、何故大学の数はそれほど減らないのか不思議に思われている方も多いと思う。かくいう筆者もその一人だ。翌年に大学入学する年代の18歳人口は2023年に110万人を下回り、数年は横ばいだったが、2026年時点の109万人から、今後減少すると予測されている。そして、文科省の推定では2035年には96.4万人、2045年には69.7万人へと激減すると見られている。一方、大学数は2025年度では793校(国立86、公立100、私立600超)で前年度より3校減少したに過ぎなかった。本年度も微減にとどまると思われる。このように学生数が激減する中で、各大学はどうやって学生を集めて行くのだろうか。

「ゾンビ大学」と私学助成金の問題

縮小している18歳人口というパイの中で日本の大学進学率は58.64%(2025)と非常に高い。全体数が縮小しているので、大学生数は減ることには違いない。大学の中でも定員を充足できない学校が増加しつつある。全国私立大学の定員充足ランキング(2025年)は、全国の私立大学582校を対象に在籍者数の収容定員に対する割合を低い学校から順位づけしたものだ。充足率50%以下が10校、70%以下が70校にものぼる。学生が集まらないのに未だ生きながらえている大学がそれだけあるということだ。

(この中には既に募集を停止し閉校を決定している大学もある。)

これから大学生数が更に減ることは確実なので、当然、大学数が減ることは当たり前のことだが、現実にはそうなっていない。よほどの経営難に陥らない限り、自主的に閉校したり、他校との統合への道を積極的に選んだりする大学はあまりない。文科省も、世間がその存在意義に首を傾げざるを得ない大学を閉学、統合にスピーディーに動いているとは思えない。

ましてや、認可前から学生は集まらないと容易に想像される大学や、世の中のニーズに即しているのか疑問符のつく大学の新設認可まで行っている。これらが、大学の経営陣、常勤職員、教員、或いは天下りの職を守るがためであれば、それは大学の教育機関としての存在意義を無視した話だ。

しかもそれらに、私学助成金を通して私たちの税金が使われているというのだから無視できない。バブル崩壊後、赤字で存在意義がないのに生きながらえていた会社はゾンビ企業と呼ばれたが、何のための大学かわからないゾンビ大学は勘弁してもらいたいものだ。

カリキュラムの抜本的見直しと教育の質保証

大学の主役は言うまでもなく学生だ。これから学生数が減るという量的側面ばかり捉えがちだが、これはマスプロ教育でベルトコンベア的に入学者を卒業させれば、それで大学の役目は果たせたという時代から、入学者をこまめに教育し、4年間で社会で通用する人材を輩出させる教育機関へと大学を変革させるチャンスでもある。

それは、AIブームだからAI関連の学科を新設するというような単純な話ではない。カリキュラムの見直しによって、いかに人材を育てていくか、大学は考え直さなくてはならない。

終身雇用の崩壊と大学教育の責任

そもそも今の教育においては大学の存在意義というものが希薄だ。学生に、社会に出しても恥ずかしくないレベルの教養、基礎専門性を身に着けさせるのが大学の役割なのは言うまでもない。今の大学は入学させた学生を中途半端なレベルでも卒業させている。

特に社会科学系の学生に至っては4年間のうち、最後の2年間は就職活動に必死になり、勉学をおろそかにせざるを得ない学生が多い。結果として物事を論理的に考えることができず、文章力も高くない。英語などの他言語を学ぶ以前にまともな日本語すら使えなかったりする。日本の人口は減り、将来の国力が益々危ぶまれている今、日本人の質を上げるためにも、教育を通して大学の果たす役割は重要だと思うのだが、そうはなっていない。

日本の雇用イコール終身雇用制度の時代には新入社員は企業内教育でその企業に適した教育がなされ、長年かけて一人前になったものだった。

しかしながら、今や新入社員の3人に1人は3年以内に転職する時代だ。かつてのような徹底した社員教育ができない企業も多い。それを補完するのは大学教育しかない。入学した学生を4年間かけて、社会に出る為のレベルまで教育するのは大学の義務である。社会に出すレベルに到達できない学生は安易に卒業させないことだ。大学が社会に即通用する人材を養成しないとこれからの日本はますます心もとない国になってしまう。     

【よくある質問(FAQ)】

Q1. 日本の18歳人口は今後どう推移しますか? A. 文部科学省の推計では、2025年度入試対象の18歳人口は約109万人、2035年に初めて100万人を割って約96万人となり、2040年には約82万人にまで減少すると見込まれています(中教審答申関連資料)。

Q2. 日本の大学数は何校ありますか? A. 令和7年度学校基本調査(確定値)によれば、令和7年(2025年)5月1日現在、大学数は812校(国立85、公立103、私立624)で、前年度比1校減です(速報値段階の数値とは若干異なります)。

Q3. 私立大学の定員割れはどの程度進んでいますか? A. 日本私立学校振興・共済事業団の令和7年度入学志願動向調査によれば、2025年度は集計対象594校のうち53.2%にあたる316校で定員割れ。前年度の59.2%からやや改善したものの、依然として高水準です。

Q4. 私学助成金とは何ですか? A. 国が私立学校に交付する補助金で、大学・短大・高専に対しては「私立大学等経常費補助金」が中心です。文部科学省から日本私立学校振興・共済事業団を経由して交付され、教職員給与費や教育・研究経常費を対象とします。私立学校振興助成法に基づき、経常的経費の2分の1以内を補助できる制度です。

Q5. 大学(学部)への進学率はどの程度ですか? A. 令和7年度学校基本調査(確定値)によれば、令和7年3月の高等学校卒業者の大学(学部)進学率は58.3%(過年度卒含む大学・短期大学進学率は61.4%)です。

(本稿のポイント、リード、FAQの文責:Japan In-depth編集部)

写真)空の教室または講堂の写真素材
出典)Drazen_ / GettyImages




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